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メス! 電源開発促進対策特別会計(財務省、文部科学省及び経済産業省所管) 電気事情を知るチャンス!原子力の問題とは?
1 電気事業に関しては、これだけ電気に頼りながら勉強不足といわざるを得ない.ここで勉強しておこう.この会計は、電気開発促進税を財源として、電気開発促進に関する経理を行う会計である.世界の主流は、ひたすら原子力発電に向かっているように思える.その中でも日本はかなり偏重している.これは後述する.平成16年度の予算は2つに分かれており、各々以下となっている.
(注:億以下の単位は切り捨てているので合計が合わない事がある.赤字は借金.は問題点.は他会計への資金提供).
1)電源立地勘定
歳入(単位億円) 歳出(単位億円)
電源開発促進税
余剰金
雑収入
1606
970
0
電源立地地域公共用施設設備等事業費
電源立地地域安全等対策
(独)原子力安全基盤機構運営費
事務取扱費
周辺地域整備資金への繰入
国整理基金特別会計への繰入
予備費
1123
745
150
18
530
0
8
2576億円 2574億円
独)は独立行政法人の略.この勘定は、発電用施設の設置の円滑化を目的とする.そのため、施設の所在地に対し公共用施設の整備、住民生活の利便性向上、産業振興用に充てる資金を交付する.企業立地、発電施設の広報、安全性、防災体制等も交付金の対象となっている.
(2)電源利用勘定
歳入(単位億円) 歳出(単位億円)
電源開発促進税
余剰金
雑収入
1987
460
8

水力発電開発導入促進対策費
石炭火力発電開発導入促進対策費
地熱発電開発導入促進対策費

原子力発電開発導入促進対策費
電力供給安定化等対策費
核燃料サイクル機構補助
(独)新エネルギー・産業技術開発機構運営費

(独)原子力安全基盤機構運営費
事務取扱費
国整理基金特別会計への繰入
予備費
36
47
40
308
476
1019
368
90
48
0
20
2455億円 2452億円
(独)は独立行政法人の略.この勘定は、電源を円滑化に利用する技術や発電用施設の効率向上を図る技術の開発.地熱、水力等の電源開発促進、核燃料サイクル等原子力に関する、研究・技術・安全性等の諸々の会計であるが、核燃料サイクルが40%、30%が他の原子力関連の費用であるので、この予算の70%は原子力発電の費用である.全体では35%、つまり電力全体における原子力発電の占める割合に一致するが、電力自由化の売電事業の状況により今後が左右される(2000年の電気事業法改正され、電力小売事業に既存の10電力会社以外の会社も自由に参入できるようになった).

電源事情に、国の先見の目があるか?余剰金1430億というのあれば否定的だろう.例を挙げれば、日本の原子力発電は2010年までに12基程度、新規稼動のはずであったが、原発の安全性の問題もあり新規は4基に終わっている.収支は合っているが資金がだぶついているため、実際の交付金は余っているか必要もない関連施設(ラピカ問題、下記参照)を作って経費を落としている可能性がある.結局、特別会計の欠点は、ここでも確認されるのである.
新潟日報ホームページ<回顧2001>国策に強まる不信感---拍車を掛けたラピカ問題--- 
全国の原発関係者が刈羽刈羽村の動きに注目したのは2001年5月27日だった.村では東京電力・柏崎刈羽原発のプルサーマル住民投票が行われた.
国内の各原発では、ウランを原料にした使用済み核燃料がたまり続け、やがて運転不能に陥る.回避策として国は、使用済み核燃料を再加工し、プルサーマル用燃料として利用する核燃料サイクル計画を立て、東電の福島第一か柏崎刈羽のいずれかの原発で国内初の計画実施を目指していた.
柏崎刈羽原発では6月実施が予定され、3月末にプルサーマル用燃料がフランスから届いた.村では疑問の声が上がり、議会は昨年末に民意を問う住民投票条例案を可決した.品田宏夫村長は1月2日、「国策に住民投票はなじまない」を理由に、条例案を拒否する「再議」を表明.条例案は廃案になった.

納得しない一部住民は、直接請求での条例制定を求めて署名活動を行い、条例案は4月18日に議会が再可決.投票実施の運びになった.投票結果は、プルサーマル実施反対が有効投票数の過半数を超えた.品田村長、平山征夫知事、西川正純柏崎市長は、6月実施の見送りを決めた.東電も行政の判断を受け入れ、国の計画は出発点でつまずいた. 住民投票は、原発推進派の一部村議が実施を呼びかけ、これに反対派が相乗りする構図の中で実現した.

推進派の「国策」への抵抗は、原発行政への不信が根源だった.茨城県東海村での臨界事故など一連の不祥事に加え、原発交付金で建設した村生涯学習センター「ラピカ」のずさん工事問題が不信に拍車をかけた.問題の発生原因を一向に解明しない村、国の対応は、「原発交付金は村には役立たず、恥をつくっただけ」と、村民の失望と怒りを買った.国は12月13日、約3億4000万円の交付金などの返還を命令し、村は全額を支払った.原発に揺れた村は、大きな損失を抱えて1年を終える.
【メモ】刈羽村の住民投票は、プルサーマル実施「賛成」「反対」「保留」の三者択一式で行われた.結果は、反対1925票、賛成1533票、保留131票.反対票は有効投票数の53・39%、有権者総数の47・06%を占めた.投票率は88・14%だった.一方、ラピカは約47億9200万円で建設され、原発交付金は約45億4200万円が交付された.(実際には建設費65億、交付金57億という節もある.著者注)
2 本邦の原子力発電事情.国内で52基の商業用原子炉が操業中(4,575万kW:米、仏に次ぎ世界第3位)で、国内電力の約34.4%を供給する基幹電源としての位置付け.今後とも相当程度を依存していく重要なエネルギー源としている.これは、原子力発電は、ウラン資源が政情の安定した国々に分布することから供給安定性に優れ、また、発電課程でCO2を排出せず、地球温暖化防止に優れている.とはいうものの、その安全性と使用済核燃料処理に関して大きな問題を残している.

特に後者は、資源エネルギー庁の言葉を借りると「独自のエネルギー資源に乏しく、ウラン資源も輸入に頼る我が国では、使用済燃料を再利用して、回収される有用資源であるウラン及びプルトニウムを国産のエネルギー資源として活用する核燃料サイクルを、国内において確立することが重要.また、使用済燃料を再処理することにより、発電過程で生じた放射能レベルの高い核分裂生成物等を分別して適切に処分することが可能になる」.従って、プルサーマル計画を画作中である.現況は下記.
3
プルサーマル計画
(利点) 使用済燃料から回収するプルトニウムなどを国産資源として再利用することによって、元の燃料の最大2割から4割程度を供給することができる.そのプルトニウムを含んだ燃料(MOX燃料)を既存の原子力発電所(軽水炉)で利用することをプルサーマルと言い、それによって原子力発電による電力をより長期間にわたって安定して供給することができる.
(計画) 平成9年2月、事業者は、平成22年(2010年)までに16〜18基の原子力発電所でプルサーマルを実施する計画を公表.平成13年4月20日、事業者は本計画を再確認し、地元の了解が得られ次第順次実施することととした.
(現状) 初期の実施が予定されていた福島、新潟及び福井の各県では、国による安全審査及び地元地方公共団体の事前了解は終了したが、以下の事情により実施が遅れている.
〈福井県〉   最初の実施が予定されていた関西電力(株)高浜発電所におけるプルサーマルについては、平成11年、MOX燃料の製造を行ったBNFL社(英国原子燃料会社)による検査データ改ざんが明らかになったことから実施は中断.現在データ不正のあった燃料を英国に返還するべく手続中. 
〈福島県〉   福島第一原子力発電所におけるプルサーマルについては、東京電力(株)は平成13年に実施する予定であったが、同年2月、同社の新規電源開発凍結の発表により地域との信頼関係が失われたとして、福島県知事が、電源立地県の立場から独自にエネルギー政策について検討を行うこととし、その間の実施はないと表明.現在、県は「エネルギー政策検討会」を開催中.
〈新潟県〉  柏崎刈羽原子力発電所のプルサーマルについては、東京電力(株)は平成13年に実施する予定であったが、同年5月に実施された刈羽村の住民投票においてプルサーマル受入れ反対が過半数を超えた.このため、同社は同年の定期検査におけるプルサーマルの実施を見送った.
(政府案)
政府は内閣官房副長官の主宰の下、関係府省間に「プルサーマル連絡協議会」を設置し、プルサーマルを含む核燃料サイクルの重要性についての政府内の再確認、及び地域理解に向けた取組強化に政府一体となった対応を図っている.同連絡協議会による「中間的なとりまとめ」(平成13年8月8日)においては、以下の4点が課題とされた.
 
  1.核燃料サイクル政策の一層の明確化
  2.原子力政策に関する国民的合意形成
  3.プルサーマル計画の今一層の方針明確化
  4.発電所立地地域と電力消費地との相互理解及び発電所と立地地域との共生
(活動) 現在、プルサーマルの実施に向けた具体的な取組として、核燃料サイクルのエネルギー政策上の必要性について分かり易い説明資料を作成・配布を行うともに、エネルギー教育の充実や、発電所立地地域と電力消費地の相互理解のための各種シンポジウムの開催、立地地域の担当官事務所の設置など、国が前面に立った活動を積極的に展開している.
核燃料は、地球規模でも枯渇しているので、プルサーマルに頼らざるを得ないのである.世界の状況は下記となる.
4
アメリカ 2001年5月の「国家エネルギー政策」において原子力エネルギーの利用拡大を支持.米露協定に基づき解体された核兵器から取り出されるプルトニウム34トン全量をプルサーマルで消費する方針. 米国エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は、2002年2月、2010年までに新規原子力発電所を建設し運転を開始することを目的とした「原子力2010(Nuclear Power 2010)」プログラムを発表.複数社(エクセロン社・ドミニオン社)が原子力発電所新規建設を検討中.
ドイツ 連邦政府と電力会社は2001年6月、原子力発電所の運転期間を運転開始から32年間とすること、再処理により発生したプルトニウムは原子力発電所で使用(プルサーマル)すべきこと等を内容とする協定に合意.その合意の内容を制度化する改正原子力法が2002年2月成立.
フィンランド ・政府が2002年1月、原子力発電所の新規建設計画を承認→国会審議 へ.
私の意見原子力発電は発電課程でCO2を排出せず、地球温暖化防止に優れているということでますます促進されるだろう.しかし、燃料処理には膨大な費
              用がかかる.安全性を置いておけば、問題はこれに尽き、原子力発電が進んでも電気代は安くはならないから、個人が節約と電源分散の試みを、
              決断する時期に入ったといえる(太陽電池と個人風力発電は実用化されているし、電力貯蔵用NAS電池等の開発も進んでいる).
参考 1)「特別会計への道案内」松浦武志著:創芸社出版
2)「財務省ホームページ」
3)「資源エネルギー庁ホームページ」