Newtype Influenza Infection

§H20/10/22 那須郡市医師会学術講演会 
1: 「新型インフルエンザとその対策について」
国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官 安井 良則
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§H20/7/26 インフルエンザ研究者交流の会臨時シンポジウム 
・菅谷憲夫(WHO トリ・インフルエンザ治療ガイドライン検討委員)
・庵原俊昭(三重病院)
・押谷 仁(東北大学)
・西村秀一(仙台医療センター)
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菅谷先生の意見は次のようなものです.
1.日本のプレパンデミックワクチンの性能は、欧米のワクチンに比べまだ十分ではなく、どの程度効果あるかも疑問である.
2.現在、H5N1の流行状況はWHOや日本の定義でもまだフェーズ3であり、パンデミックのリスクの蓋然性はまだ低い.
3.プレパンデミックワクチンは、通常のワクチンとは製造法が異なり(全粒子ワクチン;アジュバント添加)、国民への大規模接種を実施すれば、1976年米国での豚インフルエンザ騒動でのギランバレー患者の出現のように、副作用問題が燃え上がる懸念がある.
4.ワクチンの接種は、メリットとデメリットを勘案して判断すべきであり、現在のパンデミックのリスク程度では、現状でのプレパンデミックワクチンを、今日本が敢えて世界に先駆けて国民に接種する理由はない(同趣旨を、H20の栃木県総合医学会でも講演、H20/10/25日本医事新報NO.4409により新しい論文掲載).


一方、庵原先生の意見はこうでした.
1.日本のワクチンの性能は欧米のワクチンにくらべて悪いかもしれないが、それでも接種を受けた人たちのほとんどで抗体の「上昇」が見られており、接種により予防効果が推測できる.
2. 現在、東南アジアでは依然としてH5N1の鳥での流行が続いており、ヒトでの患者も散見され、新型はこの亜型から発生する確率が高い.プレパンデミックワ クチンは同じ亜型のウイルスから作るので効果が期待できる.今、ワクチンを打っておかないと実際にH5N1ウイルスのインフルエンザの流行がわが国にやっ てきたときに間に合わない.H5N1に備えるのは社会防衛上必要不可欠である.
3.1976年の米国でのギランバレー症候群の出現も、原因はよくわかっておらず、そうした副作用への警戒心ばかりが先行すると、多くの犠牲者が出る危険性が高くなる.
4.ワクチン接種は任意であり、接種しないという決断もありうる.その場合、個人が下した個人的、社会的責任を負う覚悟が必要である(厚労省・国立感染症研究所感染症情報センターは同じ見解である).