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ペソアさん通信
第2便
第2便(2003年2月)は、アレンテージョ地方の村マルヴァオンで過ごした年の暮れです。ペソアさんがご友人と訪れた、1999年から2000年に明ける丘の上の村。
田舎で年の暮れ1

3年前、「2000年問題」が何かと話題に上ったあの年の瀬を、友人とアレンテージョ地方の小さな村、マルヴァオンで過ごした。

朝7時20分、リスボンのサンタ・アポローニャ駅で電車に乗り、途中、数回の乗換えを経て、牧草地や岩がちな平野、ユーカリの林がどこまでも続く風景の中を行く。なだらかな丘の斜面で草を食む羊の姿に、最初は喜び、次第に眠気を誘われる。リスボンを離れるに従い、車中は人もまばらに。出発から4時間余り、昼前にマルヴァオン・ベイラ駅に到着。ここからさらにバスかタクシーで、山上の村まで行く。  

駅を出てしばらく歩き、カフェでマルヴァオン行きのバス停を尋ねる。道路を挟んで店の真向かいにバスが停まるという。次のバスまで小一時間、一息入れることに。カウンターにたむろする常連らしきおじさんたちの手元に目が行く。小さめのグラスに入った綺麗な赤い液体、ワインのようだが、普通の赤黒い色よりもう少し明るめの赤。自家製ワイン? 私たちも同じものを頼む。おじさんたちは東洋人の出現にいぶかしげな表情を隠さないが、やがて、同じ酒を嬉しそうに飲む私たちに「うまいか?」と尋ねる。「おいしい!」と答えると彼らはたちまち相好を崩し、「どこから来た?」「中国人か?」などポツリポツリ質問が始まる。ワインはサッパリと芳香で、小さなグラスはすぐに空いた。二杯目を頼もうとすると一人のおじさんが「一杯おごろう」。友人と顔を一瞬見合わせたが喜んでごちそうになる。「マルヴァオンはどこに泊まる?」「これから探します。どこかご存知?」「ホテルは高いから民宿に泊まりな。」「どこにありますか?」「ポウザーダの通り。」そんな会話を続け2杯目のグラスも空き、また別の人から申し出を受ける。嬉しく頂戴する。「何か年越しのイベントは?」「いや、特に何も…。リスボンとは違うから。夜中に花火が上がるぐらいだね。」

3杯目のグラスも空く頃、そろそろバスの時間。自腹の1杯分のお金を払い、おじさんたちに礼と別れを告げ、反対側の道に停車中のバスに乗り込む。バスはマルヴァオン村を囲む城壁の外で止まる。アーチをくぐると石畳の細い道が伸びている。既に1時半過ぎ。日没には早いが、早く宿を探して荷物を置き、気温の下がらぬうちに村を散策したい。

まず看板のある数件のホテルを回る。どこも部屋の空きがないと言う。それならと、値が張るのを承知でポウザーダにも当たるが、やはりダメ。カフェのおじさんたちは民宿があると言った。それらしい看板も見当たらず、近くで車を磨いていたタクシーの運転手らしき人に聞く。「うちの奥さんが部屋を貸してるよ」。ラッキーだ。早速、部屋を見せてもらう。昼食も取らずに石畳の坂道を上り下り徘徊して疲れたので、「泊まれればどこでも」という気持ちだったが、幸い、テレビとソファ、テーブルのついた窓のある部屋が気に入り、そこに決める。おばさんは気さくで「必要なものがあったら遠慮なく」と親切だ。
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第1便
第3便
丘の上の村、マルヴァオン。         
マルヴァオンの教会。         
土産物店の入り口。         
馬の頭の形をしたドアノッカー。         
民家の窓辺。         
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