北海道上陸編 8/11

 どの位眠れただろう。下も上も薄い毛布1枚だけ。熟睡などできるはずもない。子ども達は朝早い。はしゃぎ声に起こされた。時計を見ると7:30
だ。テレビを見ているライダーであろう客がつぶやく。今日は雨だと。面白くなかった。ツーリング中1度も雨に降られずに済むとは思っていなかった
が初日から雨とは。ラウンジに出て外の様子を見てみる。1面灰色の世界。空は真っ暗というわけではないが霧雨は降っているようだった。2人でデッ
キに出てみる。霧雨だ。船内に戻り、ロビーのテレビの天気予報を見てみた。北海道全域前線の影響で曇りと雨のマークだ。実際外の天気を見た結果回


苫小牧が見えてきた!小雨の降る中、スタートとなる。
復しそうもなかった。雨でも走るしかないと覚悟
する。接岸が近づくにつれ客達の行動が慌ただし
くなる。特にライダーはレインを着込んだり忙し
そうだ。自分達はレインはまだ着なかった。それ
ほど強い雨ではなさそうだったし、心の中には雨
が上がるまでフェリーターミナルで時間をつぶす
か、苫小牧で一泊する選択肢もあったのだ。ドラ
イバーとライダーに搭乗のアナウンスが流れる。
皆エレベーターと階段に群がる。格納デッキに行
ってみる。バイクはあったが自分のバイクがない。
デッキを間違えたらしい。階段を2,3回移動し
やっと自分のバイクを見つけた。バイクはロープ
で堅く緊縛されていた。係員の人が外してくれる
のかなと思っていたら、ライダーは各々自分で外
していた。自分も外しにかかる。バックルが引い
ても起きない。何度やっても起きない。少しある
ロープの余裕でハンドルから外そうとしたがセパ
ハンのため外側に行くほど余裕はなくなる。悪戦
苦闘していたら隣のオフ車のライダーが無言でバ
ックルを押してロープを緩めてくれた。引くので
はなく押すのだ。隣のライダーに何度も頭を下げ
た。思わず苦笑いしてしまう。暖気も終わりゲー
トへ走り出した。外を見ると路面は黒く艶光りし
ていた。霧雨レベルではない!完全なウェットだ!
ターミナルの方向へ誘導されながら走る間にもリ
アタイヤは水しぶきをあげる。ここまで守ってき
たものが簡単に覆された。バイクを止めすぐにレ
インを着込む。レインだけでなく積載物にも防
水カバーを掛ける。弟は来る気配もない。違う場
所で待っているに違いないと押しながらターミナ
ルへ向かった。その途中R1−Zを見かけた。弟はもうレインを着て準備は済んでいた。雨の中を少し走ったせいでもうためらいはなくなっていた。雨
でも進もうと決めた。その前に何か食べるためターミナルへ入った。2階に売店があったのでパンとコーヒーを買って食べた。時間帯のせいもあるだろ
うががらんとして何か寂しい。テレビでは甲子園をやっていた。待合いでは一見怪しい男女が目に入った。親子に見えるが、ベッタリしすぎている。明
らかに変だ。北海道でも退廃的な光景はあるのだ。北海道上陸は雨となってしまった。それでも記念は記念。写真を撮る。ツーリングコムを装着して出
発した。ちょうど12時頃だ。大まかな目的は海沿いの国道に出ること。苫小牧港前の道道259号だろうか。でかい道だ。片側4車線ある。それにダ
ンプとトラックが多い。雨は小雨とは言いがたい。バイザーはすぐに水滴で視界が悪くなる。ウェットを走るシャーという水切り音が何ともしゃくにさ
わる。対向車線をゆくバイクにピースサインを送る。港へ行くのだろうか、ホクレンの旗が目にはいる。分岐点を間違え農道と思われる道にそれたがま
っすぐ進めば国道235号に合流できると知りそのまま進む。周りは一気に畑になった。牧場の看板も出ている。天気さえよければこの程度でさえ北海
道を感じたかもしれないと非常に悔しくなる。視界が悪いのだ。おまけに寒い。低温と雨と走行風が体温を奪っていく。ただそのどこまでも一直線の
道に北海道を感じた。R235号へ合流した。パトカーに捕まらないように70kmを巡航速度とした。だが車の流れは速い。85kmはあろうか。と
にかくパスされまくる。北海道というのに信号が多い。すぐ捕まる。しかもなぜか渋滞している。結構走ったが小さな街並みはとぎれない。聞いていた
のとはずいぶん感じが違うと思った。それにツーリングコムが絶不調だ。ハウリングを起こしている。初めはトラックの無線のせいかと思った。事実混
信していたからだ。だが一向によくならない。コミュニケーションに苦労しながら走る。そうこうしているうちに車の流れが完全に止まった。進まない。
大型バイク達が横をすり抜けていく。我慢して我慢して問題の交差点を抜けた。工事しているようだった。まさか北海道で渋滞に捕まるとは思ってもい
なかった。だが今度は流れがよくなった。街をちょっとだけ抜けると左右に牧場が広がった。乳牛ではなく馬だ。この先はサラブレット街道と呼ばれる
馬の放牧地のメッカだ。すでに馬が目に入り始めたのだ。だがいかんせん天気が悪い。何を見ても北海道という感じがしないのだ。しばらく進むと道路
がアップダウンし始めた。するといきなり右手に海が広がった。海はグレーだ。空もグレー。いや正確に言うなら黄灰色だろう。波はかなり荒い。打ち
寄せる音がドドー、ドドーと聞こえる。雨といい寒さといい音といいとにかくエヴィルな感じだ。結構起伏のある道だ。海沿いに現れる漁村は天気もあ
ってか侘しく見える。牧場も多くなってきた。馬もよく目にするようになってきた。だが雨と天気のため降りて写真を撮ろうとはしない。ずるずる進
んでしまう。天気が良ければアウトライダー風の写真がとりたい場所だ。この頃になると時間的にも寒さ的にも昼飯が食べたくなった。ラーメンの赤い
旗を探すが探すと結構無いのだ。見つけてもいきなりで入れないことも何回かあった。それにトイレにも行きたくなってきた。そろそろ休憩が必要とな
ってきたようだ。休める所が来たらどこでも入ろうとしていたらトイレのマークが目に入ってきた。左折のマークだ。ためらわず左折する。すぐ右折で
パーキングがあった。駐輪すると目の前に予想外の景色が広がった。馬が眼下に広がる草原で草を食んでいたのだ。広々とした緑が続く。トイレを目指
してきただけにギャップが大きかった。地図で見ると、サラブレット銀座らしい。写真を撮ろうとしていると自転車ツーリストに写真をお願いされた。
あの辺を入れて撮って下さいと頼まれた。ライダー以上に人の助け合いで旅して来ているのだろう。旅慣れた感じがした。ブラックバードも駐輪してい
た。始動音を聞いてみたが結構普通だった。ラーメンが食べたくなる。パスしたドライブインへ戻るか、すぐ先の新冠市街で探すか迷うがどうせなら進
もうと新冠へはいる。ラーメンの旗を発見しすぐ


サラブレット銀座。2匹の馬が優雅に草をはむ。
入る。ちょうどライダー達が出てきたところだっ
った。寶龍というラーメン屋だ。黄色い看板。みそ
ラーメンを頼む。北海道!という味ではなかった
がその暖かさに力がみなぎる。地図を見ながら後
図を策す。店内にトイレがあったのは助かった。
店を出た。なんと隣はコンビニだった。聞いたこ
ともないチェーン店だ。初めはwineと読むの
かと思っていたが、後で完全に分かるのだがse
icomart(セイコマート)という北海道全
土を網羅するチェーン店なのだ。店内は陳列がち
ょっと異なるが普通のコンビニだった。ミネラル
ウォーターとパンとインスタントを買い込む。バ
イクに戻りバックに詰め込む。様子を見ていると
目の前はホクレンの給油所だ。ハロー!ライダー
の看板が目に付く。次々とライダーが入ってくる。
皆ホクレンの旗をもう挿している。噂では早く手
に入れないと無くなってしまうという。ここで給
油したいが、まだ早い。明日以降の目的とする。
さらに隣はレコード舘だ。新冠はレコードの街ら
しい。街のマークもレコードだった。次の目標は
ローソク岩だ。とりあえず浦河を過ぎればすぐら
しい。出発する。相変わらず雨は降っている。静
内町に入る。静内がサラブレットの産地らしい。
牧場が広がる。まだ少ししか走っていないのにト
イレに行きたくなる。昼食後はどうしても近くな
る。トイレを探しながら走っていると道の駅の看
板が目に入った。みついし。体はもう冷え切って
いる。ホットのコーヒーがあることを祈りながら
自販機に近づく。あった!やはり北海道。夏でも
あるのだ。もっともライダー用と思うが。ホットのコーヒーを大事に飲む。道の駅の隣にはオートキャンプ場があった。今日のキャンプをどこでしよう
と一瞬迷う。忘れていた重要な命題だ。残った缶をつぶして不整地用のサイドスタンド受けをつくった。再びローソク岩を目指してスタートする。浦河
町市街に入った。この頃には路面はドライに変わった。浦河町はとても調和のとれた街だ。設計が一つのコンセプトにきちんと乗っている。材木町のよ
うな感じだ。もうそろそろローソク岩の案内が出てきてもいい頃だ。しかし出てこない。そのまま走ると奇岩群が見えてきた。写真を撮ろうと左の空き
地に駐輪する。みやげ店のような感じだ。親子岩の売店らしい。とするとやはりこれがローソク岩らしい。カモメが多い。防波堤にも外灯にもいっぱい
だ。とくにローソク岩はカモメの休憩地らしい。埋め尽くされている。海の向こうは少し明るい。売店となりのトイレに入り再びスタートする。今日中
の襟裳岬はあり得ない。時間も時間だ。キャンプ場を見つけなければならない。様似町を走りながらキャンプ場の案内を探す。様似ダム公園キャンプ場
を探す。2つあるがひとつは現在使えないらしい。様似町を2,3回往復しウロウロする。観音山スポーツ公園の看板は目に付く。とりあえず様似ダム


いきなり野宿。先行きかなり不安…。
観音山公園にて。
へ向かう道に入った。かなり走る。山間へ入って
いくのが分かる。山には霧が立ちこめている。雲
も低い。雨がぽつりぽつり降り出した。粒が大き
い。結構降りそうな気配。山から離れるか、早く
キャンプ場に着いてしまおうか迷うが結局キャ
ンプ場を目指す。急いで走るが、なんとダート出
現!もう進めない。Uターンする。近くにはテン
トを張れそうな空き地や川沿いの公園などはなか
った。もう観音山スポーツ公園しかない。再び様
似町に入り、案内の出ている小さな坂を上る。広
いグランドが目に入った。カモメがグランドを埋
め尽くしている。駐車場でも使おうと公園に行っ
てみると、なんとゲートが閉まっている。だが人
は入れる。トイレも使え一安心する。あきらめ
てすぐ側の観音山展望台入り口付近の踊り場にテ
ントを張ることにした。1台ワゴンが止まってい
た。テントを張ろうと用具を出してみる。雨の中
説明書を見ながら組み立てる。ペグは打てない。
ハンマーが軽すぎ地面が固いのだ。ポールをうま
く組み立てられない。やはり一度組み立ててから
来るべきだった。ポールができてしまえば後はす
ぐできた。なるほどよく考えられたテントだと感
心する。雨が降っているので荷物をすべてテント
の中に入れる。2人なんてとても入れそうにない。
バイクはドブから引き上げたようだ。サイレンサ
ーのビスのゆるみに悩まされる。薮蚊に襲われな
がらチェーンにルブをさして施錠、カバーを掛け
る。やっとテントに潜り込んだ。中をてんやわん
やで整理する。整理と言うより端に寄せる。ロウ
ソクのランタンを灯してみる。暗い。テントの上
にストレッチコードを通してランタンを掛けたがやはり暗い。まあ一息つこうとコンロでお湯を沸かしてみる。ホワイトガソリンタイプだ。予熱が必要
とのことだ。かなり長くかかる。やっと火がついた。火力が強い。一気にテント内があつくなる。ロウソクのランタンは暗いが暖房になった。これは予
想外の使い道だ。コーヒーを入れすする。暖かい!今日1日の疲れが一気にとれていく。ツーリングしているなぁーと思わずにやける。ラジオをチュー
ニングする。天気予報が聞きたい。日記を付ける。ロウソクでは暗いのでマグライトを併用する。途中ラジオから宮崎映画の主題歌が流れてきた。全作
品一気に流すらしい。こんな寂れた野宿に一筋の光明か!とよりよくとらえようとチューニングするが、二度と捕らえられなかった。そのかわりハング
ル語の放送をキャッチ!いかにも北海道と別の意味で感慨深いものがあった。8:40頃雨が本降りになる。テントってすごいと感激。結露はするが雨
風をしのげるのだ。ただ野宿のつらさトイレはちょっと離れた公園だ。雨の中寂しい外灯しかない道を墓地と馬頭観音が近くにあると知りながらゴミ袋
をかぶって歩くのはなんとも寂しい。トイレも暗いし。言葉にはださなかったが不気味だ。出そう。もうテントの張り方は分かった。明日はキャンプ場
を使おう。ライダーも多いだろうし、怖くもないだろうし。そうホクレンの旗をゲット!これが至上命題だ。9時過ぎラーメンを食べ一応寝る。話はつ
きない。今日のこと、明日以降のこと、バイクのこと、カワイイ娘のこと、延々と語る。やっと瞼が重くなった。とりあえず初日はこうして幕を閉じた。
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本日の走行距離 171km