地域医療・予防接種の種類と質疑応答


予防接種記録・罹患記録を残しましょう!

■ウイルス感染症と予防接種--当院では小児のBCG、MRワクチン、成人の予防接種を予約にて実施しています.


■小児の伝染性疾患とワクチン(赤字はワクチンのある疾患)
病名 感染状況 主症状 合併症 治療
麻疹(M)
(はしか)
麻疹ウイルス
経気道感染
潜伏期2週間以内
(95%は顕性感染)
有熱風邪症状から高熱となる
口の中に特有の発疹.体に色素沈着を残す発疹出現.
重症感が強い
中耳炎、肺炎が起こりやすい.時に脳炎 対症療法のみ
定期予防接種
(MR生ワクチン)
*学校伝染病の第一種に指定され治癒するまでは学校に行けません.特徴的な発疹がすぐ消える場合は注意が必要です.
風疹(R)
(3日はしか)

風疹ウイルス
経気道感染
潜伏期3週間以内
リンパ腺腫大.中等度発熱
はしか様発疹も3日で消失.
関節炎、脳炎、紫斑症
先天性風疹症候群
(妊娠5ヶ月以内の感染)
対症療法のみ
定期予防接種
(MR生ワクチン)
*学校伝染病の第一種に指定され治癒するまでは学校に行けません.
**MRワクチン:麻疹と風疹の2つの病気に対する混合ワクチン.有効抗体量は、麻疹抗体IgG8以上、
風疹抗体HIで16倍以上(妊婦32倍以上.流行性耳下腺炎ではムンプス抗体IgG6以上)
流行性耳下腺炎(ムンプス:M) ムンプスウイルス
飛沫、接触感染

潜伏期3週間程度
V-6歳に好発.
発熱、唾液腺(耳下腺が多い)
の腫脹・疼痛
無菌性髄膜炎
思春期男性:睾丸炎
思春期女性:乳腺炎
予防接種あり(任意)
*MMRワクチンとして混合されていたが、1994年、ムンプスワクチンによる無菌性髄膜炎が発症し、MMRは
中止となった.ムンプス単独ワクチンの接種は可能.
ポリオ ポリオウイルス
経口感染
90%は不顕性感染

潜伏期3週間±1週
発熱・頭痛・嘔吐・眠気等の
髄膜炎症状から運動麻痺.い
わゆる小児麻痺(下肢中心).
成人四肢麻痺多い.
死亡率:小児2〜5%、
成人15〜30%
定期予防接種
(ポリオ生ワクチン)
*感染症新法の第二類.学校伝染病の第一種に指定され、治癒するまでは学校に行けません.
ポリオワクチン:日本は生ワクチン.ワクチン株からの発症がゼロでないため、不活性化ワクチンが望まれる.
ジフテリア(D) ジフテリア菌
飛沫・接触感染

まれな疾患だが、毒素のため
重症になり易い.
心筋炎・神経炎 抗毒素血清注
抗生物質
定期予防接種
百日咳(P) 百日咳菌
経気道感染
90%は不顕性感染
潜伏期2週間以内
風邪症状と特徴的な激しい咳
発作.発熱なし.咳発作の時
嘔吐し、咳の為絶えず顔が真
赤で、点状出血を伴う.
他菌肺炎を合併(21%)
全経過100日を要することがある.
エリスロマイシン有効
定期予防接種
破傷風(T) 破傷風菌
(土の中の常在菌)
経口・接触感染

潜伏期1週間程度
開口障害と全身痛.
神経毒の為に、全身性の強直
性筋緊張と痙攣を起こす.
髄液検査は正常.
S43年以前の誕生では、
免疫なしとみなす.

死亡率が極めて高い
トキソイド、ペニシリンG、破傷風グロブリン及び全身管理.定期予防接種(トキソイド)
*DPTワクチン:ジブテリア・破傷風・百日咳の3つの病気に対するワクチンが混合されています.早期の確実
な接種(最低3回)が必要です.破傷風は10年で免疫力が落ちる.
突発性発疹
ヘルペスウイルス
経口感染
乳児期のみ感染.
(約60%が顕性感染)
高度発熱3-5日.解熱ともな
い発疹が出現.
高熱であるが
重症感がないのが特徴.
熱性痙攣、下痢 対症療法のみ
伝染性紅斑
(りんご病)

パルボウイルス
経気道感染
潜伏期2週間
発熱、関節痛
顔面の蝶形紅斑(10日間位)
四肢のレース模様発疹
妊婦感で胎内感染
対症療法のみ.発疹出
現時にはウイルス排泄は
終わっている.
水痘
水痘-帯状疱疹
ウイルス.経気道感染
潜伏期3週間以内
発熱、水疱性発疹が多発する
回帰感染として帯状疱

{有効抗体量IgG6以上]
抗ウイルス薬
高力価ガンマグロブリン
予防接種あり(生ワクチン、任意)
日本脳炎 日本脳炎ウイルス
コガタアカイエ蚊媒介
90%は不顕性感染

潜伏期3週間以内
突発する高熱・頭痛・嘔吐・眠
気等の髄膜炎症状から脳炎.
血清診断(HI、CF).
初期の強い意識障害は
後遺症が多い.
完治率は30%と低い
予防接種あるも休止中
*感染症新法の第一類に指定されます.東南アジアに多い感染症です.ヒトからヒトの感染は原則としてありません.日本ではH18/9月以降の発症はない.現在ワクチン接種は不可能
ノロウイルス ノロウイルス
経口感染
潜伏期1-2日
おう吐、下痢、発熱.
通常は3日以内で治癒.
(ウイルスは抵抗性が強く、排
菌も長い.RT-PCR・電顕)
感染力が強い.
消毒は、次亜塩素酸Na
予防は、マスク・手袋・手洗い.
対症療法
Hibワクチン
(アクトヒブ)
乳幼児の細菌性髄膜炎(初期診断・治療が難しい病気)の原因菌である、インフルエンザ菌b型に対するワ
クチン.
任意接種で3ヵ月〜5歳迄に4回接種する.現実的には、細菌性髄膜炎は3歳迄に多い疾患なので、2歳迄に接種を終了した方が良いと思われる(DPTワクチンと同時接種可能.生後6ヶ月以内に3回受ける
のがベストです).2008年12月より、日本でも接種が可能となりました.
主に成人
インフルエンザ
インフルエンザウイルス経気道感染
潜伏期2-3日
突然の高熱、悪寒で始まる.
頭痛、関節痛が強く重症感の
ある風邪症状
肺炎、脳炎
(老人、小児は要注意)
予防接種がベスト
対症療法.抗ウイルス
薬の使用.解熱薬の種類には注意!
*インフルエンザワクチンは毎年接種する.但し、2回接種での抗体保有率は70%程度.有効期間4-5か月.
抗原性の問題で、H(A)の数字が違えば予防効果なし.四類感染症.H5N1は指定感染症.
B型肝炎 母子感染
キャリア感染
針刺し事故
風邪様症状から、全身倦怠感の増強、黄疸発現 慢性化、劇症化 B型肝炎ワクチンの接種
抗HBs免疫グロブリン
インターフェロン
*B型肝炎ワクチン:米国では乳幼児にも積極的接種.HBs抗原/抗体両者陰性の感染リスクの高い場合
**母子感染予防、針刺し事故では抗HBsグロブリンと併用する(HBs抗原、e抗原陽性血汚染).
A型肝炎 同ウイルスの経口感染
同上 まれに劇症化 A型肝炎ワクチンの接種
(流行地への渡航等)
*A型肝炎ワクチン:米国では乳幼児にも積極的接種.
肺炎球菌ワク
チン
(ニューモバックスNP)
*市中肺炎の起因菌の30%以上を占めている、肺炎球菌に対するワクチン.肺炎そのものが軽症であっても
、COPD・悪性腫瘍、肝硬変、腎不全等の疾患があると重症化する可能性があるので予防効果は高い.
日本のワクチンは、肺炎球菌筴膜ポりサッカライド(23種PPV).有効期間は、5-10年.副作用・抗体価の
観点から再接種は不可.免疫学的な観点から、2歳未満には接種不可.
米国では乳幼児にPCVを接種.

予防接種QA
1:予防接種対象疾患の重症度は? 7:予防接種を受けられない病気について?
2:効率的な予防接種の受け方は? 8:注射後の諸問題
3:風邪をひいている時の予防接種? 9:外国人の方の接種について
4:家族の伝染性疾患罹患時の予防接種は? 10:海外へ長期滞在する場合の予防接種
5:けいれんと予防接種の関係について? 11:BCG接種について
6:アレルギーに関連する事項について? 12:米国の小児ワクチン接種
13:予防接種後の有効抗体価(一覧)

1:予防接種対象疾患の重症度は?
重症度 疾患名又は病名
致死的---重度の後遺症を残す 痘瘡、日本脳炎、ポリオ、破傷風、ジフテリア
重症感染-深刻な合併症を伴うことが多い 百日咳、麻疹、インフルエンザ、結核
中等症---時に深刻な合併症が伴う 風疹、おたふくかぜ、水痘
2:効率的な予防接種の受け方は?
BCGとポリオを生後1年内に受けられば、他のワクチンは問題ないと思われます.では忘れた場合.年齢にもよりますが、先ず麻疹.次いで三種混合DTP1回目.次いで水痘(任意)、DTP2回目.次いでおたふく風邪、DTP3回目.次いで風疹(任意)を優先して接種.BCGとポリオを最後にしてください.接種期間は充分注意してください.
不活性化ワクチンの場合
・インフルエンザ
・日本脳炎
・三種混合DPT
・二種混合DT
・ジフテリア
・破傷風
・B肝炎ワクチン
不活性化ワクチンを接種したら、
次の接種は、6日以上空ける.
(ワクチンの種類に関係なし)

前回のワクチンが不活性化ワクチン
なら、6日以上経っている事.
生ワクチンだったら、27日以上待つ.
生ワクチンの場合
・MRワクチン
・麻しん
・風疹
・おたふくかぜ
・水痘
・黄熱
・BCG
・ポリオ
生ワクチンを接種したら、
次の接種は27日以上空ける.
(ワクチンの種類に関係なし)


前回のワクチンが不活性化ワクチン
なら、6日以上経っている事.
生ワクチンだったら、27日以上待つ
3:風邪をひいている時の予防接種?
風邪の罹り始めは、今後の予想ができませんので接種はしない方が良いでしょう.それがやや重い風邪であれば改善後2週間は避けてください.伝染性疾患の場合は改善後4週間は接種できません.
では、軽い風邪で熱も無く、洟と咳が続く場合は?この時は充分な診察を受けて下さい.通常37.5℃以上の発熱や、扁桃腺・リンパ腺の炎症が無ければ接種可能とおもわれます
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4:家族の伝染性疾患罹患時の予防接種は?
家族が伝染性疾患に罹っている場合で、接種者に症状が無い場合.これは本人が該当疾患の潜伏期にあるか感染していないか不明の状態です.接種前の診察で問題なければ接種可能です.但し、接種後に症状が出現した場合は、接種ワクチンが生ワクチンの場合は、その効果が充分現れない事が予想されます.場合により再接種が必要なこともあります.その意味で、家族が罹患している病気と同じワクチン以外の接種は避ける場合もあります.
5:けいれんと予防接種の関係について?
けいれん性疾患に関しては「熱性けいれん」と「てんかん」とに分けています.今回の改訂で「1年以内にけれんを認めた場合」は「接種要注意者」となりました.要注意の内容が問題ですが、先ず小児専門医に受診中の方は主治医の承諾を頂いてください.けいれんが予防注射によって惹き起こされたか否か、判断することが難しいためです.
熱性けいれんは、単純型で初回発作から6ヶ月以上発作の無い場合は、基本的に接種します.但し問診の時に、単純型か違うのか区別がつかないのが現状です.従って以下の点について、明記する事が必要です.
1:生後6ヶ月以上で5歳未満での発症.
2:初回発作は15分以内で、以後けいれんなし.
3:発育障害及び神経的異常が無いこと.
1.2.3に当てはまる場合は接種が可能と考えます.当てはまる場合は、専門医の診察を受けてご相談下さい.接種に際しては、発熱、痙攣の対策をたてておくことが望ましいのです.特に麻疹の予防接種は接種後の発熱に注意が必要です.私はポリオ、BCGはなるべく接種したいと考えています.
てんかん治療中の場合は、基本的に1年以上発作の無いこと又は、安定していることが条件ですが、特殊な治療をしている場合もありますので、主治医のところで個別接種をして頂いて下さい.けいれんの対策は必ずしておくこと.
6:アレルギーに関連する事項について?
重症のアルルギー疾患がある児は、基本的に皮内テストを行うことが望ましいので、出来るだけ主治医と相談し個別接種して下さい.予防接種薬精製の問題で鶏卵白やゼラチンのアレルギー検査(IgE RAST)を受けて下さい.下記以外のワクチンでは鶏卵を通常食べている方は問題ありません.アレルギー疾患で抗アレルギー薬を内服している方は検査や接種の前日は内服しないで下さい.花粉症のある方は、流行時の接種はなるべく控えてください.特に注意を要する予防接種は
卵アレルギー インフルエンザ、黄熱ワクチン.
ゼラチンアレルギー 全てのワクチン (ワクチンのゼラチン含有を確かめて下さい)
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病気自体ではなく、治療により予防接種ができない場合があります.治療としてはステロイド薬、免疫抑制薬、ガンマグロブリン療法です.病気では前期の治療を要する疾患全てですが免疫不全の状態(無脾症、HIV)では予防接種ができません.主治医とよく相談しておきましょう.
膠原病 ステロイド療法 ステロイド中止後6ヶ月にて接種可能となる.寛解期の少量ステロイド維持療法の時は、免疫能の回復を検査してから.但しBCGは不可.
糸球体腎炎
ネフローゼ症候群
川崎病 大量ガンマグロブリン治療 治療後6ヶ月迄は、麻疹・風疹・ムンプス・水痘は不可.他のワクチンは可能
血小板減少性紫斑症
8:注射後の諸問題
質問 答え
注射の後はもんだほうが良いか? なるべくもまないで下さい.
当日の入浴は? 入浴できます.
当日、運動しても良いですか? 当日のマラソン、水泳等の強い運動は控えてください.通常有熱期は強い運動を避けます.通常翌々日迄です.
但し、麻疹では2週間は水泳を避けてください.
接種後の副反応について? 接種ワクチンによって違うのですが、概ね2日以内の発疹・発熱、注射部位の腫脹、接種によりウイルス・菌血症になりますので倦怠感、関節痛がありますが2日以内に改善します.全身発疹・39度以上の高熱・肘関節以上にわたる局所腫脹は必ず受診してください.その他全身症状があれば受診してください.この副反応の情報は、厚生労働省HPから閲覧できます.http://www.mhlw.go.jp/
接種効果の確認は? 接種後4週以上から血液検査で確認できます(検査は自費です).
ポリオNT抗体4倍以上.麻疹NT抗体4倍以上,IgG8以上.風疹HI抗体16倍以上.
日本脳炎HI抗体10倍以上.三種混合(各定性検査ELISAあり).
9:外国人の方の接種について
予防接種法上、母子手帳(乳幼児)、外国人登録証、予防接種台帳などいずれかで接種者を確認でき、定期接種は期間内(接種年齢)であれば可能です.
10:海外へ長期滞在する場合の予防接種
小児と・成人で異なりますし、滞在先でも異なります.旅行会社で情報を獲てからお尋ね下さい.成田空港検疫所(0476-34-2310)や関西空港検疫所(0724-55-1283)では電話での問い合わせサービスがあります.
11:BCG接種について
結核症に対する唯一の予防接種.2005年より、生後6ヶ月迄(3ヵ月以降を推薦)に直接接種することになりました.小児期の結核は診断が難しく重症化しやすいためです.これまで実施されていたツベルクリン反応は中止されました(2003).
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