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●ジオジオの気になる本たち 31~39
●ジオジオの気になる本たち 1~10
●ジオジオの気になる本たち 11~20
●ジオジオの気になる本たち 21~30





 *39*   2005.12.


「ジオジオのかんむり」
岸田衿子 文
中谷千代子 絵
福音館書店

年をとったライオンの王様ジオジオはつまらなくなっていました。王様としてみんなに恐れられることに。ある日、小鳥が 卵を黒ヒョウやヘビにねらわれると助けを求めにやってきました。ジオジオはかんむりのなかに巣をいれ卵を守ります。やがて目がもう見えなくなったジオジオに聞こえてきたのは...。 1960年刊の絵本ですが、中谷千代子さんの圧倒的な力量の絵が今も多くの人に愛されています。20年前、作者の岸田衿子さんと中谷千代子さんのご主人に お願いしてジオジオの店名にさせていただきました。
780円 (税込み)


「ひげよさらば」
上野 瞭 作
理論社

上野瞭さんの作品は、人間の、もしくは人間世界の”闇”の部分を浮き彫りにし、読者に重い課題をつきつけてきました。 野良猫たちと野良犬たちの縄張り争いというストーリーの中で、個と集団の問題、そして生きることを肯定した上野瞭さんのテーマが浮かび上がってきます。 この作品は780ページの大長編ですが、そのおもしろさは、私たちが子どもの本にのめりこむきっかけとなりました。 児童だけの文学ではない児童文学作家だったという思いを強くします。上野瞭さんの本で「ひげよさらば」を含む他の作品も紹介しています。
4830円 (税込み)


「子どもの本の現在」
清水真砂子
岩波書店

現在も活躍中の方たちも含めて7人の日本の児童文学作家を取り上げた評論集。 作品の批評だけでなく、作品を通して作家の到達点を示すという今までにはない児童文学評論が展開されています。 児童文学が語られる時に見られがちな”甘ったるさ”を排し、明確に児童文学の地平を示した点で、 児童文学批評にも新しい風を吹き込みました。 この一冊もジオジオに力を与えてくれました。絶版のあと14年経って岩波書店から再び刊行されました。 それぞれの作家たちの14年の月日を”もうひとつのあとがき”として巻末に、あらためて述べられています。
1260円(税込み)
品切れ重版未定



 *38*   2005.10.


「にんげんごっこ」
木村祐一  作
長 新太  絵
講談社

人間を知らない動物たちが、人間とくらしたことがあるというのらねこの”のら”に、人間のことを教えてもらいながら ”にんげんごっこ”をすることになりました。どうぶつたちはのらの言うとおりに、横断歩道になったり、踏み切りの遮断機になったり、 掃除機になったり...ちょっと物知り顔のねこがみんなを振り回しますが、そのナンセンスさに笑います。長新太さんの絵はとってものびやかで、 明るくて楽しい。
1680円 (税込み)


「クマよ」
星野道夫 文・写真
福音館書店

星野道夫さんの遺稿とメモから作られたこの絵本の文章と写真は、 心の奥底にある自然への回帰の想いがゆさぶられ、痛いような感情でいっぱいになります。 時空を超えて感じていた同じ時間を生きているクマの息づかい。クマのいる風景を前にしてもなお遠いおまえ(クマ)の存在。 クマの気配を感じながら眠るふしぎな感覚、どのページにも星野さんのクマへの愛があふれ、クマがともにいます。きっと今もなお...。 何度読んでも詩、写真ともに心打たれます。
1365円 (税込み)


「子どもと病気」
山田 真
太郎次郎社

毎日、患者さんたちとふざけあい、時には深刻になったりしながら、いつまでも町医者修行を続けていきたいという小児科医の 山田真さん。子どもに対する考え、そして体、病気に対する考え方が好きです。いろんな病気を携えてやってくる子どもたち、そして診察のエピソードが 20話綴られています。扁桃腺あり、原因不明の発熱あり、喘息あり、病気そのものを含めてそれぞれの子どもを見つめてくれる山田真さんのような お医者さん、近くに欲しいですね。
1835円(税込み)



 *37*   2005.9.


「かかかかか」
五味太郎  作
偕成社

でてくる 言葉は  、主人公は 、登場人物はえる、メレオン、ば、ンガルーなどなど最後にはめ、さも。 このお膳立てで何度読んでも私は笑ってしまいます。「かかかかか」ととんできた蚊、つぎのページにはかえるやカメレオンにかゆそうな刺されたあとが残っています。あっ”ゆい”もで はじまるぞ!と気づきました。このシリーズは「ぽぽぽぽぽ」や「るるるるる」など10冊がでていますが、この「かかかかか」は私には絶品です。 ただただ笑います。
1055円 (税込み)


「かたつむりハウス」
アラン・アルバーグ ぶん
ジリアン・タイラー え
おかだよしえ やく
評論社

夏の夕方、おばあちゃんは3人の子どもたちをそばによんでお話してくれます。「むかーしむかーし。豆みたいに小さくなった三きょうだいがかたつむりハウスをみつけたんだってさ。」 「かたつむりハウスってなに?」子どもたちとの会話をはさみながらおばあちゃんの話は続いていきます。あたりは少しずつ夕暮れに...。 かたつむりハウスのすてきなこと!ドアもまどもあり、やねもえんとつも。せんたくものをほしたり、本をよんだり、掃除をしたり、暮らしも快適そうです。おまけに移動するのですから。
1365円 (税込み)


「ねこはしる」
工藤』直子
童話屋

ひとりぼっちの猫ランとひとりぼっちの魚が出会った。二人は親友になり、心をよりそわせ、日々の思い出を積み重ねていく。 大地がその二人の命を抱き、風が、野原がその二人を見守る。やがてやってきた二人の輝く時の終わり...。他の猫に食べられるならランに食べられて ひとつになり、ともに生きたいという魚。究極の愛の結論が出される。工藤直子さんの語りのような文が心に沁みます。魂の崇高な部分にふれた気がする作品です。
1313円(税込み)



 *36*   2005.8.


「くさむら」
田島征三  作
偕成社

ボールがはずんでくさむらのなかへ...。田島征三さんが描くくさむらの世界は 躍動感にあふれ、色彩豊かで目を見張ります。 石、草や花、バッタやかえるなどがなんと自由に描かれていることか。こちらまで心が解放されていくようで楽しくなってきます。 真っ白なボールはそんなくさむらをはずみ、かけぬけ、ころがることによって心にいろんなものをつかまえていきます。 もちろん私たちの心もです。 
1575円 (税込み)


「とんぼとりの日々」
長谷川集平 作
ブッキング

いっぺんやってみたい、少年たちのちいさなとんぼへの残虐な思い。なかなかつかまえられないとんぼをけしごむを使って簡単につかまえた 九州チクホウ(筑豊)から来た少年。命への少年たちのそれぞれの思いが交差します。 「かわいそうや」とはなしたトンボは”ふらふら、と飛んで すとん、と落ちて死んだ。” 最後のページがせつなく心に残り続けます。少年であった頃の日々のワンシーン。長い絶版より嬉しい復刊。
1680円 (税込み)


「働くこと育てること」
落合由利子 写真と文
草土文化

乳幼児がいる、働いている、男女は問わないということで、取材したなかの16人の日常の生活を写真とエッセイで紹介しています。 ”生きるということはたいへんでおもしろいことなのだと思う”という写真家落合さんの言葉に、ほんとに実感としてうなずけます。 16のストーリーと写真からは、そこに流れる生活の空気やにおいまで伝わってくるようです。喜び、不安、疲れ、希望など、 そういう思いを繰り返しながら生きていくということをあらためて思います。
1575円(税込み)



 *35*   2005.7.


「てん」
ピーター・ レイノルズ  作
谷川俊太郎 訳
あすなろ書房

絵が大嫌いで、描けないワシテに先生は「じゃあなにかしるしをつけて。」そして「サインをして。」 次の日にワシテが”てん”を描いた画用紙がりっぱな金色の額にいれられて飾ってあった。ワシテは思います。もっといい”てん”が描けると。 子どもにとってどういう大人でありたいか、子どもにじゃまにならないようにそっと背中を押す役目が どうやったらできるのか、そんなことを教えてくれた一冊です。 ワシテは上手に”せん”が描けないという少年に言います。「いいから”せん”をひいて、そしてサインをして」と。
1050円 (税込み)


「町のけんきゅう」
岡本信也・岡本靖子 文絵
伊藤秀男 絵
福音館書店

考古学に対して現代の人の暮らしや風俗を研究する考現学の採集をもとにこの絵本ができたと"あとがき"にあります。 学問とか研究とかはこういうものだったんだと楽しく嬉しく目からうろこです。 町にあるもの、出会う人々、家々、すべて見る目が変わります。みんな考現学の対象です。研究のノウハウも書かれています。 あ~こういう一冊、私も子どもの頃に欲しかったなあ~。余談ですが夏休みの宿題、自由研究のアイデアも満載。と思います。
1260円 (税込み)


--四季のピアニストたち--
「サマータイム」
佐藤多佳子 作
偕成社

「9月の雨」と2部作になっています。どちらもタイトルはジャズの名曲。 ジャズピアニストの母を持つ少年。事故で片腕と父を、そしてピアニストになる夢までも無くしてしまった。そんな少年と姉弟の 出会い。姉の可奈にとっては少年との恋の始まり、弟、進にとっては片腕で弾く少年の"サマータイム"を聴いたときからピアノとの出会いが始まった。 少年広一と母、そして母の新しい恋人とのかかわり、物語の間中こちらの心の中にもせつないジャズのメロディが離れないで流れています。
1260円(税込み)



 *34*   2005.6.


「おつかい」
さとうわきこ さく
福音館書店

雨の日におつかい?いやあよ。と女の子。そのいやなわけがだんだんとエスカレートしてきます。あしがふれちゃう、かみのけがぬれちゃう、ふくがぬれちゃう。 そんなことでゆるしてくれるお母さんではありません。そのたびにそばにいるねことねずみは傘を用意したりレインコートを持ってきたり...。 とうとう出かける気になった時の重装備といったら!そのくりかえしに笑います。たしかばばばあちゃんのシリーズにもこの”のり”ありました。「いそがしいよる」これも大好きです。
1050円 (税込み)


「おとうさん」
長島正和 作
絵本館

自分自身のなかにある意識下の遠い記憶・ルーツをさぐるような気持ちにさせられます。 ぼくのおとうさんのおとうさんのおとうさん...たちは何をして何を残してきたのだろう...。猟師だったり、お百姓だったり、運転手だったり。 そしていつかぼくがおとうさんになったら、そしてぼくの子どもがおとうさんになったら何をしているのだろうか...。 いつか来るそういう未来にも思いを馳せます。自分は脈々と流れ続ける時間の一途中にいるのだという壮大な気持ちになります。 ずーと先の子どもがおとうさんになったら、ちがう星でくらしているかも...と。
1575円 (税込み)
出版社在庫僅少


「親ができるのは「ほんの少しばかり」のこと」
山田太一 作
新潮社

ご自身も子どもを愛し、そしておろおろと子育てにかかわりながら、 既成の概念を取り払って個々の子どもを見ることの重要さ、面白さ、そして光の中だけで子どもは育っていくのではないという考え方に 救われます。矛盾、悪、嘘、あいまいさなど、親や言葉によって解決されない世界でゆっくりと育ってくる魂のようなものが子どもの世界にはあるという、 自分の生い立ちを語りながら、多分私たちの誰もがそういう闇の面をかかえながら生きてきたのだと気づかされます。 山田太一さんの描くドラマの魅力あり!です。文庫版、解説は清水真砂子さん。 420円(税込み)



 *33*   2005.5.


「ニーナはおちびさん」
ジャック・ケント作
中川健蔵 訳
好学社

ニーナはちいさな女の子。ニーナに見えるものといったら裏側ばかり。 だっこしてもらわないと高いところのものは見えません。はやく大きくなりたいニーナです。 ある日、ニーナは願ったとおりに大きくなって、 こんどはお父さんやお母さんが 小さくなってしまいます。でもニーナは自分がまだまだおもちゃや犬やともだちと遊びたいのだと 気づきます。この絵本であらためて、子どもたちの視線の高さを意識させられます。きちっと目を合わせないと、 子どもたちにはいったい大人はどんな顔にみえているのやら...。
1121円 (税込み)


「うたうしじみ」
児島なおみ 作
偕成社

もうほんとにこういうしょぼくれた魔法使いになって、こういう暮らしがしたいのです、私は。猫と住んで。 魔法使いが夕食にと買ってきたしじみたち。プチプチゴソゴソといびきをかいて気持ちよさそうに寝ています。どうしても食べられません。 「同情したらあかんよ」という猫のトラジの声をよそにとうとう海にかえしてやることに。でもそれには海にいくためのお金が必要です。 この魔法使いのおばあさん、魔法なんてもう使えない、そこで...。 児島なおみさんの絵がとてもいいんです。長い絶版から嬉しい復刊です。
1050円(税込み)


「楽園のつくりかた」
笹生陽子 作
講談社

突然の出来事、突然の悲劇、子どもは子どもなりに事態を乗り越え、自分を再生していく方法を考えなくてはいけない。 都会のエリート中学生を自負するぼくは、親の都合でまだらに痴呆ぎみのおじいちゃんが住む父の田舎に母と二人で引っ越すことになった。 同級生は3人。そのうち二人はわけありの山村留学生。塾や模試などとは遠い世界だ。不満はつのり遠く外国にいる父にメールを...。 人生に折り合いをつけるためにはうそも必要、ごまかしだって。思いもかけないかかわりに助けられつつ、そうやってみんな大人になってきたのだと思う。
1260円(税込み)



 *32*   2005.4.


「あな」
谷川俊太郎 文
和田 誠 画
福音館書店

なにもすることがなかったので、ひろしはあなをほりはじめました。 まわりの質問や干渉にもほどほどの返事をしながら、もくもくと深く深く..。 掘ったあなにすわってみると、そこはぼくだけのあな。ぼくだけの世界。そこからみあげるぼくの空。 やがてあなからでたひろしは大きな満足感をそのあなに残して、うめていきます。こういう時間や空間が必要なのは子どもだけではありません。こういうあなの世界をほしがっている 自分に気づきます。表紙の絵がいいです!
840円 (税込み)


「3びきのかわいいオオカミ」
E.トリビザス 文
H.オクセンバリー 絵
こだまともこ 訳
冨山房

「3びきのこぶた」のパロディ絵本です。 3匹のかわいいオオカミの建てた家をこわしていくわるい大ブタのなんとダイナミックなこと。レンガの家にはハンマーを。コンクリートの家には電気ドリルで。ついにはダイナマイトでドカーン!。 おもわず喝采をおくりたくなってしまうほどです。最後はブタとオオカミはおたがい仲良くお茶を...になりますが、 それがなにかしら少し残念なのは私の性格の悪さでしょうか..。
1470円(税込み)


「真夜中のパーティ」
フィリパ・ピアス 作
猪熊 葉子 訳
岩波書店

いつもと変わらない日常のなかにも、特に子どもにとっては様々なドラマを経験していることがあります。 生活の中で、いやでも遭遇する大人の心の動き、そして無意識のうちに経験する自分の心の変化、そのことで驚き、傷つき、また救われ、そんな物語が8編。 その時には気がつかなくても、大人になって思い起こすとまるで映画をみるように鮮明によみがえる情景と哀しいような感覚、私にとっては珠玉の短編集です。
672円(税込み)



 *31*    2005.3.


「はるにれ」
姉崎一馬 作
福音館書店

北海道の原野に立つ一本のはるにれの木。 四季それぞれに見せる表情を写した写真絵本です。 厳しい冬の写真に魅かれます。吹雪の中に立つはるにれ。真っ白な雪原に陽を浴びてたつはるにれ。 やがて春の訪れとともにはるにれの表情もやわらかくなり、張り詰めた空気が 緩んでくるのが感じられます。まるで自然界そのものの喜びが伝わってくるようです。何度見ても見飽きると言うことがありません。 どのはるにれからも元気をもらえます。
945円 (税込み)


「がたたんたん」
やすいすえこ 作
福田岩緒 絵
ひさかたチャイルド

舞台は電車の一車両の中、当たり前ですが乗客はみんな知らない人同士です。 女の子の持っているバスケットから子猫が飛び出します。捕まえようとした男の子の漫画をとなりのお兄さんが持ってくれて、 そこに急ブレーキ、おばあさんの荷物から毛糸玉がころころと...。見知らぬはずの人たちが少しずつ心を通わせるにつれて白黒だった画面に色がついていきます。降りる時には画面はすべて 色がついて、みんなほのぼのとした気持ちになっています。もちろん読者もです。
1050円(税込み)


「永遠の出口」
森 絵都 作
集英社 

小学3年生の少女が大人になっていくということ。そして大人になって思う。どんな未来でもありえたのだと。 友だち、男の子、担任の先生、姉、母、父、家族、失恋、大人になっていくまでの通過儀礼のなんとせつないこと、 その懸命さ、苦しさ、痛さのなんといとおしいこと。そして気づかされていく、永遠のものってないんだといいうことに。 生きれば生きるほどに、子どもの頃に描いた「大人」とは似ても似つかない自分がいまも手探りしている、その一文が心に沁みます。
1470円(税込み)


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