| 渡道して早幾日。まだ一度も太陽を見ていない。雲越しにも確認したことがない。北海道はまだつれない。今日も曇りだった。霧雨だった。とにかく |
| 寒いのだ。気温は明らかに20度いってない。朝チェーンにルブを注すのが半ば日課となった。ZZR-1100の人が何かトラブっていた。パンクら |
| しかった。カムイコタンを10:45に出発する。今日は見る予定がいっぱいだ。旭川まで行ける子定だ。まず田中義剛の牧場を目指す。帯広は北海道 |
| らしい。周りに広大な畑や牧場が広がる。曇りのため10分の1もそのらしさを味わえない。進行方向の雲が明るいとか黒くなったとかツーリングコム |
| で一喜一憂しながら進む。結局霧雨になる。寒さのせいでトイレがどうしても近くなる。この先には道の駅忠類がある。なぜか忠類村はナウマン象をし |
| きりにアピールしていた。ナウマン象でも発掘されたのだろうか。道の駅のすぐとなりもナウマン象記念館だった,ライダーがたくさん休んでいた。中 |
| に入ると道の駅スタンプラリーのポスターが目に付いた。これはいい。記念になると思い、やりたいと思ったが台帳がもう無いようだった。しかたがな |
| いのでなぜか丸目のサングラスを買った。休んでいたライダーの中に力タナでタンデムツーリングしているらしいカップルを見かけた。お揃いでイエロ |
| ーコーンのレインを着ていた。北海道で出会う女性ライダーはタンデムを含めて皆かなりの美人だ。しかも、ツーリングに文句も言わないよき理解者だ |
| と思う。うらやましい限りだ。あと気づいたことは、女性ライダーはピースサインではなく一生懸命手を振ってくれるのだ。何ともほほえましく感じる。 |
| 忠類駅を出て義剛の牧場を探すが結局見つからなかった。北海道では牧場の中を走る農道は碁盤目状でひたすらまっすぐ。交差点の看板も西4号線とい |
| うようなまるで座標なのだ。一度しくじると、も |

幸福駅で幸せを考える(笑)。次は愛国。 |
| うやり直したくも無くなる。それであきらめ幸福 |
| 駅へ向かうことにする。ついでに道の駅なかさつ |
| ないに寄る,ここにも台帳はなかった,まっすぐ |
| R236号を進めばすぐ脇に幸福駅があるはずな |
| のだが見つからない。いや看板は出ていた。その |
| 通り進んで右折しようとするとダートだ。ダート。 |
| 困った。だがここに止めて歩いていくのも心配だ。 |
| 行かなければ絶対後悔すると思い進むことにした。 |
| 進めども進めども見あたらない。左右も見通しは |
| いい。あれば絶対見つかるはずだ。客も多いだろ |
| うから。だが無いのだ。農道に出てしまった。幸 |
| 福駅があるであろうエリアを囲むように何度か走 |
| ったが見つからない。そうこうしているうち、あ |
| の力タナ乗りのカップルをR236号で見かけた。 |
| 結局ダートなど走らなくてもオンロードで行ける |
| ところに幸福駅はあった。もっとも入り口はダー |
| トだったが。小さな神社にでも入っていくような |
| 入り口だった。ダートをゆっくり走っていくとい |
| きなり見覚えのある幸福駅が目に入ってきた。小 |
| さい!小さいのだ!パス停?というにはでかいが |
| 駅と言うには明らかに小さい。貼り紙が目に付く、 |
| 幸福駅の売店では名口語のおやじが客に会わせて |
| まくしたてていた。二言三言会話を交わして記念 |
| 品を買う。名物は切符のキーホルダーらしい。な |
| にしろ今日の日付が入っているのが気に入った。 |
| さらに幸福駅オリジナルのスタンプ台帳が100 |
| 円で売っていた。道の駅の台帳はなっかたので役 |
| に立つだろうと1冊づつ貫う。中を見てみなと言 |
| われ幸福駅内を見る。すごい数の貼り紙だ。元の |
| 壁が見えないほどだ。幾重にも重なる願い事。人間の生の感情が渦巻いているようだ。最近のではプリクラが多い。意外と名刺も多い。”〜参上!”、 |
| ”〜ちゃん愛してる!”、”〜と結婚できました。”等などおきまりの文句も多い。幸福駅の中仁いると名前とは逆に何とも言えぬ寂 |
| しさを感じる。本当に幸せなら幸福駅なんて来ないのではないか。希望であり、夢であり、挫折であり、困難に打ち勝とうとする人間の願いなのだ。幾 |
| 重にも重なった紙の厚さの分だけ幾年月の人々の願いが重なる。人々の願いは今も昔も変わりはしないのだ。じっと幸福駅を見つめているとまるで時が |
| 止まったかのようだ。そうタイムスリップでもしたというか。自分も何かメッセージを残したかったが出来なかった。未来の自分へのメッセージを残し |
| たかったのだ。出来なかった代わりに日記を記す。少し寂しい気持ちで幸福駅をあとにする。またいつか必ず来ようと誓う。帯広市に入った。逆に市内 |
| では迷った。交差点や車線変更でどんどん裏へ入ってしまったのだ。時間も丁度よかったのでとりあえずラーメンの旗につられ食堂に入る。ついでに地 |
| 図で確かめる。店内にトイレがあった。ラッキー。店を出たとき一騒動。弟が危うくバッグを忘れそうになったのだ。パイクで準備していたらおばちゃ |
| んがあわてて届けてくれた。助かった。店の前はホーマックだった。無いとは思いつつチェーンルブとサイレンサー用の小物を買おうと思ったので入っ |
| てみた。ルブはなかった。富良野に入る途中に峠がある。給油することにする。ホクレンで2台で給油したとき先に終わったのですぐ信号先のローソン |
| に入って待つことにしたとき、オイルランプが点灯した。補充しようとパッキングをほどいていると、弟はそのまま道路をまっすぐ行ってしまった。追 |

白樺並木を走る。アウトライダー風。 |
オイルはほとんど一缶入った。平地なので初めて点灯したときはもうほとんど |
| ないのだろう。だがオイルの消費量が気になる。次どこで点灯するかでもう一 |
| 缶買わなければならないかが決まる。白樺並木が近くにあるとマップルに載っ |
| ていたので行ってみることにする。しかし白樺並木に出るのに苦労した。西1 |
| 7という交差点を地図と実際の走行スケールのフィーリングの違いから間違え |
| たためだ。やっと白樺並木に出た。道道133号に分岐する形でいきなり現れ |
| たので気がつかなかった。天気が悪いため白樺の白が映えなかった。青空に映 |
| える白樺が見たかったのだが。ダートのため奥には行けない。アウトライダー |
| 風にちょっと撮ってみた。ちょっとお遊びが過ぎた。時間は押している。国道 |
| 38号に合流するため道道133号と75号を力ッ飛びクルージングする。裏 |
| 街道で交通量はほとんどない。貸し切り状態だがその分周りも寂しい。分岐点 |
| を地名と道道名を見極めぐんぐん走る。R38号に合流。先の山を見ると雲の |
| 中だ。雨を覚悟する。富良野まで100kmと看板が言う。口では不平を言い |
| ながらわくわくする。100kmもまだ今日走れるのだ。走ることに喜びを見 |
| いだす。しかし、またしてもトイレに困る。そうこう走るとなにやらパーキン |
| グだ。晴れていれば十勝平野と十勝富士が一望できるらしいが悪天候の今はト |
| イレを使わせてもらうぐらいの場所だ。再びスタート。この先には峠が待つ。 |
| 狩勝峠だ。峠にさしかかるとものすごい濃霧ヘ変わった。濃霧と言うより雨だ。 |
| 雲の中にいるらしい。前を走るぜルビスから黄色いホクレンの旗が一つ落ちる |
| のを目撃!だがどうしようもない。リアが水をすくう。ウェットは走り慣れて |
| いない。いつ限界が来るかと気にしながらコーナーを攻める。車の流れは容赦 |
| ない。弟が悲鳴を挙げる。峠を降りると道の駅南ふらのだった。ここの道の駅 |
| は立派だ。近未来的デザイン。当然何か暖かいものでも食べようと見回すと外 |
| の露天はちょうど店終いをしているところだった。中に入りスタンプを幸福駅 |
| の台帳に押す。中にはレストランもあった。さっき食ぺたばかりだが寒さのせ |
| いでまた暖かいラーメンを頼んでしまう。渡道してからずっとラーメンを食べ |
| 続けている。無難なため頼んでいるのだが地域、店によって麺もスープも全然 |
| 違うのだ。食べ比べが面白い。全体的に北国のためかこってりスープだ。うま |
| い。このツーリングでは麺をつないで北海道をめぐるのだと言う怪しい決まり |
| が芽生える。ただ道の駅だけあって高い。車の人達だろうかソフトクリームを |
| 注文している。信じられない光景だ。暖かいものを食べると一気に落ちつく。 |
| 今日は富良野止まりだ。富良野では見るぺきものがたくさんある。今日富良野 |
| に入れば明日はゆっくり観光できる。目標を無料の中富良野森林公園キャンプ |
| 場にする。旭川なんて言っていた朝が嘘のようだ。ホットのコーヒーを飲んで |
| 5:30出発。もう一つ峠を越える。もうかなり光度は落ちてきている。考え |
| てみればこんな遅〈まで走っているのは初めてだ。ライトをつける。富良野が |
| 近づく。結構山が間近だ。黒く浮かび上がる山。何となく子どもの頃山が黒く |
| 浮かび上がる夕方遅くまで遊んでいた感じが一瞬よぎる。懐かしい。車が多く |
| なる。帰宅のラッシュだろう。富良野市内を抜け中富良野方面に向かう。ペー |
| スはあがる。キャンプ場は国道より一つ奥だ。キャンプ場の案内を見つけ右折 |
| する。丘の上にあるのか一気に緩いワインディングを駆け上がる。左手に暗闇の中花畑が浮かび上がった。何気なく走り去ろうとしたら強烈な芳香がヘ |
| ルメットの中までよぎった。これがラベンダーの香りか,花など興味もなかったがその香りに魅了された。富良野と言えばラベンダー、明日はたっぷり |
| 見れるだろう。キャンプ場に到着。なぜキャンプ場と分かったか。別に案内が目に入ったわけではない。道路の両脇にズラーっとバイクが並ぶ。隙間も |
| ない。これは少し遅すぎたようだ。テントを張る空きもない。仕方がないので駐輪場にテントを張った。バイクがすぐ隣にあるのは安心だ。7:30だ。 |
| 天気予報ではそろそろ回復するという。夜自販機に行く途中空を見ると雲はまばらで月が確認できた。月輪が浮かぶ。青い涼々とした夜空ものぞく。明 |
| 日は何とか晴れてくれそうだ。そう幸福駅に願った。 |
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