今日北海道はようやく笑った。今までのツケを払うようだ。朝ベッドの上で目覚める。外は快晴。雲一つない。まさにスカイブルー。ただ秋の空のよ |
うだ。清々しい。テレビで天気予報を見る。北海道全域太陽のマークだ!テントの収納もない。気も楽だ。自販機で珍しいブレンドのコーヒを買いパン |
を食べる。どこまでも気楽だ。窓の外を見ると高校生が通学する。白糠駅へ向かう人、降りる人。夏服、冬服どちらもいる。北海道らしい。真っ白なブ |
ラウスとソックスが快晴の空に映える。もう残り少ない北海道を満喫しようとホテルを出る。ついでに残ったわずかなオイルを入れてしまう。空になっ |
た缶は捨てるところがなくとりあえずバックに詰め込む。今日の第一目標は釧路湿原だ。もう一度戻ることになる。8:30ホテルを出発。途中給油を |
行う。庶路を過ぎた頃から霧がかかり始めた。海から流れてきている。釧路方面に進むほど濃くなる気配だ。道の駅も霧の中だ。まだ開店していないよ |

釧路湿原。サバンナのように広い!
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うだ。大楽毛で左折する。一旦道の駅阿寒丹頂の |
里に寄ってから釧路湿原に戻ることにする。R3 |
8号から国道240号へ。しばらく内陸部に進む |
と霧が晴れてきた。快晴。緑がまぶしい。長雨で |
十分潤った草本が瑞々しく太陽に映える。左右に |
広がる風景も北海道だ。サイコー!と何度もメッ |
トの中で叫ぷ。夏ということを久しぶりに実感す |
る。道の駅は結構遠い。着いたときには周りは山 |
が追っていた。良き日本の夏といった感じだ。道 |
の駅はもう開いていた。スタンプもゲットできた。 |
弟がマシンを交換してみようと言い出した。なる |
ほど思っても見なかったアイディアだ。その前に |
サイレンサーのビスを増し締めする。北海道で休 |
憩するときの日課となる。マシンを乗り換え湿原 |
の近くまで行くことにする。ゼルビスに跨る。ス |
テップが前だ。どっしりかまえる。しがみつく感 |
じではない。クラッチをつなぐ。下があつい。一 |
気にブン回す。レガートに上昇する。急激なトル |
クの盛り上がりは来ない。ミラーで見ると1−Z |
は遥か後ろだ。乗れない2ストはただただ遅い。 |
運転はとにかく楽。何も考えなくていい。ギアが |
何速だろうと関係ない感じだ。スポーツ性はない |
がゆとりはある。弟が前に出てきた。自分では見 |
たことがないがかなり前傾のポジションだ。ガロ |
ガロ小気味いい2ストサウンドだ。思わずにやけ |
る。結輪として4ストでも回せば速いのだ。羊派 |
エンジンではいけない。桜田の方から湿原に向か |
う。この辺でマシンを交換する。1−Zはクラッ |
チトラブルだ。トラブルというほど深刻ではない |
が油ぎれで操作性が最悪だ。切れる前兆ではと心 |
配しながら走る。天気は快晴で山の緑も眩しい。釧路湿原展望台を探しているうちにパスしてしまった。切り返せるところを探しているとパーキングが |
あった。ここからも湿原が一望できる。ここで写真を撮ることにする。ここには車でまわっていると思われる4人のグループがいた。女の子が走り寄っ |
てきた写真を撮って欲しいとのことだ。どこから来たんですかと聞かれ宮城ですと答えると驚いていた。彼女の生まれは宮城らしい。バイクなんて他 |
県からがほとんどだと思うが。写真を撮る。自分でもよく撮れたと思う。次に自分達の写真を撮る。釧路湿原は広い。霧多布とも違う。サバンナとでも |
いう感じだ。釧路湿原は縮小しているという。湿原の中は走れないという。とても残念だ。湿原を後にする。再び釧路方面に走る。案の定霧が深くなっ |
てきた。いきなり寒くなる。霧の中を白糠へ向かう。また道の駅しらぬか恋問に入る。何度目だろうか。今日はラーメンの寶龍がやっている。塩ラーメ |
ンを頼む。出来るまでタウンページをのぞく。白糠でバイク屋を探すためだ。釧路でも探しながら来たのだが左にはなかった。電話帳には満載だ。だが |
白糠にはないのだ。あきらめて帯広で探すしかない。ここのラーメンはにんにくが効き過ぎだ。暖まったところでスタート。庶路を過ぎてもまだ霧だ。 |
朝より霧が広がっているようだ。白糠駅前でホテルの写真を撮る。そして帯広へ向かう。やっと新たなルートを刻む。R38号を海沿いに走る。霧が濃 |
いため早く内陸に入りたい。音別を過ぎれば内陸へはいるはすだ。それでも霧は晴れない。それにここのルートはぶち切れゾーンだ。車のペースが速す |
ぎる。120kmでも追いつかないし離れない。そんなペースで山間に入る。やっと青空が出てきた。気温も戻った。だが道は悪い。周りが山で何もな |
い。懐かしいといえばそんな気もする。トイレに行きたくなった。幸い線路沿いだ。一番近い駅で用を足すことにする。上厚内駅だ。案内を右折する。 |
踏切は越えたが周りは何もない。本当に駅があるのかと心配になる。とりあえず左折してみる。数件の民家が並ぶ。づぶれた雑貨屋などが並ぶ。あばら |
屋という感じだ。捨てられたガラスサッシなどが転がる。退廃釣なムードが漂う。駅も木造でとにかく小さい。真新しい上厚内駅のプレートが光る。ト |
イレも便器はなく壁にするタイプだ。本当に時が止まったような感じだ。太陽が眩しい分時の流れがないような気がする。気を抜くと今自分がいつの時 |
代にいるのか見失いそうだ。ちょうど電車が入ってきた。出発の支度をしながら誰か降りてくるかと何気なく見ていたがやはり誰も降りてこなかった。 |
ここはあまりにサイレント。自分達が受け入れられていない無言の圧力を感じる。上厚内を追われる感じでスタート。後はハルニレの木を目指す。初代 |
このー木何の木だ。陽気の中平地に戻りマイペースで向かう。豊頃町に入った。豊頃町のマークはこの一木のシルエットだ。よほど有名なのだろう。期 |
待できそうだ。これだけ有名なのだから看板がありそうなものだが一向にお目にかからない。らしいところで辛抱たまらず左折してみる。明らかに町道 |
レベルで何もない。見通しが良くなったところで周りを見渡す。それだけ有名な木だ。あれば一目で分かるはず。らしいと言えばらしいが決定的なもの |
は見当たらない。一応写真を撮っておこうか迷う。しかし断念。地図ではハルニレの木は川沿いだ。ここに川はない。一度R38号に戻り。再び突入す |
る。今度は川沿いの土手に向かう道だ。土手に看板が立っている!目を凝らすとハルニレの木とあった。土手を登っきり一気に右折する。左手に眩しい |
ばかりの草原が広がった。広大な土手下全て草地なのだ。そして遥か前方に3本の木がぽつんと立っている。バイクと人が見える。ハルニレの木発見! |
近づいてみると札幌時計台をモチーフにしたような展望台?が建っていた。土手から木を見おろす。一番奥の木がらしい形だ。小さく見えていたが歩み |
寄っていく人の大きさに驚いた。人が小さいのだ。そして草原は思った以上に奥行きがある。普通体で感じている木の大きさから類推していたスケール |
感とは全く異なるスケールなのだ。それだけ大きいと言うことか。土手の階段を下り歩き出す。草原に降りるとよけい広く感じられる。細い道を人がま |
ばらに続く。木の幹の下に人が立っているのが見える。本当に大きい!近づくにつれてその大きさがひしひしと伝わる。”この〜本何の木、気になる木 |
〜♪”だ。まさにいい形!美しいのだ。見ていて飽きることがない。木の下に潜ってみる。天然の日傘のようだ。木漏れ日がダイヤのように光る。ハル |
ニレの木に母親の強さを感じた。何事にも動ぜず頼りになる。それでいて安らぐのだ。離れがたい心地よさがあった。他の2本も圧倒的な生命力で迫る。 |
この木たちは北海道に文明が宿る前からこの地域の歴史を跳めてきたのだ。ただただ頭が下がる思いだ。土手に戻り振り返ってみる。自然がなす絶妙の配 |
置だ。ハルニレの木の伝言帳があった。めくってみる。8月頭からの書き込みだ。やはり雨が続いていたらしい。”雨なのにハルニレ”、”これから熊 |
本に帰るぞ、自走で”などなど何となく見知らぬライダーの飾りのない本心を味わった気がした。ここにはまたいつか来ようと思った。再びR38号へ。 |
帯広市内に入ってきた。前に帯広を訪れたときは南から北へ入った。今度は東から西へ横断だ。見覚えのあるホーマックが見えてきた。ラーメンを食べ |
た店も見えてきた。今日は晴れている。街のイメージもずいぶん違う。道の駅おとふけが目標だ。気温は29度を示している。暑い!道の駅でソフトク |
リームを食べることが最大の楽しみと変わる。途中またホームセンターがあったので一応寄ってみるがやはりルブはなかった。あきらめ道の駅に入る。 |
スタンプを押した。しかしここにはソフトクリームはなかった。チープにジュースで紛らす。ここでツーリングガイドで近くのバイク屋を探す。あった! |
音更にYAMAHA YOU SHOPがあるではないか。信号の住所を見ながら進んでみると見えてきた。感じのいい店だ。バイクであふれていた。 |
レースをやっているらしい。店名入りの黄色いレプリカがあった。チェーンルブをゲットし、道の駅に戻ってきた。クラッチワイヤーに注油し、遊びの |
調整を行う。さらに隣のホクレンで給油する。こ |

初代”この〜木何の木”。夏真っ盛り。
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れで心置きなく日勝峠に挑める。R38号を十勝 |
平野を左右に見ながら分岐ルートを探す。途中コ |
ンビニに寄り食料を調達し後顧の憂いをなくす。 |
遥か前方に高い山脈が横たわっていた。まさかこ |
れを越えることになるとは。日勝峠は緩い勾配と |
整備された広い道だ。交通量もそれほど多くはな |
かった。マイペースで走る。それほど登っている |
気はしなかったのだが一瞬眼下に十勝平野が広が |
る。高い!するする走っていくと左手に展望台が |
現れた。ひと休みするため入る。ソフトクリーム |
だ!昼に食べれなかった分無性に食べたい。気温は |
20度。軽く汗もかいた。バニラが目の前で作 |
られていく。ひと口目を頬張る。うまい!冷たい! |
柔らかい!やっと夏を感じることが出来た。コー |
ンもパリパリだ。こんなに安く夏を満喫できると |
は。時間も押してきている。日も朱みを増してき |
た。気を取り直して峠に挑む。さすがに交通量が |
増えた。遅いトラックがいるためだ。我慢のライ |
ディングを強いられる。看板に何合目としきりに |
出てくる。標高が1000mを越えている感じは |
しなかった。降りるときも緩い勾配だ。そして周 |
りは樹海だ。その中を延々と走る。この辺でキャ |
ンプできるところと言えば一つしかない。沙流川 |
キャンプ場だ。峠を下りきったところで前方の雲 |
がすごいことに気づく。遥か上空にそびえる入道 |
雲。黒い。その下はグレーの煙幕のようだ。エヴ |
ィル!明らかに降っているよらに見える。途端に |
風が吹きだした。強くて冷たい風だ。かなりやば |
い。ぽつりぽつりと降ってきた。見上げると雨雲 |
の端の下を走っている。つまり同じ方向に進んでいるのだ。どっちが速いか。捕まりたくはない。少し休んで行かせるか。迷いながら進む。キャンプ場 |
は近いはずなのだ。沙流川はもう過ぎた。キャンプ場に着くのが先か雨に降られるのが先か。路面はウェットに変わった!こっちが速かったようだ。だ |
がキャンプ場も近いはずだ。キャンプ場は見つからなかったが、道の駅樹海ロード日高を見つけることができた。とりあえず入ってスタンプを押す。ス |
タンプ以外は休館日らしい。中に付近の地図があった。沙流川キャンプ場はすぐ近くだった。1km位か。キャンプ場に着くと管理棟がある。有料らし |
い。駐輪していると大粒の雨が降ってきた。夕立だ。慌てて管理人の所へ行く。管理人の薦めですでに張ってある貸しテントにはいることにした。51 |
5円なのだ。どうせ有料ならあまり変わらない。雨の中設営しない分かなりお得だ。中はなぜか水が入ってくる。それに広いので寒いのだ。1−Zのサ |
イレンサーを大々的に締め直す。パンチングストレートがかっこいい。夜はルート選びをする。もう苫小牧は目と鼻の先だ。小樽へ出るか函館へ抜ける |
か、それとも苫小牧か。内心ではもっともっと走りたいのだ。旅の終わりを感じたくない。目は自然とさらに先を目指してしまう。そんな複雑な心境だ。 |
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