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お知らせ

2012年4月の発売以来ご愛顧頂きましたChar rock 24Vは2014年1月をもちまして販売終了とさせていただくことになりました。

再生産の予定はございません。


真空管ヘッドホンアンプ Char rock 24V web マニュアル

真空管を使用したヘッドホンアンプ"Cahr rock 24V"のwebマニュアルのページです。 組み立ての前に必ずこのページの最後まで読んで下さい。

Cahr rock 24Vは秋葉原のアンディクス・オーディオさんAmazonにて税込12,800円で販売しています。

アンディクス・オーディオさんの店頭に試聴機がございますので、お気軽にご試聴下さい。 試聴の際には必ずスタッフにお声をおかけ下さい。 また、普段お使いの再生機とヘッドホンを持参されることをお勧めします。 アンディクス・オーディオさんは日曜日が定休日ですのでご注意下さい。

2012/08/12以降はマイナーチェンジした基板Ver.1.2を出荷しています。お手元の基板がVer.1.2の場合は紙のマニュアルとwebマニュアルの記載が異なる部分もありますが、紙のマニュアルの記述に従って組み立てて下さい。

2013/01/22頃より温度上昇を抑えるためリアパネルに空気取り入れ口を新設した新型のケースを同梱して出荷しています。従来型の市場在庫が無くなるまでの間は従来型と新型のケースが混在しますがご容赦下さい。

Fig.20 空気取り入れ口付き新型ケース



最新の情報はtwitterでつぶやいています。


お知らせはblog @try_lab technologyをご確認下さい。

開発物語

○はじめに
12VのChar rockは加工済みのケースやACアダプタなど、必要な部品は全部セットで販売価格1万円以下が目標でした。 限られた予算内で出来るだけ良い音が出るように考えましたが、発売して時間が経つと私自身もChar rockを改造したくなってきました。 そのときに、違いが分かりやすい改造方法として真っ先に頭に浮かんだのが高電圧化でした。

○なぜ24Vなのか?
使用している真空管のプレート電圧の定格は165V、オペアンプの定格は±18Vなので回路上は36Vでも良いのですが、入手しやすいACアダプターは24Vまででした。 また、電源電圧を24Vより高くするとヒータードロップ抵抗に3W以上の抵抗を使うことになり、Char rockのケースに収まらなくなってしまいます。 一方で電源電圧が2倍になればヘッドホン出力もおよそ2倍になるので、出力にはゆとりが出来ます。 コストと性能の妥協点が24Vだと考えました。


Fig.1 Char rock 24Vの基板

○トランジスタリップルフィルタ搭載
真空管は電源入力時にヒーターへたくさん電流が流れるのでACアダプターの過電流保護回路が働くことがあり、ACアダプターの選定には苦労してきました。 今回は、これを防止するためにトランジスタリップルフィルタを採用しました。 トランジスタのコレクタ電流の定格が500mAに対してACアダプターの定格が750mAなので通常なら過電流保護回路は働きません。

○プレート電圧の最適化
プレート電圧の定格は165Vなので24Vでも低すぎるのですが、オペアンプの仮想接地と同程度の12V弱にするとオペアンプが発生するノイズが軽減されることが分かったので、今回はこれを採用しています。 オペアンプの+入力と−入力はイマジナリーショート(仮想ショート)と呼ばれ、同電位になるよう内部の回路が働きます。 さらにChar rockの回路形式はボルテージフォロアなので−入力と出力がショートしています。 つまり、+入力と出力がショートしたような状態になっています。 このため、プレート電圧と仮想接地の電位を近づけるとオペアンプの負荷が減りノイズが軽減されるようです。

○HPFの遮断周波数と定数の最適化
真空管とオペアンプの間にあるHPFは、当然のことながら真空管とオペアンプの両方に影響します。 HPFの抵抗に流す電流が多いと真空管の動作が不安定になり、電流が少ないとオペアンプの動作が不安定になり、いずれの場合もノイズの原因になります。 また、遮断周波数が高いと低音が出ず、低いと直流漏れを起こしてヘッドホンを破壊しかねません。 24V版では改めて最適化を行いノイズの削減と音質の改善を目指しました。


注意事項

半田ごてのこて先は300℃以上になり、触れると火傷をするので十分に注意して作業を進めて下さい。 万が一、火傷をした場合は、流水や氷で十分に冷やして下さい。

半田から出る煙は有害物質が含まれているので必ず換気をして下さい。 また、卓上に小さい扇風機を置いて、煙を直接吸い込まないようにして下さい。

真空管はガラス製品なので衝撃を加えると割れます。 通電中は発熱するので絶対に触れないで下さい。

本キットの製作にはテスターが必要になります。

アダプタやケースが触れられないほど発熱していたら、すぐにコンセントからACアダプタを外して下さい。


必要な工具類

Char-rockの製作に使用する工具など ←こちらを開いて下さい。

リンク先の工具類に加えて、テスターのプローブに装着するICクリップ アダプターがあるとプレート電圧の調整の際に便利です。


部品リスト

キットを開封したら、最初に必要な部品が入っていることを確認して下さい。

抵抗やコンデンサは近似値のものが入っていることもあります。

                                                  
Table 1 キット内容物
名称 番号 規格 仕様 数量 備考
抵抗 R1, R5 1/6W以上 カーボン 1MΩ 2本 茶・黒・緑・金
R2, R6 100Ω 2本 茶・黒・茶・金
R3, R7 100kΩ 2本 茶・黒・黄・金
R4, R8 22Ω 2本 赤・赤・黒・金
R9, 10 2W 金属皮膜抵抗 39Ω 2本 橙・白・黒・金
R11 1/2W以上 カーボン 4.7kΩ 1本 黄・紫・赤・金
R12 1/6W以上 カーボン 68Ω 1本 青・灰・黒・金
R13 1/4W以上 カーボン 8.2kΩ 1本 灰・赤・赤・金
ジャンパ JP1     1本 2W抵抗の脚を再利用
ボリューム VR1   20kΩA×2 1個  
つまみ     1個  
半固定抵抗 VR2, VR3 多回転トリマポテンショ 1MΩ 2個 プレート抵抗
コンデンサ C1〜4 積層フイルム 50V 0.1uF 4個 水色 104(大きい方)
C5, C6 電解 16V 470uF 2個 黒・白帯
C7, C8, C11 積層セラミック 50V 0.1uF 3個 水色 104(小さい方)
C9, C10 電解 25V 47uF 2個 黒・白帯
トランジスタ TR1 2SC3325-Y   1個  
LED LED1 Φ3 赤色 1個  
オペアンプ U1 デュアルオペアンプ DIP 8PIN 1個  
ICソケット 平ピンICソケット 1個  
ステレオミニジャック J1, J2     2個 音声入出力
DCジャック J3     1個  
トグルスイッチ SW1     1個 電源スイッチ
皿タッピングねじ   M3×12 4本  
ゴム足       4個  
ケース       1個  
真空管 TUBE1, 2 五極管 5840 2本  
基板       1個  
ACアダプタ   スイッチング式 24V 0.5A以上 1個  
ラベルシール   ケーブル用 24V 0.75A 1枚  
マニュアル       1部  

注意:基板Ver.1.2ではボリュームを50kΩA×2 ローレットシャフト、つまみをローレットタイプに変更しました。また、ケースの彫刻を廃止し、DC24Vを印字したラベルシールを追加しました。ケース上面の穴はΦ11 → Φ12に拡大して組み立てやすくしました。

部品は仕入れの事情により予告なく変更になることがあります。


半田付け

基板上の半田付けは背の低い部品から順番にするとスムースに作業ができます。 ここでは、チップ トランジスタ→抵抗→抵抗の脚→コンデンサ→ジャック類→ICソケット→ボリューム→スイッチ→LED→真空管→ポテンショの順番で半田付けをします。

一番最初に抵抗を差し込み、基板の部品面(表)から半田付けします。 部品面の半田付けができたら半田面(裏)の状態を確認して、半田が不足している所は半田面から再度半田付けをして下さい。

抵抗以外の部品もできるだけ部品面から半田付けをすると作業がスムースにできます。


チップ トランジスタの半田付け

チップ トランジスタはとても小さいので無くさないように注意して下さい。また、熱に弱いので短時間で半田付けをして下さい。半田付けがうまくできなかった場合は、部品が冷えるのを待ってから再度半田付けをして下さい。

チップ トランジスタTR1は半田面(基板の裏面)に半田付けします。 一つ目の脚を半田付けする前に基板のパッドに予備半田をしておきます。利き手に半田ごてを持ち、他方の手でピンセットを使いチップ トランジスタを保持して下さい。 予備半田をしておけば、半田を供給しなくても半田付けできます。


Fig.2 チップ・トランジスタを半田付けしたところ


抵抗、抵抗の脚の半田付け

R7(100kΩ)、R9、R10(39Ω)とジャンパーJP1は基板から3mm程度浮かした状態で半田付をして下さい。 こうしておくと、後の電圧測定でR7とJP1にICクリップを取り付けやすくなります。 R9、R10を浮かせるのは放熱のためです。 ジャンパーJP1は2W抵抗の脚を半田付けして下さい。


Fig.3 抵抗を半田付けしたところ(上面)


Fig.4 抵抗を半田付けしたところ(側面)

ケースと基板のGNDを導通させるために、基板の裏側左端にある銀色の帯の前側に1/6W抵抗の脚を再利用して半田付けします。
抵抗の脚を10mm程度基板に乗せて半田付けした後、はみ出した部分を切断して下さい。 このとき、抵抗の脚はとても熱くなるので必ずピンセットで保持して下さい。


Fig.5 抵抗の脚を半田付けしたところ


コンデンサの半田付け

積層セラミックコンデンサ→積層フィルムコンデンサ→電解コンデンサの順番で半田付けをして下さい。

積層フイルムコンC2、C4(0.1uF)は基板から3mm程度浮かした状態で半田付をして下さい。 後の電圧測定でこれらの脚にICクリップを取り付けます。


Fig.6 積層セラミックコンデンサ、積層フィルムコンデンサを半田付けしたところ(上面)


Fig.7 積層セラミックコンデンサ、積層フィルムコンデンサを半田付けしたところ(鳥瞰)

電解コンデンサには極性があります。電解コンデンサの白い帯とシルク印刷の白縞の方向を合わせて下さい。


Fig.8 電解コンデンサを半田付けしたところ


ジャック類、ICソケットの半田付け

ステレオミニジャックとDCジャックは全ての脚を半田付けした後では方向、位置の微調整が困難になります。 1箇所を半田付けした状態で方向、位置を微調整した後に他の脚も完全に半田付けして下さい。

オペアンプ U1は、シルク印刷の丸印、ICソケットの凹みとオペアンプの丸印の方向を一致させて下さい。

すべての半田付ができたらオペアンプを挿して下さい。逆に挿すと壊れるので注意して下さい。


Fig.9 ジャック類、ICソケットを半田付けしたところ


ボリューム、スイッチ、LEDの半田付け

ボリュームは熱に弱く加熱時間が長いと壊れることがあります。短時間で半田付けして下さい。

ボリュームのFG(フレーム グランド)端子は熱容量が大きいので30W程度の半田ごてでは半田付けできません。 70W以上の半田ごてを使用して下さい。 高出力の半田ごてがなければ、無理に半田付けをせず、そのままにして下さい。

LEDには方向があります。脚が長い方(アノード)を+、短い方(カソード)を−に接続して下さい。 脚を付け根から5mmの所で90度に折り曲げて、LEDの中心の高さが5mmになるように半田付けして下さい。 基板にフロントパネルを仮止めしてLEDを取り付けると位置決めがしやすいです。


Fig.10 ボリューム、スイッチ、LEDを半田付けしたところ


真空管、ポテンショの半田付け

真空管の熱が基板に伝わりにくいようにするため、真空管は基板から2mmくらい浮かせた状態で半田付けをして下さい。

真空管を斜めに半田付けするとケースに入らないこともあるので基板に対して垂直になるよう気を付けて下さい。 最初にTUBE1は8時方向のKの脚を、TUBE2は5時方向のG1の脚を部品面から1本だけ半田付けして真空管の高さと角度を調整した後に他の脚を半田付けして下さい。

ポテンショには方向があります。ポテンショの調整ねじとシルク印刷の丸印の方向を合わせて下さい。 ポテンショを半田付けしたら調整ねじを反時計回りに回しきっておいて下さい。



Fig.11 真空管とポテンショの半田付けをしたところ

すべての半田付ができたらオペアンプを挿して下さい。逆に挿すと壊れるので注意して下さい。

電源投入、電圧の確認、プレート電圧の調整

電源投入

基板と金属が接触するとショートする恐れがあります。 基板上のゴミを取り除き、基板の下にはボロ布や厚紙などの絶縁体を敷いた後にACアダプターを接続して下さい。 電源スイッチを上にあげてONにし、ヒーターがオレンジ色に点灯するのを確認し30分ほど待ちます。 このとき、異臭が発生していないことを確認して下さい。

もし、異臭が発生したり、ACアダプタやケースが触れられないほど発熱していたら、すぐにコンセントからACアダプタを外して下さい。

電圧の確認 その1(DC 0V基準)

テスターを電圧測定モードにし、マイナス・プローブ(黒)をジャンパー "JP1 DC 0V" に接触させて下さい。 Table 2に示した電圧を確認して下さい。

計測する場所はFig. 12-1も参考にして下さい。

Table 2 主要部分の電圧の目安 その1
測定番号 名称 シルク印刷 電圧 [V]
@ コレクタ電圧 C (C11) 24.3±0.3
A エミッタ電圧 E (R9) @−1.0
B ベース電圧 B (R12) A+0.6
C 仮想接地電圧 VG (R7) A÷2
D グリッド電圧 1 G1_1 (R1) -0.6±0.2
E グリッド電圧 2 G1_2 (R2)

注意:ACアダプタのばらつきを考慮してコレクタ電圧の範囲を24.2±0.2 → 24.3±0.3に拡大しました。(2012-08-15)


電圧の確認 その2 (仮想接地基準)

ボリュームを最小(反時計回りに回しきる)にして、テスターのマイナス・プローブ(黒)をVG (R7) に接触させた状態で、Table 3に示した電圧を確認して下さい。 計測する場所はFig. 12-1も参考にして下さい。

Table 3 出力電圧の目安
順番 名称 シルク印刷 電圧 [V]
F プレート電圧 1 P1 (R2 or C2) 0.5±0.5
G プレート電圧 2 P2 (R6 or C4)
H 出力電圧 1 R4 0.01±0.01
I 出力電圧 2 R8

注意:真空管のばらつきを考慮してプレート電圧の範囲を0.1±0.1 → 0.5±0.5に拡大しました。(2012-08-15)

プレート電圧の調整方法
多回転トリマポテンショ(VR2, VR3)の調整ネジを時計回りに回すとプレート電圧(P1, P2)が高くなります。 プレート電圧がTable 3に示した値になるよう調整して下さい。

最初は多回転トリマポテンショを回しきっても規定の電圧を越える場合もありますが、エイジングが進むとカソードから飛び出す電子が増えてプレート電圧が下がります。50時間ほど通電した後にプレート電圧を再調整して下さい。 その際も通電直後ではなく30分ほど待ってから調整して下さい。


Fig.12-1 電圧計測箇所

Fig.12-2の様にテスターのプローブにICクリップ アダプターを装着するとプレート電圧の調整がしやすいです。


Fig.12-2 プレート電圧を測定する様子

真空管やオペアンプの個体差により、仮想接地電圧、グリッド電圧、出力電圧はばらつきます。

注意:ヘッドホン出力のGNDは仮想設置電圧と接続されていますので約12Vです。 音声入力とヘッドホン出力を絶対にショートさせないで下さい。


ケースの加工、組み立て、つまみとゴム足の取り付け

ケースの底面は、基板の半田面に半田付けした抵抗の脚と接触する部分をヤスリで削り、基板のGNDとケースが電気的に導通するようにして下さい。


Fig.13 ケースの塗装を剥がすところ


ケースの蓋(真空管を通す穴が開いています。)を基板に被せてから、ケースの底面を後ろからスライドさせるようにはめて下さい。 ケースの底面に基板を挿入した状態では蓋ができません。


Fig.14 ケースに基板を挿入するところ

注意:基板Ver.1.1はケース上面に彫刻しましたが、基板Ver.1.2はリアパネルにラベルシールを貼るように変更しました。

基板の端には抵抗の脚が半田付けされているので、グッと押し込んで下さい。 押し込みにくい場合には、基板上に半田付けした抵抗の脚をヤスリで削ってならして下さい。


Fig.15 基板の端をケースに押し込むところ(裏側)


ケースのフロントパネル、リアパネルは皿タッピングねじで固定します。 ドライバ +No.2を使用し、押す力7に対して回す力3くらいの力加減でねじを押しながら締めて下さい。 ボリュームにワッシャーとナットを取り付ける必要はありません。

フロントパネルにあるステレオミニジャックはヘッドホン出力です。


Fig.16 フロントパネルのねじ止め、つまみの取り付け

リアパネルにあるステレオミニジャックは音声入力です。基板Ver.1.2の場合はDCジャックの下に"DC24V"と印字したラベルシールを貼って下さい。


Fig.17 リアパネルのねじ止め


ゴム足はケース底面のゴミや油汚れを拭きとった後に、平らな部分のできるだけ外側に貼り付けて下さい。


Fig.18 ゴム足の取り付け


ラベルシールの貼付け

ACアダプターのケーブルに貼るラベルシールはセルフラミネートタイプです。 白い部分の台紙を剥がしてケーブルに貼り付けた後、透明の部分の台紙を剥がして巻きつけて下さい。

12Vの機器に24V電源を接続しないよう、十分に気をつけて下さい。


Fig.19 ケーブル用ラベルシールの貼付け


試聴

DCジャックにACアダプターを接続し、電源投入して異臭がしないことを確認して下さい。

リアパネルにある音声入力ジャックにiPodなどの音源を接続して下さい。 iPhoneやPCなど壊れたときに重要なデータが失われる可能性のある機器を最初に接続しないで下さい。

ボリュームを最小にしてからヘッドホン出力ジャックに壊れても構わないイヤホン、ヘッドホン(100均などで調達して下さい。)を接続し、徐々に音量を上げて正常に音声出力されることを確認して下さい。 高級なヘッドホンを最初に接続しないで下さい。

電気部品の中には新品では本来の性能を発揮しないものがあります。 50時間ほど通電してプレート電圧を再調整した後に音質の評価をして下さい。

携帯電話、無線LANルーター、コードレスホン、光終端装置、蛍光灯などが近くにあるとノイズを拾うことがあります。 ノイズが気になるときはそれらを遠ざけてお使い下さい。