ペソアさん通信
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春を感じる場所 エストレラ庭園

ポルトガルでは、カラッとした青空の続く夏とは正反対に、冬の間は曇天や雨が多い。欧州の中では比較的温暖と言われるように、一番寒い1月でも芝生が枯れず、時折アヤメの花 まで見かけるリスボンだが、石造りの建物は暖まりにくい上、暖房器具もあまり充実していないので、実際には結構寒い。分厚いセーターを着込んだり、親が送ってくれたホカロンのお世話になることもあった。(日本では当たり前のホカロン、こちらではまず見かけない。)だから、少しずつ晴れの日が多くなり、春の兆しが見え始めるのは、やはり嬉しい。

リスボンでは2月、3月、もう初夏のような陽気になることもあるが、天気が安定してくるのは、4月半ばの復活祭の休みを過ぎた頃からであろうか。気の早い人々が海辺へ向かい始める頃でもある。

そんな時季、天気に恵まれた週末や授業のない日には、リスボンのエストレラ庭園でぼんやり過ごすのが好きだった。私が間借りしていた部屋から庭園までは歩いて6〜7分。途中のスーパー、「ピンゴ・ドーセ」で軽食や飲み物を買ったり、園内のカフェでミルク入りコーヒーとリンゴのパイをテイクアウトし、カフェの外、池に面したテーブルで軽い朝食代わりにするのが常だった。

庭園は、エストレラ大聖堂の正面、また、市電28番線の停車場の正面という便利な場所にあるが、木々や植物が生い茂り、池の周りや木陰にはベンチ、子供用の遊園具を備えた一角もあって、人々がくつろげる空間だ。

お年寄りから若者、子供たちまであらゆる世代の人々が、それぞれ思い思いに利用している。ある人はベンチで新聞を広げ、また学生らしき女性は分厚い本を片手に書き物に余念がない。別の一角では四角い石のテーブルを囲んでカード・ゲームに熱中するおじさんたち。静かに語り合うカップルの姿もある。犬の散歩をする人、手をつないで散歩する中年夫婦。芝生の空き地では、年配のグループがゲートボールのようなものだろうか、玉を使ったゲームに興じたり、キャッチボールをする親子連れがいたり。結婚式を挙げたばかりの新郎新婦とその親族・友人たちが記念撮影しているのを見かけることもあった。新婦のウェディングドレスの白さが、青々とした芝生に映えてまぶしかったのを憶えている。

木陰のベンチに座って人々を眺めているだけで、心地よく時間を忘れる。特に春は、萌え出した若葉が美しく、本を読んだり、人々の姿をスケッチしたりするには格好の場所。4月の後半から5月にかけては、運が良ければ、池の水鳥(カモの一種だろう)がヨチヨチ歩きの愛くるしい雛鳥たちを引き連れ、入園まもない園児たちを引率する保母さんさながらに園内を散歩する姿も見られる。池の周辺に雛鳥の姿がない場合でも、突然、茂みの中から黄色い雛たちの集団が賑やかに現れ、人々の笑顔を誘うこともある。
植物が繁茂する園内。
第4便(2003年5月)は、春の色うるわしいエストレラ庭園はペソアさんお気に入りの場所。
モネの絵画のような淡い色彩と陽光に包まれた光景からは、おだやかな春風を感じます。
自然に溶け込む石像。 
バラの咲く一角。 
園内カフェのテーブルから池を臨む。
池の水鳥。
木陰のベンチで憩う人々。
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