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真空管ヘッドホンアンプ Char-rock web マニュアル

真空管を使用したヘッドホンアンプ"Cahr-rock"のwebマニュアルのページです。 組み立ての前に必ずこのページの最後まで読んで下さい。

Cahr-rockは秋葉原のアンディクス・オーディオさんAmazonにて税込9,900円で販売しています。

アンディクス・オーディオさんの店頭に試聴機を用意しましたので、お気軽にご試聴下さい。 試聴の際には必ずスタッフにお声をおかけ下さい。 また、普段お使いの再生機とヘッドホンを持参されることをお勧めします。 アンディクス・オーディオさんは日曜日が定休日ですのでご注意下さい。

2013/01/22頃より温度上昇を抑えるためリアパネルに空気取り入れ口を新設した新型のケースを同梱して出荷しています。従来型の市場在庫が無くなるまでの間は従来型と新型のケースが混在しますがご容赦下さい。


Fig.0 空気取り入れ口付き新型ケース

2013/02/28頃出荷分より、部品をTable 0の様に変更します。R3, R8は真空管とオペアンプの間にあるハイパスフィルターを構成する抵抗で、定数を小さくすることでオペアンプの動作が安定してノイズが減ります。ただし、小さくし過ぎると真空管の動作が不安定になったり、低音が遮断されたりする副作用もあります。ボリュームはローレットシャフトタイプにして組み立て時の手間を省きました。皿タッピングねじは黒でも導電性があることを確認したので4本とも黒にしました。

Table 0 部品の仕様変更
名称 番号 規格・仕様(変更前) 規格・仕様(変更後)
抵抗 R3, R8 470kΩ 220kΩ
ボリューム VR1 20kΩA×2 丸シャフト 50kΩA×2 ローレットシャフト
つまみ   イモネジ ローレット
皿タッピングねじ   黒×3本、シルバー×1本 黒×4本



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お知らせはblog @try_lab technologyをご確認下さい。

(2013-02-24 編集)

開発物語

手のひらサイズの真空管アンプを作ろう!
真空管アンプの音色は心地良いですが、大きくて高価なものが多くなかなか気軽には買えません。 せっかく作っても音が出なかったらどうしようかと不安になることもありますし、大きなアンプは置き場所に困ることもあります。 そこで、1万円程度で手のひらサイズの小さな真空管アンプがあればもっと多くの方に真空管アンプの良さを感じて頂けるのではないかと考えました。

小さくするために
通常の真空管ヘッドホンアンプは数万円しますから、1万円となると部品を半分以下に削減することになりますが、ノイズや音質などアンプとしての基本性能が満たされるように細心の注意を払いました。

電圧増幅に用いる真空管5840は小指サイズの小さな軍事用のサブミニチュア管で、スタジオ用のマイクアンプにも使われています。 小型、高音質、高信頼と三拍子が揃っているものの、アンプとしての作例が殆ど見つからず、独自に試作とテストを繰り返して、回路方式や定数を決定しました。

真空管アンプに使用される電源トランスや出力トランスは大きくてずっしり重く、手のひらサイズのアンプには使えません。 そこで代替品としてスイッチング電源とオペアンプを使用することにしました。

ノイズ対策もしっかり
いくつものスイッチング電源を試聴テストしてノイズが少ないものを選定しました。 また、スイッチング電源が発生するノーマルモードのノイズを遮断するためにEMI (Electro Magnetic Interference : 電磁妨害)フィルターを搭載しました。 さらに、コモンモードのノイズをバーチャル・グランドに逃がす回路方式を採用しています。 これら三つの電源ノイズ対策によって、小型ながらもクリアーなサウンドを実現しました。

また電力増幅に用いるオペアンプは大手オーディオメーカーのアンプにも採用されているオーディオ用の選別品で高出力電流タイプを選定しました。 これにより、シンプルな回路でも大音量での音割れを抑制することが出来ました。

音声経路にあるハイパスフィルターの設置箇所や定数を吟味することで部品点数を増やすこと無くポップノイズを軽減しました。

専用ケースで組み立て簡単!
ケースを設計して加工するのは経験と道具がなければ難しいで、基板だけのキットだとケース加工でつまづいてしまい完成できない人もいるようです。 そこで、Char-rockは特注の専用ケースを用意しました。 初心者の方でも半日あれば完成させられる難易度を目指しました。


Fig.1 Char-rockの基板


注意事項

半田ごてのこて先は300℃以上になり、触れると火傷をするので十分に注意して作業を進めて下さい。 万が一、火傷をした場合は、流水や氷で十分に冷やして下さい。

半田から出る煙は有害物質が含まれているので必ず換気をして下さい。 また、卓上に小さい扇風機を置いて、煙を直接吸い込まないようにして下さい。

真空管はガラス製品なので衝撃を加えると割れます。 通電中は発熱するので絶対に触れないで下さい。

本キットの製作にはテスターが必要になります。

アダプタやケースが触れられないほど発熱していたら、すぐにコンセントからACアダプタを外して下さい。


必要な工具類

Char-rockの製作に使用する工具など ←こちらを開いて下さい。

部品リスト

キットを開封したら、最初に必要な部品が入っていることを確認して下さい。 抵抗やコンデンサは近似値のものが入っていることもあります。 ボリュームにはワッシャーとナットが付属しないこともあります。

                                                       
Table 1 キット内容物
名称 番号 規格 仕様 数量 備考
抵抗 R1, R6 1/6W以上 カーボン 1MΩ 2本 茶・黒・緑・金
R2, R7 100Ω 2本 茶・黒・茶・金
R3, R8 470kΩ 2本 黄・紫・黄・金
R4, R9 22Ω 2本 赤・赤・黒・金
R10 1/4W以上 カーボン 1kΩ 1本 茶・黒・赤・金
ジャンパ JP1     1本 1/4W抵抗の脚を再利用
ボリューム VR1   20kΩA×2 1個  
つまみ     1個  
半固定抵抗 VR2, VR3 多回転トリマポテンショ 1MΩ 2個 プレート抵抗
コンデンサ C1, C3 積層フイルム 50V 0.1uF 2個 水色 104(大きい方)
C2, C4 50V 0.047uF 2個 水色 473
C5, C6 電解 10V以上 470uF 2個 黒・白帯
C7, C8 積層セラミック 50V 0.1uF 2個 水色 104(小さい方)
C9 三端子コンデンサ   1個 茶色
C10 電解 16V 470uF 1個 黒・白帯
LED LED1 Φ3 黄色 1個  
オペアンプ U1 デュアルオペアンプ DIP 8PIN 1個  
ICソケット 平ピンICソケット 1個  
ステレオミニジャック J1, J2     2個 音声入出力
DCジャック J3     1個  
トグルスイッチ SW1     1個 電源スイッチ
ナット M3 GV M3   1個  
バインドねじ M3×5〜12   1本  
皿タッピングねじ   M3×12 3本  
  シルバー 1本 リアパネルに使用
ゴム足       4個  
ケース       1個  
真空管 TUBE1, 2 五極管 5840 2本  
基板       1個  
ACアダプタ   スイッチング式 12V 1A以上 1個  
マニュアル       1部  

部品は仕入れの事情により予告なく変更になることがあります。

上記の表とキット付属のマニュアルにある表「キット内容物」が異なる場合はキット付属のマニュアルを優先して下さい。

基板 Ver.1.3 パターン修正

基板 Ver.1.3はパターンに設計上のミスがあり、音声入力部で左右の信号が入れ替わっていますので、修正する必要があります。

Fig.1.1に示した黒い線に沿って基板のパターンをカットします。 銅箔の厚さは35μmと薄いので、カッターナイフやPカッターで切断できます。 パターンカットしたら音声入力とボリュームが導通しないことをテスターで確認して下さい。

Fig.1.1で青く塗りつぶした部分は半田ごてで加熱しながらマイナスの精密ドライバーで緑色のソルダーレジストを剥がして銅箔をむき出しにして下さい。 ソルダーレジストはエポキシ樹脂なので、加熱することで剥がしやすくなります。 銅箔がむき出しになったら半田を盛って、予備半田として下さい。


Fig.1.1 パターンカットとソルダーレジストを剥がす場所など

ステレオミニジャックを半田付けした後、Fig.1.2の様に抵抗の脚を再利用たジャンパーを接続して下さい。


Fig.1.2 ジャンパーの接続

現在販売している基板はVer.1.4で上記のミスが修正されており、パターンを修正する必要はありません。


抵抗、抵抗の脚の半田付け

基板上の半田付けは背の低い部品から順番にするとスムースに作業ができます。 ここでは、抵抗→抵抗の脚→コンデンサ→ジャック類→ICソケット→ポテンショ→ボリューム→LED→スイッチ→真空管の順番で半田付けをします。

一番最初に抵抗を差し込み、基板の部品面(表)から半田付けします。 部品面の半田付けができたら半田面(裏)の状態を確認して、半田が不足している所は半田面から再度半田付けをして下さい。

抵抗以外の部品もできるだけ部品面から半田付けをすると作業がスムースにできます。

お使いのテスターの先端がワニ口クリップやテストクリップの場合、ジャンパ JP1とR2, R7(100Ω)は基板から3mm程度浮かした状態で半田付をして下さい。 こうすると後のプレート電圧の調整がしやすくなります。

ジャンパ JP1は1/4W抵抗の脚を再利用して下さい。


Fig.2 抵抗を半田付けしたところ

ケースと基板のGNDを導通させるために、基板の裏側左端にある銀色の帯の前側に1/6W抵抗の脚を再利用して半田付けします。
抵抗の脚を10mm程度基板に乗せて半田付けした後、はみ出した部分を切断して下さい。 このとき、抵抗の脚はとても熱くなるので必ずピンセットで保持して下さい。


Fig.3 抵抗の脚を半田付けしたところ


コンデンサの半田付け

積層セラミックコンデンサ→三端子コンデンサ→積層フィルムコン→電解コンデンサの順番で半田付けをして下さい。

電解コンデンサには極性があります。電解コンデンサの白い帯とシルク印刷の白縞の方向を合わせて下さい。


Fig.4 コンデンサを半田付けしたところ


ジャック類、ICソケットの半田付け

ステレオミニジャックとDCジャックは全ての脚を半田付けした後では方向、位置の微調整が困難になります。 1箇所を半田付けした状態で方向、位置を微調整した後に他の脚も完全に半田付けして下さい。

オペアンプ U1はシルク印刷の丸印とICソケットの凹みの方向を合わせて半田付けして下さい。


Fig.5 ジャック類、ICソケットを半田付けしたところ


ポテンショ、ボリュームの半田付け

ポテンショには方向があります。ポテンショの調整ねじとシルク印刷の丸印の方向を合わせて下さい。 ポテンショを半田付けしたら調整ねじを反時計回りに回しきっておいて下さい。

ボリュームは熱に弱く加熱時間が長いと壊れることがあります。短時間で半田付けして下さい。

ボリュームのFG端子は熱容量が大きいので30W程度の半田ごてでは半田付けできません。 70W以上の半田ごてを使用して下さい。 高出力の半田ごてがなければ、無理に半田付けをせず、そのままにして下さい。


Fig.6 ポテンショ、ボリュームを半田付けしたところ


LED、スイッチの半田付け

作業性を考慮して、LED → スイッチの順番で半田付けをして下さい。

LEDには方向があります。脚が長い方(アノード)を+、短い方(カソード)を−に接続して下さい。 脚を付け根から5mmの所で90度に折り曲げて、LEDの中心の高さが5mmになるように半田付けして下さい。 基板にフロントパネルを仮止めしてLEDを取り付けると位置決めがしやすいです。


Fig.7 LED、スイッチを半田付けしたところ


真空管の半田付け

真空管の熱が基板に伝わりにくいようにするため、真空管は基板から2mmくらい浮かせた状態で半田付けをして下さい。

真空管を斜めに半田付けするとケースに入らないこともあるので基板に対して垂直になるよう気を付けて下さい。 最初にTUBE1は8時方向のKの脚を、TUBE2は5時方向のG1の脚を部品面から1本だけ半田付けして真空管の高さと角度を調整した後に他の脚を半田付けして下さい。


Fig.8 真空管の半田付けをしたところ(上面)


Fig.9 真空管の半田付けをしたところ(鳥瞰)


ねじとオペアンプの取付

ボリューム VR1 のすぐ後ろにある M3 VG に、半田面からM3ねじを通して部品面からM3ナットを取り付けて下さい。

ICソケットの切欠きとオペアンプの丸印を合わせて下さい。


Fig.10 ねじとオペアンプを取り付けたところ


電源投入、電圧の確認、プレート電圧の調整

電源投入

基板と金属が接触するとショートする恐れがあります。 電源投入する前に基板上のゴミを取り除いて下さい。 また、基板の下にはボロ布など絶縁体を敷いて下さい。

ACアダプタを接続し、電源スイッチを上にあげてONにするとLEDが点灯します。 しばらく待つとヒーターがオレンジ色になります。 このとき、異臭が発生していないことを確認して下さい。 もし、異臭が発生したり、ACアダプタやケースが触れられないほど発熱していたら、すぐにコンセントからACアダプタを外して下さい。

電圧の確認 その1

Table 2の順番に従って、主要部分の電圧をテスターで計測して下さい。 計測する場所はFig. 11を参考にして下さい。

テスターのマイナス・プローブ(黒)はジャンパー "JP1 DC 0V" に接触させて下さい。

Table 2 主要部分の電圧の目安
順番 名称 シルク印刷 電圧 [V]
電源電圧 C9 12±0.4
中点電圧 M3 VG 6±0.2
プレート電圧 1 P1 9±0.2
プレート電圧 2 P2
グリッド電圧 1 G1_1 -0.6±0.2
グリッド電圧 2 G1_2

プレート電圧の調整方法:多回転トリマポテンショ(VR2, VR3)の調整ネジを時計回りに回すとプレート電圧(P1, P2)が高くなります。

注意:通電直後は真空管が本来の性能を発揮できず、調整ネジを回しきってもプレート電圧が9Vより大きいこともあります。 その時は、通電したまま30分から1時間程度待った後に再調整して下さい。 さらに、50時間ほど通電するとプレート電圧が下がるので調整が必要になります。 その際も通電直後ではなく30分ほど待ってから調整して下さい。


Fig.11 電圧計測箇所


電圧の確認 その2 (出力電圧)

出力電圧を測定するときはボリュームを最小(反時計回りに回しきる)にして、テスターのマイナス・プローブ(黒)はM3ねじ "M3 VG" に接触させて下さい。

Table 3 出力電圧の目安
順番 名称 シルク印刷 電圧 [mV]
出力電圧 1 R4 0±25
出力電圧 2 R9

真空管やオペアンプの個体差により、中点電圧、グリッド電圧、出力電圧はばらつきます。

注意:ヘッドホン出力のGNDは中点電圧と接続されていますので約6Vです。 音声入力とヘッドホン出力をショートさせないで下さい。

(2012-03-14 編集)

ケースの加工、組み立て、つまみとゴム足の取り付け

ケースの底面は、基板の半田面に半田付けした抵抗の脚と接触する部分をヤスリで削り、基板のGNDとケースが電気的に導通するようにして下さい。


Fig.12 ケースの塗装を剥がすところ


ケースの蓋(真空管を通す穴が開いています。)を基板に被せてから、ケースの底面を後ろからスライドさせるようにはめて下さい。 ケースの底面に基板を挿入した状態では蓋ができません。


Fig.13 ケースに基板を挿入するところ


基板の端には抵抗の脚が半田付けされているので、グッと押し込んで下さい。 押し込みにくい場合には、基板上に半田付けした抵抗の脚をヤスリで削ってならして下さい。


Fig.14 基板の端をケースに押し込むところ(裏側)


ケースのフロントパネル、リアパネルは皿タッピングねじで固定します。 ドライバ +No.2を使用し、押す力7に対して回す力3くらいの力加減でねじを押しながら締めて下さい。 ボリュームにワッシャーとナットを取り付ける必要はありません。

フロントパネルにあるステレオミニジャックはヘッドホン出力です。


Fig.15 フロントパネルのねじ止め、つまみの取り付け


シルバーのねじは背面に使用して、ケースの蓋と底面を電気的にも接続して下さい。 色の違いが気になる方はネジの頭を油性ペンや車用のタッチアップペイントなどで黒くして下さい。

リアパネルにあるステレオミニジャックは音声入力です。


Fig.16 リアパネルのねじ止め


ゴム足はケース底面のゴミや油汚れを拭きとった後に、平らな部分のできるだけ外側に貼り付けて下さい。


Fig.17 ゴム足の取り付け

(2012-03-14 編集)

試聴

DCジャックにACアダプターを接続し、電源投入して異臭がしないことを確認して下さい。

リアパネルにある音声入力ジャックにiPodなどの音源を接続して下さい。 iPhoneやPCなど壊れたときに重要なデータが失われる可能性のある機器を最初に接続しないで下さい。

ボリュームを最小にしてからヘッドホン出力ジャックに壊れても構わないイヤホン、ヘッドホン(100均などで調達して下さい。)を接続し、徐々に音量を上げて正常に音声出力されることを確認して下さい。 高級なヘッドホンを最初に接続しないで下さい。

電気部品の中には新品では本来の性能を発揮しないものがあります。 50時間ほど通電してプレート電圧を再調整した後に音質の評価をして下さい。


改造の手引き

出力抵抗 R4, 9、HPFのフィルムコン C1〜4は音声信号が通過するので変更すると音質が変化します。

電解コンデンサ C5, 6, 10はOSコン、マザーボード用など低ESR品に交換すると電源電圧がより安定する可能性があります。 Φ8だけでなくΦ10の電解コンデンサも使用できるパターンになっていますが、高さが14.5mm以下のものを選定して下さい。 C5, 6は耐圧10V以上、C10は16V以上が必要です。

抵抗やコンデンサーの値を変更するとアンプとしての性能が劣化することもあるので注意して下さい。

改造をしたものはサポートの対象外とさせて頂きます。

(2012-03-14 編集)