| 今日までのツーリングは順調だった。初めてのロングキャンプツーリングにしては平穏だった。しかし、今日は波乱含みだった。ツーリング前に予想 |
| した通りのパターン。キャンプ場が見つからないのだ。日はもうとっぷりと暮れ完全な闇だ。キャンプ場を求めてだらだらと走ってしまう。案内板も夜 |
| で、かつ後続車がいるのでゆっくり見るわけにもいかない。何度目のアタックだろう。サロマ湖畔のキムアネップキャンプ場へたどり着く。車の中から |
| 親切なおじさんが無料のキャシプ場であることを教えてくれた。この日は空母のパイロットが夜、母艦を探す気分を味わう。今日は日が暮れるとおぼろ |
| 月夜になった。そして佐呂間に入った。ほんとにサロマ湖まで来てしまった。サロマ湖は闇の中に黒くただずんでいる。その脇を案内板に目を凝らしな |
| がら、ただ黙々と走る。紋別で寄ったキャンプ場は管理人がすでにいなかったので泊まれなかった後だけに救われた思いだった。今日は一気に走ろうと |
| 決めていた。最大の目標宗谷をパスすればサロマ湖までは特に何もないからだ。オホーツク海に面した北海道を一気に滑る落ちる子定にした。この欲張 |
| りが夜までキャンプできない原因となった。今日の朝は寒かった。凍えそうになりながら目が覚める。弟はコンロで暖をとっていた。8:30には隣の |
| 彼は準備が出来たようだ。出発のあいさつをしてくれた。宗谷で会えますねと言われたが残念。今日は午前中、一つの仕事がある。宗谷では会えないだ |
| ろうと思う。遅ればせながら撤収する。空を見上げるとたまにぽつりぽつりとくる天気。今日の仕事は稚内からお土産を送ること。まず駅へ出るためタ |
| イトな坂を下る。そして駅前の店から送る。ある意味では今日の、いや今回のツーリングで唯一の義務を果たした。心も軽くなる。次はいよいよ宗谷岬 |
| を目指す。稚内市内を走り宗谷へのルートを探す。 |

ライダーの聖地、宗谷岬に到着!最大の目標クリア!感無量。
|
| 稚内市は最北の街にしては大きな街だった。宗谷 |
| 岬27kmの看板を発見する。胸の内に少し寂寥 |
| 感がよぎる。もうすぐ宗谷岬が来てしまう。これ |
| で渡道前から目指してきた目標が消えてしまうの |
| だ。それがわずか27kmとは。複雑な心境で宗 |
| 谷へ向かう。なんと思ってもアクセルを緩めるわ |
| けにはいかない。今日は日曜日だ。宗谷への道は |
| さぞ込んでいるだろうと予想していたが思ったよ |
| り交通量は少ない。ライダーともほとんど会わな |
| い。途中車に突っ込みそうになる。最北端の給油 |
| 所で給油すると記念品がもらえるらしいのだ。脇 |
| 見をしていたため車のストップランプに気づくの |
| が遅れた。フル制動だ。フロントフォークが沈み |
| 込む。右に入魂の切り返しをする。何とか衝突は |
| 免れた。5km…、2km…、宗谷岬が近づく。 |
| Pマーク!宗谷岬だ。第一印象は小さい。岬は国 |
| 道の奥かと思っていたのだがすぐ脇だった。シン |
| ボルの三角もある。間違いない。宗谷岬だ。到着! |
| と言うより着いちゃったと言う感じだ。さすがに |
| ライダーだけでなく自転車、観光バスも多い。最 |
| 北端のシンボル前は写真を撮る列が途切れない。 |
| さっさと撮らなければいつまでも撮れない。さっ |
| さと撮ろ。次は記念品を買う。みやげ店はたくさ |
| んあったがスタンプのある店を選ぶ。ライダーは |
| 旗が好きだ。もちろん買う。次に最北端到達証明 |
| 書キーホルダーも買う。本日の日付が入ります、 |
| と書かれてあった。どういうことか分からない。 |
| 店員に出すと、いきなりポンチを持ち出してガツ |
| ンガツン打ち出したのには驚いた。最北端でもラ |
| ーメンを食べる。もずくラーメンを食べる。もずく?とは海草だった。えびと海草入り。ぬるぬるしていたがアリだ。うまい。店内からサハリン方向を |
| 望む。残念。曇って何も見えない。テレビではタモリが動いていた。どこまで来ても日本だ。店を出て高台に昇ってみる。何かの記念碑だ。潜水艦ワフ |
| 一撃沈の慰霊碑だ。ワフーなど誰も知るまい。意外な知識が旅にメリハリをつけてくれる。さらに旧日本海軍の楼閣。こんな最果ての地でも戦闘が行わ |
| れたのだ。何も見えない海を眺める。次にこの地に立つのはいつの日だろう。そのころ自分はどんな自分だろう。楽しみでもある。約束の地はタイム力 |
| プセル。いつの日か必ず戻ってくることを誓う。宗谷を後にする。宗谷を出ると周りには原野が広がる。俗地化した宗谷岬よりむしろ最果てを感じる。 |
| サロベツとも微妙に違う。だが火星人のお化けば相変わらず群生している。オホーツク沿いにひたすら南下する。海沿いに走る。風よりも寒さが気にな |
| る。気温は2時頃14度とでていた。体がこわばる。渡道して今までで一番寒く感じる。レインを着ているのにだ。鼻水が出る。辛抱のライディングを |
| 続ける。次に来る大きな街は浜頓別町だ。給油をどこで行うかは難しい。浜頓別は余裕でパスできるはずだ。次の枝幸町で入れようと決める。恒例の食 |
| 後のトイレタイムだ。トイレがありそうな場所を探しながら流す。大きなパーキングが見えた。トイレもありそうだ。右折で入る。車の中でアイスクリ |
| ームを食べている家族を目撃。信じられない。パーキングを出るとパトカーが茂みに隠れていた。そう、このR238号沿いには珍しいものが設置され |
| ていた。有料トイレ。馬鹿にしている。クッチャロ湖は見る気はなかったのだがついつい看板が出てくると指を突き出された猫のように向かってしまう。 |
| クッチャ口湖湖畔キャンプ場に着く。トイレを使わせてもらう。保険だ。トイレの中で白身の湖が流れていた。ここは白鳥の飛来地で有名らしい。だが |
| 冬口でも春先でもない今は普通の湖だ。足早に去る。浜頓別を過ぎると再び海沿いを走る格好になった。風はかなりの向かい風だ。なんといきなりエン |
| ジンが息継ぎし始めた。ガス欠!あわててリザーブにしようとしたが完全に停止。キックしまくるがなかなかかからない。コックの負圧を抜いてガソリ |
| ンをやっと始動する。ここは神威坤だ。枝幸町までまだ20kmはある。絶対に枝幸町で入れなければならない。枝幸町を出た辺りに地図ではホ |
| クレンがある。いってみると確かにホクレンはあったが改装工事中で休みだった!これはと思い市内にはいる。なかなか市内には給油所がない。やっと |
| 見つけた給油所も日曜でしまっていた。かなり青くなる。地図に載っていないスタンドを探す。あった!シェルだ。当番店の看板が出ていた。日曜は交 |
| 代でやるのだろう。やっと給油してもらう。だが単価115円!高い!R238号に戻るのに苦労する。ついでにトイレも探す。近くで確実なのは千畳 |
| 岩だ。少し戻るが入ってみる。案の定トイレがあった。と書うよりキャンプ場併設だ。駐車場が無意味に大きい。風の中こんな寂しいところでキャンプ |
| している人もいた。ついでに千畳岩も見てみる。千畳は過大広告か?密漁監視車と書いた車が駐車場に入ってきたのには驚いた。結局何だかんだと寄り |
| 道してしまう。再び走り出す。大きな目標もないので道の駅に寄りスタンプを集めることにする。道の駅マリーンアイランド岡島だ。ここの道の駅は建 |
| 物が船の形をしていてとても面白い。ここで調子の悪いツーリングコムの電池を交換してみる。さらに南下する。時間的にも、と言うより4時頃暖かい |
| ものを食ぺるのが暗黙の了解となっていたので食堂を探しながら走る。音標で食堂に入る。注文を自分で書いてカウンターに持っていく変なタイプの店 |
| だった。塩ラーメンを頼む。ここの塩ラーメンは熱い!まずスープの量が半端じゃない。熱容量が大きいのか底のほうは全く冷めない。おかげで舌を火 |
| 傷した。次の目標は道の駅興部。地図には列車を利用した無料宿泊所があるとなっていた。ここは、ちょっと国道からそれたところにあった。道の駅で |
| スタンプを押す。どこの道の駅に行ってもきれいなお姉さん2人組が必ずと言っていいほどスタンプを集めている。男性はオヤジしか見かけない。隣の |
| 列車を見てみる。そろそろ日も落ちてきたし泊まるところを考えないと行けない。2両編成で一つは語らいの場用、で、もう一つは無料宿泊施設。だが |
| もうほとんど満席だった。緯度が高いためか日が沈むのが早いような気がする。ここでは泊まれないようだ。さらに進むことにする。次は紋別市だ。紋 |
| 別と言えば名寄であった女の子達は無事紋別に着けただろうか。などと考えていると紋別市に入った。道の駅オホーツク紋別による。日曜の夕方。もう |
| 道の駅も人気がない。とっぷりと暗くなり始めている。スタンプもトイレに置いてあるやつを使う。トイレの中のほうが温かい。外に出るのが嫌になる。 |
| 紋別ではキャンプ場が少ない。道の駅にテントを張ってしまおうかとも考えるが断念する。サロマ湖畔はキャンプ場が豊富だ。よせばいいのにそれを目 |
| 指してさらに進み始める。もう夕暮れとは言いがたい。次にもっとも近いのは五鹿山公園キャンプ場だ。道の駅中湧別に寄ってからキャンプ場を目指す |
| かどうしようか迷うが時間に迫られまずキャンプ場を目指すことにした。農道に迷いながらもやっと看板を発見する。外灯も無い寂しい道を一気に飛ば |
| す。着いてみると明かりが賑やかだ。バンガローもある。オートキャンプ場だ。気にそぐわないがそんなことを言ってる暇はない。案内図でテントサ |
| イトを見つける。さすがにテントが多い。だが有料か無料か分からない。炊事場で米をといでいる人に尋ねてみた。無料だが管理人に届けが必要のよう |
| だ。管理棟らしきところへ歩いていく。ク□一ズド。もう自宅に帰ったとの貼り紙。ご用の方ば自宅まで来いとのことだ。さすがにあきらめる。失意の |
| 中R238号へ合流する。サロマ湖畔にいくらキャンプ場が多くても管理人がいなくなっていては意味無いのだ。確率は下がったことになる。サロマ湖 |
| 入り口近くの無料宿泊所が目に入ったが木造のボロイ公民館と言ったところ。玄閣に裸電球1個あるようなタイプ。バイクも多数駐輪してあった。もう |
| 満席だろう。となれば進むしかない。右には黒い山のシルエットが追る。街を出ればもう真っ暗闇だ。心細い。空にはおぼろ月。ワインディングが暗闇 |
| の中続く。北に向かっているのか南か東か。月から割り出そうと無駄な努力を頭の中でしてみる。思考力は半減していた。月も右に前にとじっとしてい |
| ない。こう暗くては看板も見過すだろう。急に明るい場所に出くわした。大きなホテルだ。異常に輝いている。パスする瞬間キャンプの文字が目に入っ |
| た。もうどこでもいい。Uターンで戻ってみる。キャンプ場はなかった。ただこの先キャンプ場7kmと出ていた。キムアネップ岬キャンプ場だ。これ |
| に大いに元気づけられる。目安が出来た。オドメータを睨みながら疾走する。そろそろだ。なかなか看板は来ない。あきらめた頃発見!さらに2kmと |
| 出てある。サロマ湖は黒い。周りも畑なのか外灯もない。遠くに小さな明かりがちらちら見える。やっとキムアネップに到着。だが暗くてどんなキャン |
| プ場か分からない。有料だろうか。とりあえず歩いて中を覗いてみようとバイクを隆りたら、車の中から話しかけてくるおじさんがいた。初めは要領を |
| 得なかったが。バイクは押して中に入れるらしい。ついでに有料ですかと尋ねると無料と教えてくれた。おぼろ月の中テントを一気に設営する。これほ |
| ど手早くテントを建てたことはなかった。サロマ湖から風が寄せてくる。テントに滑り込むと安堵の溜息が漏れる。無事到着。これまではらはらしてい |
| たものが途端に良き思い出となる。今飲んでいるコーヒーは格別にうまい。笑声がやっと戻った。今日を振り返るとライダーとほとんどすれ違わなかっ |
| た。両手の指で足りるくらいだろうか。北海道を縦断しているときはあんなに見かけたのに。道東から宗谷を目指すのは珍しいルートなのだろうか。め |
| っきり減ったライダーにさらに今回のツーリングも峠を越したのだろうかと言う感じを受ける。寂しい。あと道北のオホーツク側は乳牛が結補多い気が |
| した。どうなんだろうか。とにかく今日は疲れた。走りに走った。こんな日があってもいいだろう。明日はゆっくりサロマ湖を見てみたい。 |
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