第2話 別荘にて
その日一日、オレとしちゃ結構忙しかった。全ては逸実の計画通り。穴は全部塞がってる筈だ。
七時半、親父様の書斎に集まったのは、オレと親父と逸実の三人、それと、年かさの刑事が一人だった。もう一人はたぶん、十分後に現われるのだろう。
つぎの日、オレ達は朝早くに家を出た。親父に駅まで送ってもらい、そこから約一時間、叔母の家の最寄り駅へ行って、叔母にワゴン車と地図、そして、二週間分の食料をもらった。それで一路G県K町の別荘へ。言っとくが、十七のオレが持ってるのはバイクの免許であって、車の免許じゃないんだぜ。逸実に言うと、
ここんとこ暫く、オレは逸実と打ち合いをしていなかったことに気がついた。学校ではオレも逸実も指導者の立場でいることが多いし、道場では練習相手が豊富だから、わざわざ逸実とやることもないのだ。逸実も強いけど、やっぱりオレの方が強かったし、二人とも段をとる方に夢中だったって事もある。だからオレは久しぶりに逸実とやって、結構驚いたんだ。
別荘には毎日、速達が届く。これはオレが考案した方法で、一度関係ない郵便局を通過させて送るから、オレ逹がどのへんにひそんでいるか、表面上はまったく判らないようになっているのだ。方法は簡単。二重封筒にしておいて、表の封筒は郵便局宛にしておく。封筒をあけるともう一つの封筒と小さな紙片が入っている。そこには、『消印を集めています。満月印を押して送り返してください』って書いてある。宛先はオレ達の別荘ってわけだ。逆をやれば、オレ達も家に郵便が送れる。郵便局はたくさんあるから、足がつく心配はまずないって事だよな。欠点のタイムラグは速達で補うから、少なくとも二日後には、オレ達は情報を手にいれることが出来るようになるんだ。
朝親父様に、七時に帰るように言った。重要な話があるからって。親父はけげんそうな顔をしながらも、判ったと一言だけ言った。どうも、オレが朝っぱらから新聞なんぞをコピーしているのを見て、親父なりに考えるところがあったのだろう。
洗い替えの道着を持って逸実と学校に向かった。部活の途中で抜け出し、職員室で電話を借りる。そこで警察に連絡。人徳だとオレは思うのだけど、警察でもオレの話は重要視され、オレは初めて、刑事を自宅に呼び出すという快挙をやってのけたのだった。約束の時間は夜七時半。出来るだけ目立たないように、二人の刑事には時間を十分ずらして入るように指示した。インターフォンにも個人名を名乗るようにと。
昼飯を食べてからオレと逸実は道場へ。オレ達の冬休みの日課そのものに行動し、絶対に怪しまれないようにとの配慮。石橋をたたき割りそうなほどの慎重さだ。
そしていよいよ、夜がやってくる。
「初めまして。県警の森村と申します。このたびは警察の捜査にご協力をいただきまして、ありがとうございます。あと一人山崎という刑事が参りますので、宜しくお願いします」
猫背のおっさんの挨拶はそのくらいにして、さっさと本題に移らせてもらいましょうか。
「…ってのが今までの経緯です。例の品物はJRのロッカーの……逸実、何番だっけ」
「千二百四十六番」
「そこに入れました。たぶん六時四十分ごろ。同じロッカーの千百五十番にはオレ達の道着とオレの生徒手帳が入ってます。二つの鍵はゴムでひとまとめにして駅ビルのトイレに、ほれあの、ワープロとか置いてある売場の近くの紳士用トイレの、一番奥の個室のトイレットペーパーのなかに隠しました。以上です」
二人の刑事は真剣にメモをとりながら聞いていた。オレが話しおわると、年かさの方の猫背刑事が言った。
「じゃあ簡単に復習するよ。まず君達が道場を出たのが六時二十五分ごろ。現場を通りかかったのが三十五分ごろで、被害者から品物を受け取った。そして走って現場をあとにして、四十分ごろにロッカーに品物を隠した。そのあと道着と生徒手帳を別のロッカーに入れて鍵を駅ビルのトイレのなかに隠した。その間は十分ぐらいかな」
「そのくらいです」
「まっすぐに駅に入り、切符を買って、五十八分の下り電車に乗った。間違いないかね」
「大丈夫です」
逸実はオレの隣で黙り込んでいた。親父も、オレを叱るでもなく、ただ腕を組んでソファに腰かけていた。オレは結構、居心地の悪いものを感じていた。
「それで、品物がどんな物なのか、君達は見たかね」
「見てないです。触ったのも逸実だけで、それもせいぜい五分間。外側は白っぽい布で、少し血がついていたのを覚えています。逸実はビデオテープじゃないかって言ってますけど」
猫背は一つ溜息をついた。そして、オレに向き直って言った。
「これは重要なことだよ。君に聞くけど、なぜその場で警察に届けなかったんだね」
さて、ここからが正念場だ。オレ達にとってのね。
「だってオレ、死にたくなかったもん。既に二人死んでるしね」
案の定、二人の刑事は顔を見あわせた。この時オレは、オレ達二人の推理が間違っていないことを確信したんだ。
「二人っていうのは……?」
「あいつを殺した奴さ。そう考えないと辻褄があわないんだ。男が殺されたのは、あの品物を持ってたからだろ。だとしたら、刺した奴が品物を持たずに逃げる訳ないじゃないか。幸いと言っちゃ何だが、あそこで何があったのか、あの時点で気付いた奴はいないんだから、オレだったら、一度刺して死ななかったんだから、もう一度刺そうとするぜ。一度突き刺したナイフを抜いて、もう一度……。刺された男だって必死だっただろう。振り返ってナイフをもぎとって刺し返すぐらいやったんじゃないだろうか。相手が叫び声を上げたりしないように、喉かなんかを狙って」
オレが言葉を切ると、二人の刑事は歯切れの悪い感じで何かごそごそと言った。そしてやがて、意を決したかのように、猫背の刑事が言ったのだった。
「確かにあの場所には一人の人間では到底流し切れないような大量の血痕があった。血液型は全てA型だったがね。警察では秘密裏に、もう一人の被害者を追っていたのだが」
「ナイフもなかっただろう? 秘密がもれるのを恐れて、ナイフと死体を……もしかしたら生きてたかもしれないけど、持ってった奴がいるんだ。オレ達が通り過ぎてから、死体が発見されるまでの約二十分間の間に。オレ、あの男を追っかけてたのって、せいぜい三人くらいがいいところだと思う。だけど、チンピラなんかじゃなくて、もっと用心深い奴。もし直後に交番なんかに駆け込んで、マークされちまったらおしまいだと思ったんだ」
警察を抱き込んでる可能性。なんて言ったら怒るだろうな、とか思ったから、オレはそのことについては言わない事にした。
「良く判りました。どちらにしても、ご通報いただいて感謝しております。これからも伺うことがあるかもしれませんが、ご自宅の方でよろしいですか?」
その時親父は初めて口を開いた。
「親戚のところにやる予定です。冬休み一杯はそちらの方におりますので、連絡は私が」
「判りました。それでは私達はこれで」
立ち上がっていこうとする二人の背中に、オレは冷ややかに言った。
「おっさん、『倉橋理事長』だ。忘れるなよ」
「交通法規を知ってりゃ、オートマなんだし運転くらいできるだろう」
だって。確かにそうだけどさ。初めてって訳でもないし。
てなわけで、追っ手もなく、雪道でスリップすることもなく(恐かったけど)、とにかく無事にオレ達は到着することが出来た。
「逸実、起きろよ。着いたぜ」
そう、こいつは、オレが必死こいて運転しているときに、一人だけ寝ていたのだ。
「あ、一郎。着いたの? ごめん、ナビやらなくて」
「いいよ。ここなら前にも来たことあるし、それより早く荷物降ろしちまおうぜ」
もともと避暑地としての別荘だ。冬は格別に寒い。昔は毎年のようにクリスマスパーティーをやったって言ってたから、暖房くらいはあるだろうが、外が寒いことには変わりがない。今はまだ二時過ぎだからそれほどでもないが、夜のことを思うと、さっさと片付けちまった方が得策ってもんだ。
それにしても、広い別荘だ。昔立食パーティー形式で百人ぐらい収容したことがあるって、叔母さんは話していたけれど、本当はもっと入れるだろう。吹き抜けの広いホールと、部屋が三十個。叔母さんちの本宅の三倍はあるぜ。維持費だけで年間いくらかかってんだろ。
中に入ってすぐに暖房のスイッチを入れた。ここの暖房は全部屋共通で、ボイラー室のスイッチ一つで別荘中があったまっちまうのだ。オレ達二人のために全部の部屋をあっためるのは、はっきり言ってエネルギーのむだ遣いというものだが、そういうシステムだというのだから仕方がない。台所の貯蔵庫らしきところに食料品の全てをしまい込み、二階の隣合った部屋にオレ達の部屋を決めると、荷物をほどき始めた。そうこうしているうちに別荘内は暖かくなって、寒がりのオレが上着を脱げるほどになった。
荷物を片着けて隣の部屋へ行くと、逸実はベッドに寝転がって、天井を見つめていた。
「起きてるか、逸実」
「うん、起きてる」
逸実はえいやっと勢いをつけて、ベッドから飛び起きた。
「腹減ったん? だったら今なんか作るよ」
お前の作ったもんなんか食えるのか?
「おっと、その目は信用してないな。悪いけどあたしゃ、中学のころから主婦がわりだぜ。五年のキャリアを疑うのか?」
「あとでいい。まだ四時半だからな。それよりこれからどうするのか、話さないか」
「一つ、ノックをしないでお互いの部屋に入らない」
いけね。オレさっき、ノックしなかったぜ。――逸実ぃ、そうじゃないだろうが。
「悪かったよ。だけどもお前……」
「隠れ住むだけだろ。出歩かない、電話にもでない。あたしゃ運動不足になりそうで心配だよ」
お前、出来るだけおめでたい方向に話しを持ってこうとしてるだろ。不安とか全部、そんなかで忘れようとか思って……。もしお前がそうしたいんだったら、オレはそれでもかまわねぇけどよ。だけど逸実、現実ってのはやっぱ、オレ達の身近にしっかりとあるもんなんだぜ。そいつは、忘れないでくれよな。
「それじゃあ、ちっと打ち合いしてみるか」
オレ達は剣道っ子。竹刀も木刀もきっちり持ってきてるぜ。
「いいね。ダンスホールは十分な広さだ」
気が強くて、いざって時には誰よりも頼りになる奴。
オレ、信じてるからな。お前のこと。
まず最初に気付いたこと。逸実の奴、かなり腕が上がっていた。オレも逸実も身体は大きくないから、力押しでいくような剣道じゃなく、むしろテクニックをバシバシ使って攻めていくようなタイプの剣士だ。逸実のテクニック、かなり磨きがかかっていて、オレになかなか自分の剣道をさせてはくれなかった。勝つためにオレは、自分の剣道を捨てて、力押しで攻めるしかなくなってしまったのだ。
「とりゃぁーっ」
面を着けていない逸実に、オレは寸止めで一本。逸実は剣を下ろして笑った。
「やっぱりつえーよな、一郎。格が違う」
「そいつはほめすぎ。オレいつかお前に追い越されるような気がしてきた。ずいぶん強くなったな」
「目標なんだ」
ん? 何のことだ?
「目標って? 何が?」
「一郎」
ああ、それでか。どうりで打ち合ってる時の目付きが違うと思ったんだ。試合のときとも微妙に。でもそれなら、オレちょっと反則だな。女相手に力押しってのはなしだぜ。
「逸実、もう一戦やろうぜ」
「おう!」
もう一つ気付いたこと。お前って何か、オレの剣道に似てきたぜ。踏み込みに間の取り方。みんながオレと逸実の剣道が似てるって噂してたの、オレはただ、剣士としてのタイプが似てるんだと思ってた。違うんだな。お前ってば、こんなにオレのこと見てたんだ。
それにしても、逸実の奴、ちょっと目標が低すぎやしないか。
「ストップ! ちょっとたんま。休憩休憩」
「何だよ一郎。もうばてたのか」
「お前なぁ。オレは運転疲れしてんだよ。移動中寝てた奴と一緒にしないでくれ」
「ああ、そうか。そうだよな」
オレは息をついて階段に腰かけると、逸実もとなりに座って息をはあはあさせていた。こいつってば、本当に意地っぱりだ。ぶっ倒れそうなのは自分の方だろうが。
「お前とやってるとオレ、もっと強くなれそうな気がする」
逸実は何も言わず、意味不明って顔でオレに振り返った。
「オレの弱点バンバン突いてくるじゃんか。頭がいいんだよな、お前って。帰るころにはオレ、自分の弱いところ全部克服してるぜきっと」
「帰れりゃいいけどな」
そう言った逸実の顔、オレ暫く忘れられないだろう。本当に久しぶりに見た、逸実の弱気だった。
「帰るんだよ。オレがいない初試合なんて、白けちまってしょうがないだろうが」
「そうだよな。剣道部きってのダテ男だもんな、お前って。道場のアイドルが惚れちまうくらいなんだから」
逸実にそういう言い方されると、どうしても皮肉にしか聞こえないんだよな。
「お前はどうなんだよ」
「何が?」
「好きな奴とかいないのか」
逸実が、ちょっと驚いたようにオレを見て、それから視線を外して向こうを向いた。これはいつもの逸実の反応じゃない。いつも冗談言いあってたオレ達だ。こういう流れでの会話のパターンてのは、お互いに熟知してる。いつもだったら、つっぱらかった感じで『てめーにはかんけーねーよ』くらい言ってくる奴なんだ。
急にオレは、心臓がドキドキしてくるのを感じた。な、何だよこいつは。逸実だけじゃない。オレの反応も、こりゃ普通じゃねーよ。
そんなオレの気持ちを知ってか知らずか、逸実はぼそっと、言葉をつないだ。
「それが、良く判らない」
「判らないって?」
やっと、オレはその言葉をしぼりだした。
「気になる奴はいる。だけど、そいつを好きなのかどうかが判らない。嫌いじゃないことは確かだが、そいつに惚れてるのかって事になると、良く判らないんだ」
判らないのはこっちだ。逸実はいつもと違うし、オレだって……。判った。なにが違うのか。逸実の奴が、女に見える。
「誰なんだ、そいつは」
逸実は、ゆっくりとオレを振り返った。この表情は、良く判らない。
「一郎」
「え?」
「一郎、お前だよ」
オレの見ている前で、逸実は立ち上がって、竹刀をオレの肩に突きつけた。その表情は、いつもの逸実に戻っている。オレはただ呆然と、そんな逸実を見つめていた。
「なに困った顔してんだよ。お前が聞くから答えたんだろうが」
そいつはそうだ。いつもの顔に戻った逸実に、オレはたぶん安心したんだろう。オレはオレ自身の行動を理解することが出来た。オレがお前にそんなことを聞いたのは、気になったからだってこと。オレにとっても、お前は気になる奴だって事なんだ。
誰にも頼らない。誰にも弱みを見せたがらない。いつも意地を張って、全身全霊をかけて虚勢を張ってた奴。お前の弱みを見た奴ってのは、あとにも先にもオレだけなんだろうから。
オレの心臓はおさまっていた。少し睨むようにオレを見つめる逸実に、オレはちょっと、笑いかけた。
「オレにも気になる奴がいる。そいつは向かいの家に住んでて、幼なじみで気が強くて、負けず嫌いで頭のいい奴なんだ。そんで、今目の前に立ってオレを睨みつけてる」
今度は逸実が驚く番だ。オレは立ち上がって、今逸実がやったように、逸実の肩に竹刀を突きつけた。絶句していた逸実は、押し殺したような声で、オレの視線に真っ向から挑んでくる。
「そいつは戦線布告か」
あたらずとも遠からずって奴だな。オレは答えず、握りしめた竹刀にさらに力を加えた。
「受けて立ってやろうじゃんか」
そういうと、オレの竹刀を自分の竹刀で叩き落とし、そのままオレの脇を通って階段を上がっていった。
オレはおかしくなってしまった。お互いの気持ちを聞いただけなのに、オレと逸実の場合に限っては、なぜか戦線布告になっちまう。あいつもおかしいし、オレも相当おかしいぜ。オレに告白する女はたくさんいたが、戦線布告なら受けて立とうって言った女はあいつが初めてだ。相当に気が強い。頼もしいとも言える。そして、意地っぱりだ。
「でも、悪くない、な」
オレは暫く、声を立てずに笑っていた。これが、オレと逸実の長い戦いの始まりと知って。
今日ですでに五日が経過している。テレビの中は正月番組のオンパレード。そいつを見ながら菓子を食う逸実に、オレは手紙を運んでいった。
「あれ、また親父さんから?」
表面上、オレ達は前と少しも変わっていなかった。
「日付は三十一日の四時になってる。読んでやろうか?」
「うん」
手紙を開くとそこには、いつもの親父の筆跡と、新聞記事の切り抜きが二枚入っていた。
「前にも書いたとおり、例のビデオテープによって告発された人物の大部分は、警察によって事情聴取されている。しかし、行方の知れない倉橋理事長とその息子の二人は、未だに発見されず、警察の捜査は膠着しているとのことだ。お前達も十分に行動に注意するように。それから、どうやら佐川信一を殺したと見られる男が、東京湾で死体で発見された。血液型、刺し傷などが、現場の状況と一致することから、警察では犯人と断定したそうだ。新聞記事を送るが、その死体と今回の事件との関係は、秘密になっているとのこと。お前達も承知しておくように。それでは、風邪など引かんように気をつけてな。 父」
新聞記事にも、新しい事実は発見出来なかった。
「黒幕がまだ野放しなんだ。何か、予想より時間がかかりそうな気がするね、一郎」
「そうだな」
今までの五日間に判ったことを簡単に説明してみると、まず、例のビデオテープ、中身はかなり悲惨なものだったらしい。殺された男のいたM大の研究室での研究のビデオなのだが、映っていたのは何と、違法の臓器移植の映像だったのだ。倉橋理事長って人は、学校経営のほかにも、サラリーローンなんかもやっていて、そこで金を借りて返せなかった人に臓器の提供の話を持ちかけていた。借金のカタにね。そしてM大の研究室で、持病もちの金持ちに移植する。もちろん謝礼金たっぷり。ビデオのなかには移植を受けた人の名前も実名で入っていて、世間ではそりゃぁもう大変なパニック状態だった。もちろん、オレ達もびっくりだ。事件のことも、そして、その黒幕が好敵手倉橋の親父だって事も、その二人が未だ野放しだって事も。
その時、逸実が立ち上がってテレビを消した。
「飯作るよ。おなか減ったでしょ」
結局、飯と洗濯は逸実の仕事になったのだ。そのかわり、オレはこの広い館を一人で掃除している。
「メニューは?」
「海老ドリアとほうれん草のソテー。スープはメキシコ風。文句ある?」
「ありません」
飯を作る奴には頭が上がらんと言ったのは、うちの親父様。まさに、その通りだった。