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★bookland 196 号★ ★上野 瞭さんの作品紹介★ |
1月29日のお通夜には、いっこさん共々参列いたしました。多数の方々ー児童文学者、出版関係、大学
の教え子の方々ーがお集まりでしたが、式は簡素というか、素っ気無いと思うほどでした。
これも、残されたご家族、参列者への上野さんらしい気遣いではなかったかと思います。
かって、ジオジオでも上野さんに二度講演をお願いしました。そんな時でも私たちに対して本当に
細やかなお気遣いをしていただいたのを今も鮮明に思い出します。
また会場では清水真砂子さんが
お一人でじっと悲しみに耐えていらっしゃる姿に胸がいたみました。
オヤジが子どもの本屋を始めようと漠然と思っていた時に上野さんの「ひげよさらば」に
出合いました。こういう作品があり、こういう作品を描く人がいる世界に自分がかかわるのだと
思うと、嬉しさと同時に本気で取り組まなければ、と身の引き締まる思いでした。ある意味では、
ジオジオはここからスタートしたとも言えます。
こうして作品を読み、時にはお会いする機会もあり、そうする毎に上野さんの大きさ、深さに
魅せられていきました。盲目的にというのではなく、確信犯的であったと思います。『この人の
後を歩いてみよう』と思いました。どんな本を書いたのだろう、どんな本を読んだのだろう、
どんな映画を観ているのだろう…いつも気になる方でした。
結局、ヨタヨタと後をついていくだけで精一杯でした。
同じ時代の同じ空気を吸っているというだけで、なんだかとても安心感を与えてくださる方でした。
もっともっと新しい仕事をしてほしいという願いもありましたが、ご病気以後は、とにかく
”いてくださる”だけで充分でした。
そして、いつしか上野さんがいる間はジオジオを続けていこうと思うようになりました。
オヤジなりのピンチを迎えた時の対処法だったのかもしれません。
しかし、上野さんを失った今、
自分の居場所を見失ったような感覚です。ここから立ち直るにはずいぶん時間が必要だろうと
思います。失ったものの大きさを思い知らされる日々になりそうです。
2002年2月 もとはる