「ポルトガル紀行 妻子とともに行く、美しく快楽な南欧の地」
【あとがき】 より

 私の初めての本を手に取り読んでくださった方、愚文にお付き合いいただき感謝します。

 一九九八年夏のポルトガルは、全容を書き残したいと思うほど、心地よく楽しい旅でした。驚きと喜びが絶妙にミックスされた、味わい深いものでした。バイロ‐アルトの夜の匂いやアレンテージョの乾いた暑さを、今でも昨日のように思い起こすことができます。九八年七月の旅行前から九九年四月に書いた文章を、自身で撮った幾つかの写真を添えてこの本にしました。

 高校二年生から三年生になる春休み、原稿用紙に書き殴った稚拙な小説的作文が私の文章づくりの端緒です。その冒頭には「自己の無能力を自ら知らしめ、同時に利己心の発動による精神的向上のための、かつ自己の人生の一点において自己の位置を確信するための、自己との直接的闘争。およびその闘争のための予備事項としての作文」と、青臭い独善的前提を示しています。

 紀行文をはじめとするノンフィクションを書き始めたのが一九八八年、しかし同様にこの文章群もまた自己保存と自己顕示の欲求に基づくものにほかなりません。このような文章を書く場合、「いかに書くか」でなく「何を書くか」が重要だと知っています。その意味で、私自身この本が多くの方々に共感を得るものではないと熟知しています。私の知人友人百人が読んでくれればこの本に存在意義があったと思います。古い友人には、恐らく近況報告を兼ねることになるでしょう。

 ポルトガルへ行く発端を与えてくれたI氏夫妻に礼を言わなければなりません。美しい映像を魅せてくれた名古屋テレビの番組にも感謝しなければなりません。また、ご本人は迷惑でしょうが、「深夜特急」の著者、私が著作を本文内でも引用している沢木耕太郎氏にも感謝しています。この地の魅力を潜在的に知らされ、私が二十代後半に紀行文を書き始める契機を与えてくれたのも彼の著作だと告白しておきます。二〇〇〇年十一月、或る方の計らいで少人数の会合において氏に会うことが叶い、親しく会話いただき本当に有難く思っております。

 さらに私の周囲でこの文章の原稿を読み、一定の評価をくださった友人知人にも「ありがとう」と申し述べたく思います。このポルトガル紀行やその他の雑多な文章を、あなたがたの支えなしに書き続けることはできません。このオンデマンド出版という方法を教わり、この出版に協力いただいた方々にも御礼申し上げます。

 そしてもちろん、私のパートナーである妻真智子と、今年小学校二年生になっている耕大には、私の我儘と独断に付き合って旅を歩き、しかもプライベートな出来事をこのような形で公開してしまうことに、詫びるとともに感謝します。オブリガード!

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 umetani@fan.hi-ho.ne.jp

二〇〇一年辛巳 秋



                  
「旅の手帳」…私の旅の手帳の1ページを解説。私がどんなことをメモして文章を書く素材にしているか、少しだけご覧いただけます。クリックしてみてください。
「あとがき」より


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