『PRUNABLE WORLDS』 第一章「少年、幻想を嫌悪する」 |
そこは薄暗い袋小路となっており、そしてそこで大守が目にしたものは、大きく分けると三つであった。 ひとつは周囲に散乱している、元は植木や看板などであったと思われる破片や残骸の数々。 ひとつは、その周りで倒れている人影。数にして三人。三人が三人とも、黒ずくめのスーツに ──よかった、まだ生きている。 そして、視線を奥に向ける。 視線の先──袋小路の奥には残るもうひとつ、この黒ずくめの集団を倒した張本人と それは下半身にこそブラウンのトランクスのようなものを これは何かの冗談なのであろうか。特殊メイクを駆使した 多くのものはそれを「ばけもの」と答えたであろう。もしくは、少なくとも「なにもの」か、と しかし、大守の口からもれ出た言葉はそのいずれとも異なるものであった。 「《 《 「ほおう、《 目の前の異形が人の言葉を話したこと自体が驚きの事態のはずなのであるが、大守は動じなかった。それどころか、犬のような顔をした奴に犬呼ばわりされるのはどうなんだろうと思いながらも 「俺はこの人達と立場は違う。ただ── そう、だからこの異形が人の言葉を理解し、 「成る程──『事情』には通じているようだな。この【 独り納得するような素振りを見せながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。 「だがそこまで判っているのなら、何故この場にのこのこと現れた? この連中と同じような目に遭うとは想像もつかなかったのか?」 顎を 勿論、不用意に「奴ら」に近づくのは危険であることは判っている。だからこそ彼らは大守に「奴ら」と戦わせる義務を負わせようとはしなかった。そして、大守に代わり彼らが戦いを挑んだが、結果この異形の前に破れ、倒れ臥している。 普通に考えれば、一介の学生がこの状況で、明らかに悪意をもって近づくこの異形の存在に対し抗う術を持っていることなどまずありえる話ではない。だが──大守に限っては違っていた。 ──でも、俺の「力」は果たしてこいつに通じるのか。 通用するかどうかは判らない。だが、大守にはこの異形に対抗できる可能性のある「力」を持っている。 ──でも、俺はこの場に来てしまった。そして、今この場で戦えるのは俺だけ。 ──四の五の言っている場合じゃない。やるしかないんだ。 狗頭の異形は、半ば見下したような視線を向けながらにじり寄ってくる。 大守は左腕を異形に向けて差し出し── 一度大きく息を吸い込んで、声を発した。 「────《 その叫びとともに、大守の拳から輝線が放たれた。 |
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