☆吹奏楽作品を聴く(保科洋)
1987年の全日本吹奏楽コンクール課題曲に保科洋氏の作品「風紋」という曲がありました。その頃は課題曲の演奏時間は
3〜4分というのが相場だったのですが「風紋」は5分を超える大作?だったために、この曲を課題曲として採用した団体は
さぞかし自由曲の選択には苦労したことでしょう。そのかわり、とても充実したこの曲を演奏することができたのではないで
しょうか。コンクールの課題曲はその場限りという曲が多い中で「風紋」はコンサートピースとしても十分通用するような
作品だったのです。当時、私は吹奏楽の世界からは遠のいていましたが、「風紋」が気に入ったため母校を通じてフルスコアを
購入したほどだったのです。
それからもう10年以上が経ちましたが、11月15日にその名も「風紋」というタイトルで保科洋氏の吹奏楽作品集が発売
されました。演奏は木村吉宏指揮:大阪市音楽団です(BRAIN MUSIC:BOCD−7403)
「風紋」は1999年に改訂したバージョンです。ほとんど同じなのですが中間部の速い部分に補筆がなされています。
いつ聴いてもなにか懐かしいような、はっきりいうと日本的情緒に満ちた心休まる素晴らしい音楽です!この曲をコンクールで
演奏した人、聴いた人共にぜひもう一度聴いてもらいたい作品です。
その他「吹奏楽のためのカタストロフィ」や「古し(「示巳」という字です)」といった保科氏の代表作も収録されており
日本の吹奏楽作品の流れを知る上で貴重なCDだといえるでしょう。
保科洋氏の作品は全般に日本的情緒に満ちており郷愁を誘うものが多いようです。それがたとえ先鋭的な表現を求める音楽で
あっても決して荒れ狂うことなくやさしさを感じさせます。聴いていてホッとできるのです。
やたらと奇をてらって激しいばかりの吹奏楽作品に心を痛めているみなさんにぜひおすすめします。
(1999.11.19)
☆吹奏楽作品を聴く(ヴィンセント・パーシケッティ)
私自身はヴィンセント・パーシケッティの作品を演奏する機会には恵まれませんでした。
実際問題として、「わかりやすさ」の面からいってもパーシケッティの作品は同時代の他の吹奏楽作曲家よりも
決して支持されていたとは言い難いと思えます。しかし今改めてその作品を聴いてみると...いかにもアメリカの
吹奏楽の世界の一時代を担ったある種の「懐かしさ」を感じることができたのです。
たとえば「ページェント」は比較的わかりやすい作風の曲ですが、それでもパーシケッティ独特の、なんともドライな?
ハーモニーが随所に現れます。「そういえばこういう感じの曲はけっこう流行ったよな。」とある程度の年齢以上の方は
思えるかも知れません。
そして代表作の「仮面舞踏会」はその名からは想像もできないほどの、まさに「狂乱」に近い、いわゆる「現代音楽」の
世界(もちろん今の作品は全部「現代音楽」!?)に到達していますが、そんな中でもやはりパーシケッティ独自の和声が
ちりばめられていて、これもまた「パーシケッティ」そのものといえます。
今回聴いた中には含まれていませんでしたが、「交響曲第6番」という作品もパーシケッティの最も有名な作品の一つ
です。今回いろいろな作品を聴いて「交響曲第6番」を以前聴いた時の印象が甦ってきました。やっぱり「なんだかドライ」
な曲だったような気がします。こういう面から推測するに、パーシケッティはまったく自分の作風を変えることはなかった
ようです。
いずれにしても「アメリカを代表する吹奏楽作品の大家」といわれている割にはその作品が演奏される機会が少ない、
ちょっとかわいそうな作曲家と思えてなりません。CDを探すのも大変です。
聴いたCD:harmonia mundi FRANCE/HMU907092 ロンドン交響楽団の管楽器セクション
(1999.11.7)
☆吹奏楽作品を聴く(アルフレッド・リード)
ちょうど今の時期は「全日本吹奏楽コンクール」がたけなわです。
だからというわけでもないのですが、(どちらかというと先日聴きに行った「英国女王陛下の近衛軍楽隊」の影響?)
立て続けに吹奏楽のオリジナル作品を聴きました。
吹奏楽作品の場合、「もともと吹奏楽編成用に作られた作品(オリジナル作品)」と「オーケストラやその他の室内楽・
器楽曲を吹奏楽編成用に編曲した作品(編曲もの?)」が存在します。まあ、オーケストラもそうですよね。
オリジナル作品は、多くの場合その曲を演奏するであろう団体の演奏レベルを想定して書かれています。小学校・中学校
のような初級・中級のスクールバンド用、高校・大学のような上級レベル用、軍楽隊や企業のサポートを受けられる立場の
高度なアマチュア・セミプロ、そしてプロフェッショナル。ターゲットとなる演奏団体がなにか?によって作品の雰囲気が
微妙に異なることも、聴いていて興味深いところです。さて、私が聴いたCDを紹介します。
「The Wind Music of Alfred Reed(アルフレッド・リード管楽作品集)」
アルフレッド・リード指揮/東京佼成ウィンドオーケストラ KOCD−3550〜53
最近はどうなったのかわかりませんが、私の現役の頃は最も広く一般的に演奏されていた作品ばかりをカテゴリ別に
4枚のCDに集めたものです。そのカテゴリは「交響曲」「序曲」「組曲」「シェークスピア」となっています。
この手の有名曲?ばかりを集めたCDを聴くとき、どうしても自分が演奏したことのある作品に気が行ってしまう
ものですが、いろいろな団体の優れた演奏に触れて「いい曲だ!」と思った作品を注意深く聴いてみるのもなかなか
よいものです。中でも印象深いのは「オセロ」です。あのシェークスピアの悲劇を基にしているのですが、
コンクールで抜粋されがちな作品を全曲(5曲)聴くことによって「オセロ」が悲劇なのだということを理解できる
と思います。
残念ながら、このアルバムにはリードの代表作「アルメニアンダンス」が収録されていません。これはこのCDが
発売されるほんの少し前にその名も「アルメニアンダンス」というアルバムが発売されたばかりだからでしょう。
「アルメニアン・ダンス」も数多くの名演奏に恵まれた屈指の名曲といえます。
リードの1980年代までの作品には私のお気に入りの作品が数多く存在するのですが、なぜか1990年代に入ると
それほど心動かされる作品に出会えなくなりました。私自身が吹奏楽から離れたせいでしょうか?とはいっても今世紀の
吹奏楽界にとってアルフレッド・リードが果たした役割は非常に大きく、これからも数々の作品、そして名演奏を繰り広げて
いくことでしょう。
(1999.10.23)
☆カバー=クラシック?
松任谷(荒井)由実といえば、泣く子がさらに泣くというほどの素晴らしいヒットメーカーとしてその名を轟かせて
いますが、そのユーミンの楽曲の様々なアーティストによるカバーアルバムが発売されました。タイトルは「Dear
Yuming」。この手のスタンダードナンバー(といえるでしょう、彼女の場合は)がどのように料理されているのか
興味津々です。
どの曲をカバーするかはアーティストに任されているようで、ユーミンのベストアルバム「ノイエ・ムジーク」の
ようなメジャーな曲ばかりではありませんでしたが、それぞれに強い強い思い入れが感じられました。
私の個人な趣味では「あの日に帰りたい」がとても好きなのですが、この曲を歌うのはなんと!めでたい森高千里。
というわけでオリジナルと比較してもあまり変わり映えのしないアレンジと南野陽子を思わせる(とても苦手...)
声質とで、ちょとだけトホ、という感じでした。
けっこうノリノリなのはわりとめでたい(ちょっと古い)奥居香による「恋人がサンタクロース」です。音楽も
プリプリ(わからない人はいますか?プリンセス・プリンセスという彼女がヴォーカルをつとめていた伝説的?
女性ロックバンドです。)チックでとても楽しいカバーに仕上がっています。(原曲も楽しいですね。)ここまで
いけば立派なもの。
このアルバムの白眉は間違いなく椎名林檎の手による「翳りゆく部屋」という、おそらくあまりなじみがない曲
でしょう。ビートルズに似ていなくもいない音造りと、椎名林檎の圧倒的ともいえる歌唱によってこの曲は聴く者の
心を強く揺すぶるのです!まさに「魂の叫び」!何度聴いても涙が出てくるのです。う〜ん!いい曲だ本当に!!!
クラシック音楽は楽譜こそその作曲家オリジナルのものですが、誰かがその楽譜を演奏することによって命を
吹き込まれます。演奏する人が違えば音楽そのものの表現も大きく変化する可能性を秘めています。
私はクラシック音楽のそんな奥深い面に強く心を引かれていますが、どんな音楽でもジャンルを問わず、演奏する
人そのものを映し出す鏡となりうるのですね。
このアルバムは「いわくつき」らしいのです。私は知りませんでしたが。その人の曲を抜くために発売延期に
なったとか...その人の曲も聴いてみたいんですけどね、ムリでしょうけど。
(1999.10.6)
「ビートル」といえば自動車史上に燦然と輝く名車です。幸運にも私の兄が一時期所有していたので、私も運転する
機会に恵まれたのですが、実に味のあるいいクルマでした。まあ、このクルマのエピソードは他のトピックに譲るとして
フォルクスワーゲン社はこの20世紀の終わりに「ニュービートル」なる新しいクルマを発売しました。このクルマも
先代同様丸っこくてなぜだか黄色い色がよく似合うのです。一説にはピカチュウ的とのウワサも!
「ビートル」の「黄色い」のは最近大ヒット中のニューアルバム「The Beatles Yellow
Submarine Soundtrack」も同じことです。(強引)
なにを隠そう、隠しもしませんがBeatlesのサウンドがかなり好きな私にとっては思いがけないプレゼントと
なりました。曲はそれぞれ名曲揃いでいうことなしなのですが、一番驚いたのはその音質のよさです。さすがに新たなる
CD化に向けてリマスタリングし直しただけのことはあります。ビートルズ久々の新譜?に世間がわくのは温故知新な
ことなのでしょうか?確かに古いのですがサウンドは新しい。初めて聴く人にとっても新鮮で刺激的、と話題には
事欠きません。これもクラシック音楽的ですね。
(1999.10.6)
☆暑い秋にはシベリウス?
もう9月も終わりだというのに相変わらず暑い日々が続いています。まあ、「暑さ寒さも彼岸まで」とも言いますから
もう少しの辛抱でしょう。
最近シベリウスの交響曲第2番のCDを立て続けに購入しています。これは私が少しばかり活動に関わっていた
「日本大学生物資源科学部管弦楽団」が冬の定期演奏会でメインに演奏するからなのです。私も結構いい加減で
こういうきっかけがないと特定の曲に対する興味がわかないのです。
シベリウスの交響曲第2番は彼の代表作といっても過言ではありませんが、私にしては珍しくスコアを持っていません。
レコードは中学生の時「オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(RCA)」のものを購入していました。これは単に
カップリングされていた「フィンランディア(まさに代表作!)」が聴きたかっただけなのですが、それでも第1楽章の
のどかな雰囲気、第2楽章の厳しくほの暗い響き、第3楽章のむやみやたらと速いパッセージにびっくりし、続いて突入する
第4楽章の輝かしい金管の調べ、なが〜いトランペットソロにワクワクしたものでした。
実はそんなに好きな曲でもないのかな?という気もしますが、第2番の聴きごたえある演奏として挙げられるのは
1.「ジョージ・セル/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(1964)」フィリップス
古いし、今出回っているかどうかわからないのですが、かなり引き締まった見事な演奏で好きです。
表現的にもいうことなし。ただ、昔のここのオーケストラの響きはかなり独特なので、好みの分かれるところかも。
本当はカップリングされているベートーベンの交響曲第5番を聴いて欲しいのです。バランスも最高に好きです。
2.「ズービン・メータ/ニューヨーク・フィル(1990)」
値段が安かった(1000円!)ので買ったのですが、このコンビに合っているのか、意外と?いい演奏でした。
特に第3楽章は金管セクション大爆発!の名演奏です。
シベリウスの交響曲は難解というのが定説となっています。確かに形式とは縁遠いし、親しみやすい旋律も少ないので
そう思われる向きもあるとは思います。また、ブルックナーと同じく指揮者を選ぶ曲なので、よほど慎重にしないと
痛い目を見ることもあるようです。
シベリウスの交響曲で親しみやすいのは2・5・7番でしょうか。(私の好み)第1番はわかりにくい曲だと思います。
第3番はこの作曲家にしては明るい曲想がいいかも。第4番は重苦しい雰囲気を持っていて近寄りがたいのですが、
最後には和解?できます。第6番は?あまりちゃんと聴いたことがないのです。残念ながら...
わかりやすいシベリウスの曲といえば「4つの伝説曲」が挙げられます。イングリッシュ・ホルンのソロで有名な
「トゥオネラの白鳥」が入っていますし、終曲「レミンカイネンの帰郷」もずいぶん激しい「帰郷」ではありますが躍動感の
かたまりのようないい曲です。シベリウスの曲には「どっぷりと浸る」のが正しいと思います、まずは。
(1999.9.20)
☆懐かしの吹奏楽名曲
アキハバラの石○電気で「東芝EMI」の吹奏楽CDコレクション?のパンフレットを見つけました。
その中で「!!」というCDがあったので、さっそく探してみたのですが残念ながら見つかりません。
念のため店員さんに問い合わせてみようかな、とも思いましたがとりあえず断念しました。
その後しばらくして、銀座のヤマハに行ったおりに探してみましたが...それだけがありません。
あまりにくやしくて、管楽器関係のCDなら都内随一の品揃えを誇る渋谷のタワーレコードに行ったら...
見つかりました!「ウィンド・オーケストラのための交響曲その2」が。中でも私のお目当ては
「ロバート・ジェイガー/交響曲(第1番)」です!
私自身はこの曲を演奏したことがないのですが、大学2年の時に母校(愛知県立横須賀高校)が
この曲の第4楽章を吹奏楽コンクールの自由曲として演奏したのです。ジェイガーらしい曲想と
ダイナミックな音づくりに深く感動したものでした。
なぜだかわかりませんが、この曲はCDになることもなく演奏されることもなくなってしまいました。
このCDを買ってみてわかったのですが、ジェイガーの交響曲(第1番)の楽譜の出版元がなくなって
しまったため今や絶版状態だということです。楽譜がないとは...
全部で4つの楽章からなるこの曲はなんと!1963年に作曲されたそうです。意外と古いんですね。
この曲の第4楽章しか知らない人、ジェイガーの「シンフォニア・ノビリッシマ」を聴いたことある人は
ぜひ全曲聴いてみてください。おどろきますよ。聴いたことのあるテーマがあちこちで現れますからね。
とはいっても、第4楽章がこの曲の白眉であることは間違いありません。冒頭の激しい16分音符の
連打、曲想を引き締める不協和音の数々、この手の曲には珍しいトロンボーン・ソロ、登り切らない
音階、今までの重苦しい雰囲気を振り払うかのような転調、そしてなだれ込むフィナーレ。
思わず「イカす〜!!」と叫んでしまいます。本当にいい曲です。
こんなにいい曲なんですからぜひとも楽譜が復刻されることを願ってやみません。スコアが欲しい...
(1999.9.11)
☆イマ風な音楽
藤沢市民交響楽団のあるメンバーの方のご厚意で、当代きってのソロ・トロンボーン奏者、クリスティアン・
リンドベルィ(リンドバーグ)のソロによる現代音楽のCDをいただきました。
以前にも書いていますが、リンドベルィによるオーソドックスな作品を収録したCDを見逃さない私なのですが、
このトロンボーンソロ(無伴奏!)による作品集には手が出なかったのです。なぜ?
このCDの曲目を挙げてみます。
1.ベリオ/セクエンツァV(5):1966年 言わずと知れた超有名曲。でも聴いた人は極少...
2.クセナキス/Keren:1986年 建築家としても有名なギリシャの作曲家
3.カーゲル/Atem:1969〜70年 知りません!
4.エリアソン/Disegno:1985年 わかりません
5.ケージ/ソロ:1957〜58年 偶然性の音楽でかなり有名なアメリカの作曲家
6.シュトックハウゼン/In Freundschaft:1977〜78年
ドイツの有名な作曲家
というように、なんだか全然なじみのない作品ばっかりです。たぶん多くのみなさんが想像しているとおり、
楽音らしい音とかわかりやすい旋律とかはほとんど期待できません。いくら私がバロック音楽とともに
現代音楽に親しんで?きたとはいえ、これはあんまりです。
ただ、この中でもベリオやクセナキス、シュトックハウゼンといった、現代音楽の大家(他の作曲家の方、
ごめんなさい。無知な私を許して!)による作品は、わりと聴くことができます。(?)不思議なもんで。
「ジョン・ケージは大家のはず?」そのとおり!でも、思いっきり偶然性の音楽で間がありすぎるので
全然聴いた気になれないのです。
現代作品には音を出すという意味での「パフォーマンス」と、それ以外のなんかやる「パフォーマンス」
が渾然一体となっていることが多いので、実演に接するとまた見方が変わってくるのかも知れません。
ただ、これもある程度慣れないと非常に違和感がつきまといます。飽きてきたり、ひどいときにはいやになったり...
現代音楽を商業的にも成功させるのはかなり難しそうです。かくいう私も最近聴きに(見に)いかないし。
心身共に元気なときはおもしろいんですけどね。
高校生の頃だったか、ヘンツェという作曲家の「舞踊音楽『オルフェウス』による劇的情景」という作品を
聴いてとても感銘を受けたおぼえがあります。いい曲なんですがCD化されていないようなのです。
なんだかわけの分からない曲ばかり(し、失敬なっ!)録音しないで、わけの分かる曲をもっと録音して
もらえないですかね。ん?私の基準では意味がないって?そりゃそうなんですが...
(1999.9.7)
やっとこのページのネタとしてもっともふさわしいと思われる「ブラ2」です。(別のページとネタがダブって
いるようです...それだけ好きだってことに免じてご容赦ください。)
「ブラ2」?「ブラームス/交響曲第2番」ですが、この有名曲には幾多のCDが存在します。私が所有している
ものだけでも30種類ぐらいありますが、演奏タイプではおおむね以下のとおりに分類できるようです。
1.堅実!中庸な演奏。すべてにおいてことさら「なにかやってやるっ!」という気負いがなく、かえって
この曲にふさわしいと思われるもの。「ヴァント:北ドイツ放送響」「モントゥ:ロンドン響」
2.オリジナル重視!快速ですっきりさわやか?な演奏。どの楽器がなにをやっているのか、とても見通しが
よい、どちらかといえば研究向きのもの。「ノリントン:ロンドンクラシカルプレイヤーズ」
「マッケラス:スコットランド室内管」「アーノンクール:ベルリンフィル」
3.ゆったりとしてこの曲を慈しむかのように表現する演奏。ストレスにやられがちな現代人の心をなぐさめて
くれる、やさしさに満ちあふれたもの。「ジュリーニ:ロサンゼルスフィル」「バルビローリ:ウィーンフィル」
4.ここまでする?!個性的な演奏。いい意味でエキサイティングなもの。「ヤルヴィ:ロンドン響」
「ムラヴィンスキー:レニングラードフィル」「バーンスタイン:ウィーンフィル」
非常に独りよがりな分類で心苦しいですが、ここに挙げてある演奏は聴いていて特にそう思えるものです。
もちろん、これ以外にも聴いて損のない演奏は数多くあります。熱狂的なライブ録音「コンドラシン:アムステルダム
コンセルトヘボウ管」、燃えすぎて最後のフェルマータの途中で拍手が入ってくる(ちょとわざとらしいけど)
「ミンシュ:フランス国立管」、意外で絶妙な組み合わせ「バルビローリ:バイエルン放送響」、昔の指揮者は
キツかった?「セル:クリーブランド管」、このわざとらしさがいいんです「マゼール:クリーブランド管」、
サントリーホールでの実演はメロメロだったが、CDなら!「ドホナーニ:クリーブランド管」、独特な音色と響き
(あとむやみに高いチューニング)に魅了される「ザンデルリンク:ドレスデンシュターカペレ」、やっぱりウワサ
どおりの個性派?それにしてもテンポが違いすぎるこの2枚「チェリビダッケ:シュトットガルト放送響・ミュンヘン
フィル」...なんだ、結局はオーケストラの好みか...って感じですか?あとはライブだということでしょうか。
よくよく考えてみると、もう1つ分類がありました。「特になし」...これはちょっと書けないですね。
(1999.8.22)
☆世紀末にむけて
暑いのは夏の常。とろけて疲れ切った頭が急にいまどきの音楽を欲しがっています。あちちっ!
選曲は季節柄ふさわしいと思われる「黛敏郎/涅槃交響曲」です。演奏は岩城宏之指揮/東京都交響楽団。
この曲と出会ったのは確か中学生の頃です。そのころの私は毎朝部活動に行く準備の時間にFMでバロック音楽の番組を
聴きつつ、日曜日の深夜には現代音楽をこっそりと楽しむ変な若者でした。そんなわけでそんじゃそこらのアバンギャルドな
音楽にはめげることなく耳を傾けることができる「いい心得?」ができていたのでした。
涅槃交響曲は非常に大規模な編成を持っています。その巨大なオーケストラが梵鐘の音色を実に不思議な響きで再現します。
残念ながら個人的にはその様子があまりよくわからないのですが。実演ならきっとそのサラウンド効果もあいまって音響の渦に
のみこまれることでしょう。
圧巻は男声合唱による読経の再現です!なんともいえない雰囲気に包まれていきます。こういう響きが楽しめるのも現代音楽の
楽しみ方のひとつといえるでしょう。
せっかくなので、もう一曲。「メシアン/トゥーランガリラ交響曲」を聴きました。夜中にひとりで聴くのはちょっと怖いですが、
オンド・マルトノのすさまじいグリッサンド奏法には圧倒されます。「ギュゥウウウイ〜ン」ですからね、すごいですよ。
そんな中にも現代音楽にしては珍しく(!)旋律的な箇所が随所にちりばめられています。意外と聴きやすいかもしれませんね。
そういえば最近、旬の「現代音楽」というのに興味は失せましたね、すっかり。この2つの作品も今ではすっかり古典の域に
達しています。もう4、50年も前の曲なんですね。いったい「現代音楽」はどうなっていくのでしょう?
(1999.8.2)
☆リヒャルトばっかり!
先月から今月にかけてなんだか「リヒャルト・シュトラウス強化旬間」と化しています。「英雄の生涯(「ひでおのいきがい」と
いう人もいますが)」だけでも、チェリビダッケ/シュツットガルト放送交響楽団、大植英次/ミネソタ管弦楽団、マゼール/バイエルン
放送交響楽団と3種類も立て続けに買ってしまいました...いや、別にリヒャルトシュトラウスが大好きというわけではないのです。
ハイファイ的にはイケるものですからつい。それから注目の演奏ですから。(何でいいわけしているんですかね?)
本当は今度の藤沢市民交響楽団の演目である「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を聴きたかっただけなのです。
演奏時間的にこの2曲の組み合わせはありがちなのです。とかいってマゼールしかこの組み合わせになっていないのですが...
ついでに夏にふさわしい(これは前回のテーマ!)「アルプス交響曲」なんていうのも買ってみました。「アルプスへの登山」
というイメージが長続きすれば十分涼しいのでしょうが、曲自体はかなりヘヴィーなものです。編成が大きいし、音符も多いし、
自然を表現するために低音域が拡張されているしで実は全然さわやかではない曲ですよ。管弦楽法は見事!の一言に尽きますが。
リヒャルトシュトラウスの演奏にかけてはもしかして随一といえそうなのは、ドレスデン・シュターツカペレなのではないでしょうか。
私はルドルフ・ケンペとヘルベルト・ブロムシュテットの演奏を持っていますが、おそらく一番ポイントとなるホルンの音色が
とても柔らかくてメチャうまい!これは間違いなく名ホルン奏者ペーター・ダム氏のしわざに相違ありません!!ぜひ聴いてみて
ください。
機能的にもリヒャルトシュトラウスを演奏するのに似合いそうなのはドイツのオーケストラですが、どうして!ドホナーニ指揮の
クリーブランド管弦楽団の演奏は何もいうことがないくらいの秀演です。非常にてきぱきと整理されていてリヒャルトシュトラウスが
楽譜に書き込んだ内容をすべて聴かせてくれるかのような、まさに音の大パノラマ状態です。先入観を取り払って聴いてみてください。
きっとその鮮やかさに度肝を抜かれることでしょう。かなりハイファイ向きです。
(1999.7.18)
☆暑い夏にふさわしい?
昨日までの荒天とはうってかわって、今日は久々に夏の日差しが戻ってきました。それにしても暑い!暑いですね。
日本の夏は蒸し暑くて私的にはうんざりですが、北ヨーロッパやロシアのように冬が厳しくて長い国々では夏はとてもありがたい季節なのでしょう。
別に暑いからといってそれにふさわしいとかそうでないとかはまったく私感なのですが、なんとなくこの季節に向いている(と思われる)曲を...
まずはブルックナー。実に夏にふさわしく暑苦しい、というよりも澄み切って清涼な気分が味わえましょう。交響曲第8番は特におすすめです。
別に紹介していますが、何度聴いても最新の朝比奈隆氏(7/9に91歳!の誕生日をむかえられます。)の東京都交響楽団との演奏は素晴らしい。
いわゆる「巨匠」テンポでは決してない、快速でありつつ要所要所をしっかりと締めてブルックナーの真髄を堪能させてくれます。
その名も「夏の歌」。マーラーの交響曲第3番はいかがでしょう。暑苦しいのは第1楽章冒頭の8本のホルンによるユニゾンだけでなく、その後の
トロンボーンの葬送行進曲もでしょう。足取りも重く三連符のリズムを刻みます。「だ〜っ、だだだだぁ〜」って感じです。暑い。
なんか、前にも書いた話題を蒸し返しているみたいでこれもなお暑いですが、第5、第6楽章で流しそうめんのような涼しさを味わってください。
もっと涼しげにいきましょう。モーツァルトのアンサンブルはいかがでしょう。ウィーン・フィルのメンバーによる11重奏?です。
こういうものをやらせるとこのオーケストラは抜群ですね。編成は木管5重奏+金管5重奏&打楽器。管楽重奏というのが泣かせます。
ありそうでなかった組み合わせです。雰囲気は「のほほん」といった感じで素直に楽しめます。これは曲じゃなくって演奏のことでした。
極めつけはチャイコフスキーの「悲愴」です!暑い夜にはもってこい!!でしょ?特にバーンスタイン/ニューヨーク・フィルの新しい録音は暑いです。
熱い?確かに。そうともいいますが、気分的には「暑い」のです。むしろ肯定的な意味合いにおいて。
どうなんでしょう?「悲愴」はすっきりさわやかなのがいいのか、じゅうじゅうに「暑い」のがいいのか...中庸がいい?
ちなみにブラームスていうのは夏向きじゃないですね、なぜか。いつもいつも寒々しいというのが私のイメージです。みなさんはいかがですか?
(1999.7.4)
☆軍楽隊
古くはモーツァルト・ベートーベンの時代から、マーラーの交響曲では頻繁に、ベルク「ヴォツェック」ではもろに「軍楽隊」の描写がなされています。
クラシック音楽では「神聖=宗教音楽」に対して「世俗のきわみ=軍楽」と見なされることが多々あるようで、前出のマーラー「交響曲第3番」は
葬送行進曲と軍楽隊の大行進が入り交じる第1楽章、天使の歌声が清冽に響きわたる第5楽章、弦楽器によるコラールが心を揺らす終楽章とが
鮮烈な対照をなしています。
というわけでなんだか騒々しいイメージを浮かべてしまう軍楽隊ですが、吹奏楽の世界ではそれこそ国家の威信をかけた存在としてかなり
レベルの高い演奏団体が活発な活動を繰り広げています。有名どころではフランス「ギャルド・レピュブリケーヌ」やイギリス「ロイヤル・エアフォース
バンド」とか数え上げればきりがないほどです。
朝比奈隆氏のブルックナーをリリースしたレーベル「フォンテック」から日本「陸上自衛隊中央音楽隊」の最新録音が発売されています。
曲はジェームス・バーンズ「交響曲第3番」、アルフレッド・リード「オセロ」、レオナルド・バーンスタイン「ウエストサイド・ストーリー・セレクション」
というなんともアメリカンな(濃い意味で!)ものです。
個人的にはリードの「オセロ」(いい演奏でした。)なのですが、バーンズの交響曲も作品・演奏ともに感動的なものでした。
第1楽章の重苦しい雰囲気(チューバ奏者必聴)、第2楽章のなんとも軽快なスケルツォ(鍵盤打楽器大活躍!)、バーンズの娘に対する鎮魂歌
である第3楽章(ベルクのヴァイオリンコンチェルトのよう!)、アルバマー序曲を思わせる終楽章となかなか聴かせどころの多い作品です。
バーンスタインはちょっとお行儀良すぎかも。規律が厳しいからか?アレンジ・演奏とも高水準ではあります。
このようにハイレベルな演奏団体がいろいろな吹奏楽作品を紹介してくれるのはとてもありがたいことです。ただ、吹奏楽コンクール需要を
見込んだと思われる選曲ばかりがもてはやされるのはちょいと?というかんじです。まあ、売れなければ意味がないですからね。
(1999.6.26)
☆演奏の記憶
非常にタイミングよく、日本が世界に誇る巨匠である朝比奈隆氏の最新CD、ブルックナーの交響曲第8番が発売されました。
この演奏は1998年9月28日・10月1日の東京都交響楽団とのライブ録音です。私もこの演奏会には出かけました。
大変な熱演だったのでよく憶えていますが、まさかCD化(録音されていたとは!)されるとは思ってもいませんでした。
朝比奈隆氏の演奏はかなりの確率でCD化されています。この巨匠の芸術をきちんとした形で後世に残していくことはとても
有意義なことだと考えている人がいるのですね。実際に朝比奈氏の演奏会はなかなかチケットを取ることが困難な公演のひとつと
なっています。演奏会が始まって指揮者が登場するだけで凄まじいほどの拍手の渦になるのを目の当たりにするといやがうえでも
演奏者・聴衆ともに盛り上がろうというものです。なかなかこういう雰囲気は味わえませんよ!
特に大変な名演に立ち会えたときに「この感動をもう一度!」と思うのはごく自然な気持ちです。たぶん印象は残りますが、
できることなら最新テクノロジーを駆使して演奏そのものを享受したいものですよね。そういう意味でもこのような企画は大歓迎です。
私のイチ押しオーケストラである東京都交響楽団が壮大かつ緻密な演奏でこの巨匠の90歳の記念すべき演奏会を飾っています。
プロフェッショナルの演奏家どうしが総力を結集してひとつの演奏を成し遂げるすばらしさがここにおさめられています。
ほめすぎ?いえ、そうかもしれませんが、私の気持ちとしてはタイミングがよすぎたのです。小田桐センセ、聴いていますよ!
確かにアマチュアの熱演に遭遇すると感心してしまいますが、プロフェッショナルの熱演はむちゃくちゃすごくて感動できます!
「いやぁ、かないまへんなぁ。」という「うすら笑い(あぶない!)」が思わず出てしまいます。
レーベルまで日本のフォンテックですから、まさに日本の日本による世界のための記憶といえなくもないですか?!
(1999.6.20)
☆極私的音楽論
チェリビダッケの一連の演奏を聴いていて感じるのは、その独特な雰囲気を持つテンポ感についてです。
私は別に特異な(一般的な、と反対)演奏に対して批判的な態度をとっているわけではありません。
今まで私がいろいろな演奏を聴いてきた経験の中で「これは!」と思っている、あくまで主観的な基準が「一般的っぽい」のです。
その「一般的っぽい」のと比較してみて「ちょっと違う(批判的意味合いはないのです)」のが「特異」なのです。
「一般的っぽい」のも「ちょっと違う」のも同じ音楽ですから私にとってはどちらも受け入れられるものです。
ただ、私にとって大切なのは「イケてる」か「イケてない」かなのです。(この言い方はかえってわかりにくいでしょうか?)
私のように楽しみで音楽を聴くものにとっては、買ってきたばかりのCDのパッケージを開けて、CDプレーヤーにかけて、
最初に出てくる音楽が自分の心(「魂」でしょうかね?)にどのように響くか、ということが最大の関心事なのです。
音楽の感じ方は十人十色でいいのではないでしょうか。これだけ世の中にCDがあるのですから自分に合うモノ、合わないモノが
あって当然です。ただ、聴かないでどうこういわないのがお約束ではあります。ということは...聴きたくないアーティストの演奏の
批判はできないってことになりますね...
引き続きチェリビダッケのブラームス:「ドイツ・レクィエム」とシューマン:交響曲第2番を聴きました。
どちらも全体の雰囲気はごくオーソドックスなもので非常に好感が持てます。想像よりもテンポ感は「よろし」です。
「ドイツ・レクィエム」は癒しの音楽というよりもかなり厳しい音楽となっています。これもよい意味で「期待はずれ」でした。
特にトロンボーンは相当激しい音色で奏でている箇所もあります。びっくりしました。普通はここまで要求しないでしょう。
こういう演奏に出会うと「聴いててよかった!」と思いますね。勉強になります。
今買おうか買うまいか、大いに迷っているのはリッカルド・シャイーのブルックナー:交響曲第6番です。
シャイーのブルックナー演奏は彼の年齢からは想像できないほどゆったりしたものです。興味津々なのですが、いかんせん
第6番なのはいただけません。曲が好きじゃないんです。
でも...もしかしたら「いい曲だ!」と思えるような演奏なのかも...はぁ。聴かなきゃダメかも。
(1999.6.16)
☆そりゃもう、チェリビダッケ!
またもや!チェリビダッケの正規盤(いちいちこういうふうにいわないといけないなんて情けないです、ほんと)のCDボックスが
発売されました。今度はEMIレーベルからミュンヘン・フィルとのベートーベンとブラームスの交響曲集です。
実はブラームスの「ドイツ語によるレクィエム(いわゆる「ドイツ・レクィエム」)」とシューマンの交響曲第2番も収録されています。
ベートーベンは「どうだか..」という感じの演奏が見受けられました。どうしても遅いテンポがもたれ気味というか...
現場(演奏会場)で聴くのならともかく、家で聴くのはつらいと思います。あくまでも代替の再現ですね。これぞまさしく...
そのかわり、7番・8番という快速系の曲は聴き応えたっぷりでいい感じでした。第9の終楽章のコラールはいままでに聴いたことが
ないような器楽・合唱のあつかいで非常に神秘的な雰囲気を醸し出していました。感動です。
ブラームスはおおむね好調です。遅いといえば遅いのですが、それが必然的だと感じられる音楽でした。お奨めです。
今回は録音年代が1979年から最晩年の1996年までと長期間にわたっているので、それぞれの年代ごとにテンポ感が大きく
異なっている点が非常に興味深いところです。1990年代はチェリビダッケ的テンポ感に必然性を感じない方には無理にお奨めできません。
それでもなお、決して聴くべき価値を失っていないと思えるのはさすが!といわざるをえないです。(やっぱり聴いてください!)
ドイツ・レクィエムとシューマンはもう少し待ってください。まだ聴いていないのです。
(1999.6.13)
☆西地区物語
念願のLDプレーヤーを手に入れたので、さっそくなにかソフトを、と思いアキハバラに向かいました。
世間ではDVDがそろそろ流行始めたというところなのでしょうか。それともLDのサイズが圧倒的に大きいせいでしょうか?
まだまだLDの方がタイトルが多いような気がしました。特にクラシック音楽は格段の違いがあります。
せっかくなのでオペラなんぞを(やっぱりワーグナー!?)買おうかと思いましたが、以外と欲しい物がなくてがっかり...
では映画?平成「ガメラ」は全部は観ていなかったっけ?うーん迷います。うだうだと石丸電気の主な売場を転々として結局
買ったのは...「ウエスト・サイド物語」でした。
「?(意外)」という向きもあるでしょうが、このミュージカル映画はかの大指揮者レナード・バーンスタインが作曲した不朽の名作です。
「トゥナイト」や「マリア」などおなじみのナンバーがそこかしこと流れ、すばらしいダンスは観る者の目を釘付けにします。
とはいうものの、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」を下敷きにしたといわれる内容はいかにもシリアスで当時(現在も?)の
アメリカが抱えていた社会問題・人種差別問題などを否応なく感じさせる作品です。当然ラストシーンは涙モノですが、ジェット団と
シャーク団の決闘を前にしたシーンでのそれぞれの登場人物の様々な思いが交錯する「5重唱」は一番のヤマ場といえるでしょう。
このLDはオリジナルフィルムから新たに作り直したというだけあって、想像をはるかに超えた美しい映像(画質)です。
色も鮮やかでとても40年!近く前(1961年)の作品とは思えません。音質もまあ、最善の出来でしょうか。(さすがに古いですが。)
いいことずくめな「ウエストサイド」なのですが、いかんせんうちのテレビが15年前の15インチなので映像が小さくて困ります。
70mmのスーパーパナビジョンとかいう横長な映像のためほとんど画面の真ん中半分しか絵がないのです!いつかは大きな画面で
観てみたくなるのが人情というものです。ついでにドルビー・デジタル音声で聴きたいものですね。
そういえば今タカラヅカで公演中なんですよね。これ...
(1999.6.6)
★彼方からの響き
おかげさまでベーム指揮「ニーベルンクの指環(リング)」をすべて聴くことができました。とてもいい演奏でした!
私は「この曲はいい曲だな〜」と思える演奏はいい演奏なのだと勝手に思っています。このベームの演奏もそうでした。
音色といい表現といい、最近の演奏にはない素朴でいて力強く、時には戦慄を覚えるほどの強奏で恐怖のドン底に
突き落とされ、やさしい笛の音に心を和ませられと、幸せな時間を過ごすことができました。なんといっても14枚目の
フィナーレで指環などすべてがライン河にのみこまれていくシーンとその後の静寂の場面は何度聴いてもジーンとなります。
自動車で通勤するときのお供には最適ですね。
今日は低音楽器大活躍の音楽ばかり紹介しますが、買ったばかりのギュンター・ヴァント指揮ベルリン・フィルの
ブルックナー「交響曲第9番」も低音の響きが特徴的です。
もともとブルックナーは低音楽器を好んで使っていますが、特に第7番〜第9番はワーグナーチューバと呼ばれるホルンの
低音域を拡張するために作られた楽器を使用しています。元々この楽器は「ニーベルンクの指環」で初めて用いられました。
というわけでなんとなくですが、独特の重厚な響きが全曲にわたって出現します。
ブルックナーにとってこの第9番は最後の曲(しかも完成できなかった)となりました。そのようなこともあり、どうしても
この曲に「別れ」の雰囲気を見いだしてしまいます。この深い響きはいわゆる「この世」とかけ離れた異質な感じを受けます。
ブルックナーといえば?「金管のコラール」といわれるぐらいですが、なんの!実は弦楽合奏がすごいのです!!
特に第3楽章は冒頭から弦ですよ。「これでもか!」とぐいぐい引っ張っていきます。そして半ば過ぎに突然天上から光が
差し込んできたかのような、これ以上ないほどに美しい弦のコラール!神秘的です。
ブルックナーはすべての音楽愛好家に至福を与えるでしょう。その長大さが気にならなければ...
(1999.5.23)
☆ニーベルンクの指環
ダクさんのおかげ(!)でコントラバストロンボーンの音が聴きたくなったのか?ついついワーグナの大作
「ニーベルンクの指環」のCDを買ってしまいました。(アキハバラにてまたかい!?)
とはいっても相手は14枚組!!の強敵です。でもフィリップスから出ているベーム/バイロイトのCDは
この不景気のさなか庶民の味方です。なんと!税抜8,120円也(輸入盤)。石丸電気で買いました。
総演奏時間は恐るべし、13時間39分12秒!!!ときたもんです。今から聴いても終わるのは明日の
お昼頃ですね...
やはりこの手の舞台芸術は絵(映像)がないとつらいと思います。まして歌詞はドイツ語だし。日本語字幕が
必要ですね。音だけで聴くのはやっぱり慣れていないと大変です。
とはいえ、「最近へヴィな音楽が足りないな!」とお感じのあなたには是非ともおススめしたい作品です。
なんて、ライトにススめていいのでしょうか?
(1999.5.4)
☆チェリビダッケの思い出
いつぞやの休日出勤の振替休日をやっと取ることができました。そこでさっそくアキハバラでCDを物色
(こればっか!?)してきました。平日とはいえ、午後のアキハバラは活気に満ちています。あまり休日には
いきたくないものですね。はぁ。
最近は「レコード芸術」を購入していないこともあり、新譜情報もよくわからない今日この頃ですが、
そんな中でセルジュ・チェリビダッケのロシア管弦楽作品集(ドイツグラモフォン)が発売されていました。
このシリーズは、レコード録音をほとんど残していないチェリビダッケの1970年代のシュトゥットガルト
放送交響楽団との演奏をCD化したものです。(いわゆる放送用ライブ録音です。)
前回のシリーズはブラームスの交響曲全集でしたが、晩年のチェリビダッケの演奏(じっくりと腰を据えた、
非常に遅い遅い演奏)からは想像もできない、生き生きとした推進力のある演奏でびっくり!感激の連続でした。
チェリビダッケといえば私にとって初めての海外オーケストラの演奏会体験となる1986年のミュンヘン・フィルハーモニー
管弦楽団との来日公演が心に残っています。初体験でこの組み合わせはマニアックすぎるとの意見がありますね...
そのときのプログラムは「ムソルグスキー/ラヴェル編曲:展覧会の絵」と「シューマン:交響曲第4番」でした。
当時の私にはシューマンはなじみがまったくなくてどんな演奏だったかは全然憶えていませんが、展覧会の絵は
1980年のロンドン交響楽団との来日公演のライブ録音を聴いていたとはいえ、そのひとつひとつの音を丁寧に
演奏していく独特の表現方法にクラクラしてしまったことを今でも鮮明に憶えています。
その後1990年に東京・渋谷のオーチャードホールでのブルックナー:交響曲第8番ではとんでもない凡演で
演奏時間100分のうち90分間寝てしまったのを反省しています。ホールが大きすぎたせいか、やたらと遅いばっかりで
全然生命感が感じられなかったのです。
そして1996年にとうとうチェリビダッケも亡くなってしまいましたが、放送用ライブ録音がCDとなって次々と発売されて
フトコロは寒くなりますが(...)確かに偉大だった指揮者の演奏の記録を聴くことができて非常にありがたい気持ちに
なりました。まずは聴いてみてから演奏の是非を語るべきなんですよね。(カラヤンについてもね...)
(1999.4.28)
トロンボーンをやっていると、やはりトロンボーンの演奏を聴きたくなります。
そこで手軽にCDを買って聴こうと思うのですが、以外とトロンボーンのCDは少ないようです。
同じ管楽器でもフルートとはまったく比べものにはなりません。(当たり前か)
このことについてはオーケストラにおけるトロンボーンの扱われ方をみると理解できます。
ソロ楽器とはいえないですから。もちろんオーケストラのトロンボーン奏者もすばらしいソロ奏者
なのですが。
そんな中で立派に(?!)ソロ活動だけをしている奏者がいます。その名はクリスチャン・リンドベリ!
(「リンドバーグ」という英語表記もOK)私も若い頃(20歳代そこそこ?)CDのタイトルや写真に
つられて購入し、ヴィバルディの「四季」の「冬」全曲を聴いた日には...気絶しそうでした。
ヴァイオリンパートをトロンボーンで吹ききっていましたから。その他に発売されたCDを買いまくって
「早く生演奏が聴きたいなぁ」と思ったものです。
いわゆる「編曲モノ」はややもすると「キワモノ」扱いとなってしまうことが多々ありますが、
それはともかく、「この楽器でこの曲?」というCDを発見したら即ゲット!!です。
ほとんどの場合、その演奏家が周到に準備して録音したものですから聴き応えがあります。
たとえそれがプロモーションのためであったとしても...
わたしはちょっと(かなり?)ひねくれ者なので、いかにもソロ向きでない楽器が華麗なソロを繰り広げて
いるのを聴くのが大好きです。ほとんど低音楽器になってしまいますが。
(1999.4.8)
☆今日も大漁?
最近仕事が忙しいせいもあって、日曜日は貴重な休息日のはずなのですが
それでもやはりなにかに取り憑かれるように都営交通のバス1日乗車券(たった500円!)
を手にして南東に向かうのでした。行き先は当然、「アキハバラ」!
4月を目前にしてアキハバラもヒートアップ。「新生活フェア」なんてふれこみで商いにはげんで
います。「電車でGO!2」のプロモーションでゲーム会社の社員とおぼしきいい大人が、
CMでおなじみのあの「電車で、電車でGO!GO!電車で、電車でGO!GO!」と踊っていた
のはなかなか注目を浴びていました。新幹線のかぶりもの付きですし。つらいッス、社会人。
で、今日はさすがに何も買うCDがないのではないかと思っていましたが、アキハバラには
そういうことはありえないのでした。
今日の成果
1.ベートーベン:交響曲全集 ジンマン/チューリヒ・トーンハレ(5枚組)
2.ブルックナー:交響曲第9番、第8番 ホーレンシュタイン/BBC交響楽団
ロンドン交響楽団(2枚組)
3.ディーリアス:管弦楽作品集 マッケラス/ウェルシュ・ナショナル・オペラ管弦楽団(2枚組)
4.チャイコフスキー:交響曲第5番 ゲルギエフ/ウィーン・フィル
まさに大漁旗!?です。
1.は5枚組なのですが、値札には「2900円」と書いてありました。多分そうなんだろうと思い、
レジに持っていくと「値下がりいたしましたので2680円でよろしいでしょうか?」とのお言葉。
「よくないわけないでしょ!」とニヤリ。ただいま話題騒然の逸品です。なんでも、既存の楽譜とは
ひと味違う新しい校訂版を用いた演奏らしいです。まぁ、この値段なら「買い」ですよね!
2.は1970年代のロンドン交響楽団のブルックナーが聴けるとあって楽しみなCDです。
トロンボーンのデニス・ウィックも当然現役でしょうし。
3.は私が大学生の時に初めて1番パートを吹いた記念の曲「ブリッグの定期市」が収録されている
CDです。SOLOはあるは、highDは出てくるはの難曲でした。
4.は去年のザルツブルグ音楽祭での衝撃の演奏のライブ録音です。ホットなロシア人!
ちなみに前回買ったCDのうちで最もおもしろかったのは「バリトンサクソフォーン」のクラシック名曲集です。
出だしから「これって?バリサク??」と思えるほど柔らかな音色にびっくり。こういう音が出るんですね。
音色ばかりでなく、表現も常に優美で「低音楽器なのに」という先入観を見事にぶち破ってくれます。
吹奏楽でバリトンサクソフォーンを吹いている方には特におすすめです。
次回は編曲モノの話でもしましょうか。
(1999.3.28)
☆今日買ったCD
ついにこういうネタを紹介することにしました!
日々膨大な(大ウソ)枚数のCDを購入していますが、全然リスト化していないという
暴挙に頭を痛めている今日この頃です。というわけでこの場を借りていかに自分が
豪快な買いっぷりなのかを検証(告白!)します。
今日の買い物
1.チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 ベーム/ロンドン交響楽団
2.ブルックナー:交響曲第5番 クナッパーツブッシュ/ウィーン・フィル
3.アルフレッド・リード「音の輪コンサート」第10回記念特別演奏会ライブ
4.「バリトンサクソフォーンによるクラシック曲」
5.「バスーン四重奏」
1.は以前から欲しかったものです。国内盤で1200円という廉価で発売されたので
思わず買ってしまいました。
2.は今私たちが聴く原典版とは大きく異なる改訂版による演奏ですが、超個性派指揮者
の音楽が冴えわたっているとの噂です。
3.はブラスバンド愛好家には涙モノの曲目が並んでいたので買いました。なぜか
「アルヴァマー序曲」(実はゲストで作曲者のジェームス・バーンズが指揮をしているのです!)
が収録されています...その他に世界初演の第6組曲とか、「アルメニアン・ダンス」全曲とか。
4.はあの!バリトンサクソフォーンによるクラシック名曲の演奏です。珍しいので。
5.は「トルコビック(チ?)」と「ダミアーノ」の名前を見つけたのでゲットしました。
この二人のファゴット名手の名を見て買わないわけにはいかないでしょう。(強気)
でもまだ1枚も聴いていないのです。
(1999.3.21)
☆名曲解説本のススメ
クラシックのCDといえば、同じ曲なのにいろいろな演奏があって、しかも毎月新譜が
加わってどんどんどんどん増殖して...いったいどのCDを聴けばいいんだか迷って
しまいます。しかもよほど大きなCDショップに行かない限り、試聴なんてできやしないですし、
値段もバラバラで...お金だって無限じゃないです。
そんなときになにかと役に立つのはいわゆる「名曲解説本」というものです。
私がおもに参考にしているのは、「レコード芸術」(クラシックCD評論の老舗雑誌)別冊で
「レコード芸術編名曲名盤300」と「同プラス200」です。
この本の特徴は、ある曲のCDに対してレコ芸の主要な解説者たちが10点満点で得点を付け、
その合計が高いものを紹介しているということでしょう。なんについてもいえるのですが、
人の好みは様々ですからできるだけいろいろな意見を聞いてみるのがまずは大切だと
思うのです...
こうしてCDを選んで聴いてみて「OK!」ならそういう傾向のCDを聴いていけばよいのですし、
「?!」ということになったら2度とそういう傾向のCDは買わないようにすればいいんです。
そうしていくうちに自分の好みの演奏がわかってくることでしょう。めでたし!中には「あれも
これも聴きたくなってしまった〜」という人もいることでしょう。
お金なくなりますよ...マジで。
(1999.3.13)
☆トロンボーン吹きにとってのベートーベン
ベートーベンは好きですか?何かの本で「自分の好きな曲の第1位がブラームスの
交響曲第1番になったらしい。」と書いてありました。
私にとってはブラームスもいいですが、それならばやはり先にベートーベンをお薦めします。
なんといってもシンプル!聴けばストレートにわかるのは鑑賞という点でよろしいと思います。
ブラームスは人をだましますからね。スコアを見ていないと変拍子を使っているのかと勘違い
しかねませんが(だまされる私が悪い?)ベートーベンはそんなことしませんから。
一般的にメジャーなベートーベンの交響曲といえば、3・5・6・7・9番ですね。異論はない
ところですが、これらはすべてどちらかというと規模が大きくて派手な曲です。まさに聴いていて
わかりやすいといったところですが、ぜひとも4・8番ははずさないで聴いてみてください。
テンポが速くてノリノリの音楽です。当時の人たちはさぞかし驚いたことでしょうね。
ところで、ベートーベンにトロンボーンってあったっけ?あるんです。5・6・9番に。
実はトロンボーン奏者にとってベートーベンは結構きつい曲です。やりがいもありますが...
というわけで鑑賞に入っているのでしょうかねぇ?
ぜひ全集を買ってみてください。(そ、そんなムチャな...)買ってからしばらく楽しめますよ。
ちょっと濃口ですが、ドイツグラモフォンのバーンスタイン:ウィーンフィルの演奏はわくわくどきどき
系でしかもお手ごろ価格で手に入るはずです。
(1999.3.5)
☆ラヴェルすごい!!
中学生のころから大好きな作曲家の一人としてラヴェルが挙げられます。
一度は演奏してみたいと思っていましたが、いずれもなかなかの難曲ぞろいで
これまでそのチャンスに巡り会うことはありませんでした。
ところが!なんと今度の演奏会でブルックナーとともに「ラ・ヴァルス」と
「古風なメヌエット」を演奏する機会に恵まれました!!(ラッキーぃ)
確か「ラ・ヴァルス」の2回目ぐらいの練習で、弦楽器だけでグリッサンド
(音階を連続的に変化させる奏法。トロンボーンも得意!)の部分を演奏した
ときに、なんともいえないその効果にゾクゾクしてしまいました。本番の演奏
ではめったに聴くことのできない部分ですから「こんなことまで!!」という
ような感動をおぼえました。(オーバー?)
ラヴェルのフルスコア(すべてのパートが載っている楽譜)を見るとこれまた
感動します。細密画のようです。だいぶ前にCDプレーヤーの広告で「ダフニス
とクロエ」の音符の数について書かれていましたが、本当に一見の価値あり、です。
そういえば、リヒャルト・シュトラウスの曲もスコアを見て感動したっけ。
(1999.2.28)
☆最近はブルックナーの5番か。
近々(といっても6月13日(日)ですが)自分にとっては2度目となる
ブルックナーの交響曲第5番の演奏があります。
「ブルックナー = 長くて同じような音の動きが〜」という認識は
確かにあります。初期の交響曲や未完の第9はさておき、8番なんて80分は
ザラですから。(98年に発売となったチェリビダッケの演奏は100分!ぐらい)
でも、そこをなんとか!!もう一声、で聴いてみてはいかがでしょうか。
特に5番は、ブルックナーとしては有名な第4番「ロマンティック」よりも
壮大で(この言葉クセモノですね...)金管楽器バリバリ(一応)のある種の
快感をともなう和音群(特にフィナーレ)が聴く人の「こころ」と「おなか」を
揺さぶることでしょう。
重戦車っぽい(?)演奏もいいですが、ノリノリテンポの演奏も対位法がかえって
強調されてカッコいいもんです。不思議ですね。
*ポイント*
1.眠くなることが考えられますので(!!)眠くないときに聴きましょう。
2.音量は大きめの方が雰囲気が出ます。でも近所にも配慮を。
3.もし生演奏を聴く機会があったら一通り事前に聴いておきましょう。
そうしないと同じようなメロディーばかりが聞こえてきてわけが分からなく
なってしまうカモ...
*おすすめの逸品*
1.ギュンター・ヴァント指揮/ベルリン・フィル(BMG)
(最新盤です。意外と流麗でよどみがなく、サウンド的にもイケています。
当たり前すぎ?)
*ぜひ聴いてみたい組み合わせ(架空)*
1.ドレスデン・シュターツカペレ(やっぱりここ!)で指揮者はイタリア人!!
(シノーポリはなぁ...シャイーにしとくれ。)
(1999.2.26)