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245号


卒業式のシーズンがやってきました。別れの悲しみ、忘れられぬ思い出、新しい世界へ一歩を踏み出す不安と期待。 様々な思い出を抱いて臨む卒業式。
谷川俊太郎さんの「どきん」という詩集の中に「卒業式」という題の詩があります。
機会があればぜひ読んでみてください。






さて、谷川俊太郎さんといえば、詩だけでなく、絵本のテキストや翻訳など子どもの本に関わる 仕事も数多くされています。
中でも、和田誠さんと組んで発表された絵本は、独特の世界を表現した ユニークな作品になっています。

長く読み継がれている「あな」という絵本はその代表格の一冊です。
することがないので、ひろしはあなを掘りはじめます。理由を聞かれても「さあね」と言うだけです。 やがて、深いあなの中で座り込むひろし。しばらくして、あなから出たひろしは、「これはぼくのあなだ」 と言って、再び埋めてしまいます。
理屈で説明しようとすると全てが違ってしまうような気がします。何かを象徴しているようにも 思えるのですが、口にするとやはり、何か違うという気になります。結局、読み手の数だけ受け止め方 があるのでしょう。難解ではないけど、深い味わいがあります。
「あな」(各840円)


今年の1月には『とぶ』という絵本が限定復刊されました。同じコンビの作品です。

とぶ夢を見た翌日、まことはとべそうな気がして走り出すと、とべたのです。鳥の目で見る世界は、 いつもと違っています。やがて地上に戻ったまことは、みちこちゃんにとぶ方法を教えます。

「とぶ夢を見ればいいんだ。」

ふわふわとした浮遊感ではなく、とんでいるという実感が伝わってきます。
「とぶ」(各840円)



「あな」が1976年、「とぶ」が1978年に発表されています。「あな」の表紙は、本文中の 「ひろしはうえを見あげた」というシーンがひろしの目線で描かれています。
丸く切り取られた 空に白いちょうが飛んでいきます。まわりは土の色ですが、そこに丸い青空と白いちょう、とても 印象的なカットです。
「あな」と「とぶ」を続けて読むと、この2冊は一対となるような気がしてきます。地面の下、 空の上、対照的な場所ではあるけれど、確かに自分自身がいるという実感が感じられます。

また、昨年には同じコンビで『がいこつ』という絵本が出ました。
「ぼくはしんだらがいこつになりたい」 ちょっとドキリとさせられるフレーズで始まります。 がいこつになってようこちゃんと手をつないだり、楽しく遊んだりしたい。がいこつだけど、 見えるし聞こえる。思い出すこともできる。そして、一度死んだから二度と死なない。 いつまでもいつまでも、ようこちゃんと遊ぶ。

このがいこつには「死」のイメージも、無機質な骨のイメージもありません。生身の人間以上に 血の通ったがいこつです。すべてを捨てて、骨だけになっても、ようこちゃんと一緒にいたいと 思う、深い愛情に貫かれた絵本なのかもしれません。子どもから大人までぜひおすすめしたい 絵本です。

「がいこつ」(1,260円)

 えぐさもとはる   2006.3




今月の新刊より


福音館書店

「こんにちは おてがみです」
中川李枝子・山脇百合子/こいでやすこ/さとうわきこ/加古里子/富安陽子・降矢なな/カズコ・G・ストーン/筒井頼子・林明子/村山桂子・堀内誠一/佐々木マキ/スズキコージ/にしむらあつこ
  「こどものとも」の人気者たちが手紙を書きました。「ぐりとぐら」「ばばばあちゃん」 「だるまちゃん」「やっぱりおおかみ」等々 全部で10通の手紙が各ページの封筒に 入っています。届けるのはホネホネさん。ゆうびんやさんですから。最後の折りたたみページ を広げると、「こどものともひろば」に。109冊の絵本のなかの仲間たちが登場です。 「こどものとも」50周年記念出版。4,5才〜 (1,680円 ケース入り)


あすなろ書房
「おくりものはナンニモナイ」
パトリク・マクドネル 作
谷川俊太郎 訳
ムーチはアールに贈り物をしたかった。でも、アールはなんでも持っている。ムーチは 考えた。そして、ナンニモナイを贈ることに決めた。ムーチの贈り物ナンニモナイとは...。 シンプルなイラストがとてもいい。谷川俊太郎さんの訳もいい。 子どもから大人まで楽しめます。(1,260円)


ほるぷ出版

「あかがいちばん」
キャシー・スティンスン 文
ロビン・ベアード・ルイス 絵
ふしみみさを 訳
くつ下、手袋、長ぐつ、コップ、パジャマ、絵の具、だれがなんといったって、あかがいちばんすき! という女の子の絵本。赤を効果的に使ったイラストが強く印象に残る絵本です。 3,4才〜 (1,050円)


絵本館

「チーター大セール」
高畠邦生 作
街角で小さな雑貨店を営むチーター。ひまな店だが、ある日、客が来て、チーターの黒い模様を 売ってくれと言う。せっかくだから売った。黒の模様の跡にカラフルな色をぬって、派手なチーター になった。この後、地の黄色も売って、白地にカラフルな水玉模様のチーターになりますが、 さすがに恥ずかしくなり...。とぼけた表情のチーターが笑いをさそいます。 5,6才〜 (1,260円)


フレーベル館

「わたしたちの帽子」
高楼方子 作
出久根 育 絵
5年生になる春休みから1ヶ月間、家の改装のため古いビルの一室で暮らすことになったサキ。 その部屋の古いタンスで見つけた古い帽子。 そして、そのビルで出会った同じ帽子をかぶっている謎めいた少女、育。 古いビルにぎっしりつまった人々との思いと時の流れ。二人の帽子が導く、人の出会いと 別れの不思議な物語。高楼方子(たかどのほうこ)さんのタイムファンタジー。 小学3,4年〜 (1,365円)


徳間書店

「チャーリー・ボーンは真夜中に チャーリー・ボーンの冒険 (1)」
「時をこえる七色の玉 チャーリー・ボーンの冒険(2) 」
「空色のへびのひみつ チャーリー・ボーンの冒険(3) 」
ジェニー・ニモ 作 ジョン・シェリー 絵 田中 薫子 訳  
はるか昔、<赤の王>と呼ばれる大魔術師がいた。その王の力を受けつぐ10人の子どものうち 5人は悪の道へ。そして現在、その末裔たちは、自分の特別な力に気づき、<めぐまれし者> となる。チャーリー・ボーンもその一人である。12人の<めぐまれし者>がいるブルーア寄宿学校 に転校させられたチャーリーだが、悪意の校長ブルーアやその一味と対決しながら、仲間とともに 行方不明の父を探す手がかりを求めて、戦いは続く。 全5巻の第1巻。続いて2巻、3巻も出ました。善悪入り乱れてのスピーディーな展開と、登場人物のおもしろさがとてもうまい。 小学5、6年〜 (1,995円)


パジリコ

「またまた へんないきもの」
早川いくお 作
寺西 晃 絵
「へんないきもの」第2弾。見かけがへん!生態がへん!行動がへん!名前がへん! よくこれだけのへんを集めたち感心します。コメントはユーモアの度を越して、ちょっと... というものもあり。二冊目なのに、「またまた」というタイトルもへん? (1,575円)



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