昨日待ちに待ったテントが届いた。スタッフバック、サイドバック、タンクバック。何に何を入れようかさんざん迷う。シュラフが予想以上に大きか
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ったのだ。試行錯誤のパッキング。スタッフバックは重さ約20キロ。さすがにテントは弟のゼルビスに積むことにした。アパートの前で出発前の写真
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を撮り合う。メンテナンスは完璧。ガソリン満タン。天気は快晴。気温34度。湿度は低くからっとしている。まさにツーリング日和。不安はといえば、
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フェリーの予約をしていないことと、乗り方が分からないこと。それにテントは一度もたててみていない。キャンプも自分達だけではしたことがない。
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予備知識もほとんど無く大まかなルートが決まっているだけ。本当に見切り発射だった。だが後戻りはできない。16:20、クラッチをつなぐ。アパ
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出発直前の勇姿。目指すは北海道!
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ートを出発する。広い意味では北海道ツーリング
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スタートだ。オドメータは12704km。フェ
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リー乗り場仙台港をめざす。いったん国道4号へ
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出て県道10号に入る。仙台港まで一直線の道だ。
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途中ビックバイク3台見る。仙台港を目指してい
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る。みんな北海道を目指していると実感する。そ
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のビックバイクを追ってフェリー乗り場へ入った。
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ターミナルとおぼしき建物の前にとめる。バイク
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が多い。ライダーも多い。あふれている。みんな
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北海道を目指しているのだ。とりあえずターミナ
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ルへ入る。用紙があった。銀行のような感じ。住
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所、氏名、バイク名、ナンバー、行き先等を書き
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込む。思っていたより簡単だ。ホッとしていると、
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事務の女性が話しかけてきた。”予約番号は分か
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りますか?”と聞かれた。予約してませんと答え
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ると事務でキャンセル待ちの手続きをして下さい
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といわれた。事務でもらったキャンセル番号は弟
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が32番で自分が33番だった。ブルーが入る。
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30人もキャンセルするとは思えない。今日中の
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出発を半分以上あきらめた。7時頃には分かると
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言われた。ターミナル前で時間をつぶす。様々な
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アナウンスが流れる。搭乗開始のアナウンスとと
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もにバイク、車が流れ出す。目の前のライダーの
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様子を観察するともうチケットはある様子だ。予
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約もせず来るとはいかにもビギナーと苦笑いする。
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さらに目にするバイクほとんどが大型と言うこと
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もあってよけい浮いた感じになっている気がした。
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7時を過ぎた。きれいな夕焼けが広がる。アナウ
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ンスは依然として流れない。自転車でツーリング
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している2人がターミナルにやって来た。キャン
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セル待ちですかと聞かれたのでそうです、と答えると苦笑いした。どこから来たんですかと訊ねると京都からと答えた。京都!自転車でやって来たのだ。
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思わず敬服した。明日のキャンセル待ちをしようかとそわそわし出した頃、キャンセル待ちの乗船手続きが始まった。7時半だ。”9番の…”と係員が
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呼び始めたときもうダメだと思った。いくらなんでも33番までは来ないだろうと思ったのだ。ただ実際はキャンセル待ちの人も大勢いたのだ。ロビー
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が埋まる。20番まできた。25番まできた。弟と顔を見合わせる。もしかしたら乗れるのか?ただ今度は時間が気になり始めた。係員はテキパキ
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と作業している。だが時計は7:45を示している。30番まできた!そして32番弟が呼ばれた。7:52。33番!呼ばれた!急いで手続きをする、
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が、係員の人が何度もタイプミスをする。はらはらする。やっとチケットを手にした!7:55分。出航は20:00。ロビーを駆け出す。バイクに荷札
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をつけるのも、グラブをするのも、ヘルメットをかぶるのももどかしい。チョークを引きキック。かからない。キックキック。かからない。かぶらせた!
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チョークを戻し10回ほどクラッキングする。そしてもう一度チョークを引きキック。かかった!暖気もできず死にそうになりながら、断続クラッチで
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走り出す。眼鏡はしていない。係員の誘導も見えない。夢中でフェリーのデッキへ飛び込んだ。誘導に従いバイクを駐輪する。乗れたはいいが客室が分
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からない。弟もうろうろしていた。後からライダーがまだ数台入ってきた。彼らの後についてエレベーターで客室へ入った。一目見た船内はちょっとした
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ホテルのようだった。ゲームセンターがあってバーもあってレストランもあった。ラウンジもあった。2等客室を探して入った。広い和室にただ毛布と
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枕があるだけだ。本当に雑魚寝。60組は用意されていた。雑多な人が目にはいる。だが自然とライダーに目がいく。とりあえず一息ついた。何とか乗
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れたのだ。ぎりぎり最後の方だった。当然デッキに出てみようと思った。すでにデッキは大勢の人であふれていた。夜景が広がる。近くは仙台港の灯。
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遠くは市内の灯。振り仰げば煙突からもうもうと煙が上がる。フェリーはタグボートに引かれゆっくりと方向を変える。そして進み出した。思ったより
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揺れは少ない。風は明らかに洋上の風だ。街の灯がどんどん遠ざかる。いよいよ仙台を離れるのだという実感がわく。そしてすぐ周りは真っ暗な海とな
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った。月が青々と輝く。これから15時間ほど海の上だ。客室に戻る頃、フェリーは大きく揺れだした。沖へ出たのだろう。足下が定まらない。情けな
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い。頭が割れるように痛くなってきた。船酔いだ。猛烈な眠気がおそう。横になるとかなり楽になった。だが眠い。横になりながら大きな声でルートを
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話し合っているマスツーリングのグループの話が耳に入ってきた。ライダーが見たいと思うのはほぼ同じ様だ。ただ自分達と違うのは女性が仲間にいる
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ことか。一眠りしたようだ。船長と思しき人物が就寝時刻を告げに来た。10時消灯となる。この頃揺れが収まった。ラウンジに出てみる。まだ眠れな
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い客達が大勢いた。窓から外を見ると街灯が並んでいる。かなり陸地のそばを航行しているようだ。日記を付け始めると弟も起きてきた。コンビニで買
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ったパンを食べる。今後のルートをアイスを食べながら話し合う。なんと北海道へ渡るのは簡単なことか。もうフェリーの中なのだ。明日起きればもう
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北海道だ。だが準備も出発もフェリーへ乗り込むのもすべて慌しかったせいで北海道へ本当に向かっているのか、そんな気があんまりしなかった。
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ただ、第1関門はクリアした。明日晴れることを祈るばかり。明日は早い。12時頃毛布に潜り込んだ。
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