天才に捧げる応援歌
「洋平……」
手を伸ばすと、ちょうど花道の腰の位置。目の前が花道の胸だ。正確な数字は知らねえが、そろそろ百九十くらいになるんかな。オレだってそう小さい方じゃねえのに、お前と並ぶとまるで大人と子供だよ。胸を撫で回しながらオレがそんな事を考えていると、耐え切れなくなったのか、花道がオレを抱きしめた。
「洋平、洋平」
そんなに力一杯抱きしめるなよ。骨が軋むくらいに抱きしめられて、かなり痛え。だけどそれよりも、腹にあたる花道のモノの方が気になってしかたがねえ。温度が高くて、しっとりと湿ってて、その上、お前動いてるだろ。くすぐったくてしょうがねえよ。
耐え切れず、オレは笑いだした。
「ハハハ……花道、やめろ。動かすな」
「あ……すまねえ」
あわてて離れた花道は、照れてまっ赤になってる。ほんと、おもしれえ奴。
「あわてなくてもちゃんと気持ち良くさせてやるって。来いよ」
オレは花道の手を引いて、さっき花道が敷いた布団に座りこんだ。これじゃまるでオレの方が誘ってるみてえだな。でも、なんだか乗ってきたのも事実だ。たぶん、花道があんまりウブだから、なんていうか、征服欲みたいなものが芽生えたのかもしんねえ。
相手の女が初めてだと男は妙に嬉しくて興奮しちまうもんらしいが、案外逆もあるのかもしんねえ。男の方が初めてのときの女の気持ちが判っちまうってのも、ちょっと異常だけどな。
花道もオレの隣にしゃがみ込んだ。オレの身体を興味ありげに眺めて、躊躇いがちに手を伸ばしてくる。
「洋平、触るぞ」
「ああ、好きなところに好きなだけ触れよ」
花道はまず、オレの身体を完全に横たえた。そして、ふだんの奴からは信じられないほどやさしくオレの脇腹に触れてくる。くすぐったくて笑いだしそうになるのを懸命にこらえていると、奴の方も乗ってきたのか、大胆に内股に移動してきた。そして、そこに辿り着く。反射的にオレはびくっと震えた。感覚的には気持ちいいんだけど、花道だと思うと妙に気持ち悪いぞ。けんかでならした武骨な手が、予告なしにオレのそれを這いずりまわる。
「洋平、ちょっと足広げろ」
「いったい何なんだよ」
「もっとちゃんと見てえんだよ。電気つけるかな」
「……勝手にしろ」
花道は一度立ち上がって、明かりをつけてまた戻ってくる。今まで暗闇に慣らされていた目が眩しさを訴えた。逆光の花道の表情は良く見えない。
「へえ、こんな風になってるのか。人のだと思うとおもしれえな」
「あとでお前のも見せろよ」
「おお、見せてやる。いつも上からしか見てねえからな、けっこうおもしれえぞ。……ほお、なるほどな。タマの裏はこうなっていたのか。十五年もつきあってきて初めて知ったぜ」
人のタマを持ち上げたり動かしたり、ほとんど遊んでるなこいつ。オレの方はそのたんびにくすぐったくてのたうち回りたくなってる。やがて花道はオレの一番感じるところを握って、意地悪そうにいった。
「あとでお前もやれよ」
そう言ったとたん、花道はオレのそいつをぺろっと舐めたんだ。
ゲッ! それをオレにやれってか?
一回だけ舐められたそこは、妙にすずしいっていうか冷てえていうか、花道の鼻息が当たって変な感じだ。オレの反応を見るように一度だけ顔を上げて、もう一回舌を伸ばす。今度はもっと大胆に、そのもの自体を口に含んでいた。口の中の生暖かさと、舌のざらざらした感じが、今まで感じたことのない気持ち良さをオレにもたらした。
オレのムスコは超特急で形を変えた。そのため軽い貧血状態に陥って、一瞬意識を失いそうになる。踏み止まって花道を見ると、奴はおもしろそうにオレを舐め続けていた。そうだ。こいつは昔っから、初めてのことは何でもおもしろがった。こいつにとってはSEXもガキのいたずらと同じレベルなのかもしんねえ。
ふいに、奴は立ち上がって押し入れを開けた。中をごそごそと探ってる。不思議に思いながらもオレはさっき舐められてた自分のそいつを見る。ち……ちょっと、でかくねえか? オレが見なれたサイズよりも一回りでけえ。
「花道、何やってんだよ」
「たしかここにあったと思ったんだ。……おう、あった」
「何がだよ」
花道は答えず、手にしたものを後に隠して持ってきた。そして、再びオレの前に座るとニンマリ笑った。よからぬことを考えてる顔だ。
「洋平、ちょっと目をつぶってなさい」
「また変なこと考えついたんじゃねえだろうな」
「ぜんぜん変なことじゃねえよ。オレを信じなさい」
不安だ。花道に信じろと言われてろくなことになったためしがねえ。
「痛いことじゃねえだろうな」
「ぜんぜん痛くない」
「……判った」
素直にオレは目を閉じる。それを確認して、花道は手に持っていたものを取り出してなんかこそこそやる気配。やがてオレのモノに何やらひんやりした感触があった。薄目を開けてみると、こともあろうに花道はオレのモノにメジャーを当ててやがったんだ!
「だあーっ! 何サイズ計ってやがんだ、てめえ!」
「動くなよ。ふむふむ、長さは十三センチ五ミリか。周囲は……」
「計るんじゃねーよ!」
何考えてんだ。ふつう計るかよ。これじゃほんとにガキのいたずらだ。こいつにムードとかを期待出来ねー事くらいは判ってたけど、ここまでとは実際オレにも想像つかなかったぜ。
「周囲九センチ近くあるぞ。お前のけっこうでかいな」
「知らねえよ。標準じゃねえのか?」
「そうかな……」
「花道のも計らせろ」
「オレのはいいんだ」
「何でだよ」
花道は下を向いて口ごもっちまった。はっはーん、こいつ、さては自分のサイズ知ってやがるな。
「いつ計ったんだ?」
「う……」
「なあ、いくつだった?」
「うう……」
「教えろよ」
「んんん……」
「花道」
「いいんだよ、オレのは。それより続きやるぞ。さっさと寝やがれ」
あとで絶対計ってやるからな。ったく、つまんねえ事するから墓穴掘る破目になるんだよ。
少し萎え始めていたオレの部分は、花道に舐められてまた勢いを取り戻した。花道も男だから、どうすればおれがイイのか判る。やってるうちに花道が上達するのか、それともオレの方がより感じやすくなってるのか、どんどんオレの気分が高まってくる。花道は特別なことは何もしなかった。ただ舐めてるだけだ。それなのにオレの身体は徐々に馴らされて、刺激が神経を伝わって全身を駆け巡った。花道の舌の動きにあわせて身体中の筋肉が踊り出す。吐息がもれそうになって、オレはそれを噛み殺した。
「我慢すんなよ、洋平。気持ちいいんだったら声くらい出せ」
「うる、せえ……」
「ごたごた言ってるとやめるぞ」
今やめられるのだけは困る。こんな中途半端でやめられたら、欲求不満が残って大変なことになっちまう。花道のずいぶん上達したらしい舌の動きで、オレの身体はまた快楽におぼれそうになる。一声漏らしちまって、それを皮切りにオレは自分の声を止めることが出来なくなっていた。
「アウッ! ……ハァッ、ハッ……」
「いいか? 洋平。気持ちいいか?」
「アアッ……はなみ……」
今やめられるのだけは困る。こんな中途半端でやめられたら、欲求不満が残って大変なことになっちまう。花道のずいぶん上達したらしい舌の動きで、オレの身体はまた快楽におぼれそうになる。一声漏らしちまって、それを皮切りにオレは自分の声を止めることが出来なくなっていた。
「アウッ! ……ハァッ、ハッ……」
「いいか? 洋平。気持ちいいか?」
「アアッ……はなみ……」
もうダメだ花道。早いとかばかにされっかも知れねえけど、これ以上はどうにも出来ねえ。息を止めて、オレは最後の瞬間を迎えた。ちょうど花道がくわえてるとき。
「ごめん……!」
こっちを振り返った花道は、舌なめずりしながらにやっと笑った。
「まじい」
「飲んじまったのか? 吐けよ」
「死にやしねえよ。それよかお前、感じてるときの顔いいな。見ろよ」
花道に言われて見ると、こいつもビンビンに勃ってやがる。花道がけろっとしてるから、こっちの方が恥ずかしくなっちまう。
「何か洋平がほんとにオレのもんになった気がする。嬉しくてしょうがねえ」
「花道のもんになった覚えねえぞ」
言い返してみたが、何かオレも疲れちまっていまいち迫力に欠ける。何かすげえ脱力感。人にやられるとこんなに疲れるもんなんかな。ただ寝てただけだってのに。
「お前、疲れたのか?」
「ちょっとな」
「じゃ、休憩な。茶でも飲むか?」
花道に言われて気付く。喉がカラカラに渇いてることに。ビンビンの一物ぶらさげたまま、花道は台所へお湯を沸かしに行った。その後姿を目で追いながら思う。何か、逆だよな。オレの方が花道の欲求不満解消の相手のつもりだったのに。
そう言えばオレ、ここんとこ自分で抜いてなかったな。だから反応早かったのか。花道はどうだろ。あんまり長えとこっちがくたばっちまうぞ。
「花道。お前いつ抜いた?」
「洋平、そういうのプライバシーとかいわねえか?」
たしかにそうだな。
「わりい。聞き流してくれ」
オレらしからぬことを言っちまった。何だろ。何か、恐くなってきちまった。初めてん時は誰だって痛え。だけど、どんくらい痛えんだろ。初めてけんかで花道に負けたときと、どっちが痛えだろ。
「洋平?」
思いがけず近くで声がして、オレはどきっとして顔を上げた。目の前に心配そうに湯飲みを差し出す花道がいる。ちょっとの時間トリップしてたらしい。
「ああ、サンキュ」
「三日前……」
花道の言葉には続きがあるのだと思って、しばらく待った。だが、どうやらそれで終わりなのだと判ったとき、オレははたと気付いた。ひょっとしてこれ、さっきのオレの質問の答えか? いつ抜いたかって言う、プライバシーの質問の。
そうか。お前けっこう心配してんだ。オレがあのまんま黙っちまったから。
三日前じゃしょうがねえな。オレが相手してやらねえ事には収まりつかねえだろ。
「花道、お前、男とやったことあるか?」
「あるかよ。女とだってねえのに」
お前、女より先に男経験しようとしてるんだぜ。そんな矛盾する事言うなよ。
「オレもねえ。どうやればいいのか判るか?」
「穴に突込みゃいいんだろ?」
簡単に言うなよな。ったく、聞いといて良かったぜ。
「あのなあ、穴ってのはな、その名の通り門なんだよ。普通のときはナニが出てこねえようにぎゅっと閉まってるんだ。そこをむりやりこじあけたりしたら痛えだろ? 便秘の後とかやたら痛え思いしたこととかねえ?」
「判んねえ。オレ快便だから」
「……つまりな、最初に門を広げてやらねえとダメなんだよ。それに、少し濡らして滑りをよくしておかねえとうまく入らねえ。女なら自分で濡れるけど、男はそういう器用な芸当は出来ねえんだ。理屈は判るよな」
「けっこう不便だな」
「たりめえだろ? てめえが男とやりてえって言ったんじゃねえか。要するに、男とやるってのはそれだけ不自然だって事なんだよ」
「そうか」
判ったのか判ってねえのか、花道はしばらく考え込んでいた。やがて思いついたように顔を上げると、湯飲みを置いてオレを押し倒した。
「ち、ちょっと待て! 茶がこぼれる」
「忘れねえうちにやるぞ。早く湯飲みよこせ」
「飲んじまうから待ってろ」
お前が忘れたらオレがまた教えてやるよ。何をそんなに焦ってるんだ。オレが花道に茶碗を渡すと、ちゃぶ台に叩きつけるように置いて、オレをうつぶせに転がした。
「どっちの方がいいんだ? 仰向けとうつぶせと」
「さあな。やってみて決めろ」
「横って手もあるな」
花道はオレの足を広げたり身体を横にしたりして思案していた。どうでもいいけど情けねえ格好だ。こんなところ高宮達には絶対見せられねえな。
「たぶんウンチングスタイルに一番近い方がいいな。洋平、よつんばいになれ」
もうどうにでもしてくれ。言って判るような奴じゃねえ。
オレが花道が言ったとおりの体勢になると、花道は人差指を舐めて、ゆっくりとオレに入ってきた。
うわ……
気持ち悪いのか気持ちいいのか判らねえ。入ってきた瞬間、オレの身体におぞけが来た。花道が指先を微妙に動かしながら侵入してくる。腹に虫がいるとこんな感じなのかもしれねえ。
「洋平、もっと力抜け」
どこにどう力が入ってるかも判らねえのに、どう力を抜いていいのかなんて判るかよ。花道が指を深く入れてくるたびに力が入る気がする。オレの身体が反射的に異物の侵入を阻もうとしてるんだ。
「花道、いっかい抜け」
「おお」
指が抜けた瞬間、オレは崩れ落ちていた。スッキリして、今が一番気持ちいいぜ。痛くはねえが気持ち悪いのは事実だ。これで花道のが入ったらどうなるんだ。
「洋平、大丈夫か?」
「死んだ」
「痛かったか?」
「……いや。ただ、すぐには慣れそうもねえな。時間かかるの覚悟してくれ」
「やり方、これでいいか?」
「ああ。もう少し濡らしてくれると助かる」
二度目のチャレンジ。今度はもっとたっぷり濡らして入ってくる。一度やって慣れたのか、二度目はそれほど異物感はなかった。ただ、指先を動かされるとどうしても力が入っちまう。背筋に悪寒が走るみてえだ。
「花道、指先動かさねえで、入れたり出したりだけしてみろ」
「こうか?」
ああ、やっぱこの方がいいな。気持ちいいような気もしてくるから不思議だ。
「ほんとだ。締まらねえ」
「大丈夫そうだな。つぎ、指替えてみろ。中指」
中指の方が太さも長さもあるはずだ。花道が唾液で湿らせて徐々に入ってくると、たぶんそんなに差がある訳じゃねえだろうにずいぶん太くなった気がする。だけどそれも最初だけで、動かしてるうちにずいぶん楽になってきた。楽になってきただけじゃなくて……
明らかに、気持ち良くなりつつあるんだ。さっき花道にしてもらったときみてえなすごい快感とはぜんぜん違うんだけど、何か、もっとしてもらいたいっていうような、静かな気持ち良さ。例えて言うなら、誰かにやさしく髪を撫でられてるときみたいな、そんなレベルの心地良さだ。ずっとこのままでもいいと思えるような。
ま、そういう訳にもいかねえな。ここには性欲の塊もいることだし。
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