私見 特別会計にメスを!医療費抑制政策で明らかにされた日本財政の欠点.2003/12/16
1 平成11年の総医療費は30兆9300億円.これは国民所得の8.4%に当たります(GNPは506兆,GNP497兆).そのうちの老人医療は、11兆8000億円で総医療費の38%を占めています.国民所得に対する伸びは前年比3.7%ですが、老人医療費は前年比8.4%の伸びでした.老人医療費は、4.1%が人口増によるもので4.3%が医療の質の向上による伸びと説明されております.「国民所得の伸びは0.2%にとどまっているこの状況で、医療費が伸びるのは問題だから総医療費を何とか抑えられないか?」という議論が医療費抑制策の発端ですが、これは経済側から発言されました.このしわ寄せは老人医療に向けられました.
2 老人保健法導入から20年になりますが、老人医療費はこの間も年5.7-12.7%の間で伸びて続けていたのです.老人人口増加、組合拠出金の負担増による組合の赤字等は、老人保健法創設後の数年の運営で予測できていたのです.平成11年は、国民所得の伸びが悪かったので経済界から旧厚生省に注文がついて、ことが大きくなったと言えます.厚生省の怠慢ではありますが、総医療費の試算がなされ2025年に49兆となります.確実に増加する老人医療費に先ず白羽の矢がたてられ、人口増加の自然増は避けようがないので質の伸びを抑えては?.という理由で本来、医療費とは関係のない福祉や介護サービスが老人医療費に含まれるので、これを切り離す為の政策が立てられました.これが介護保険法です.平成12年に施行されました.介護保険という大義名分を謳って、別枠で国民の自己負担を増やし、国の負担を軽減.結果、老人医療費は統計上の抑制をみました.つまり費用の一部を計上しなくなっただけで、医療費関連の費用が減っているのではありません.介護保険に要する事務費等も増え、公務員の需要も手当ても確保されている.さすがは役人です.
3 では、本当に日本の総医療費は高いのか?否です.国際比較すれば(GDP比)、きわめて低い水準といえます.医療制度を模倣しようとしているアメリカの医療費は現在120兆.人口補正して日本に適用すれば60兆円ですが、今はその1/2です.この理由は多く考えられますが、ウサギ小屋にいながら(医療環境が悪いのに)長寿を誇っているのが現状です.ウサギ小屋が改善されれば、もっと伸びるでしょう.厚生省の目標には日本の医療レベルを世界水準に引き上げる事があるはずですが、平均のレベルではアメリカに10年遅れている.高度医療の普及は全く不充分.病院管理も同様.アメニティや技術力、労働力に対する費用按分が出来ない等々、枚挙にいとまがない.同様に検討していくと、桁違いに高い水準が公共事業です.これは世界一.医療費の中での世界一.それは薬価です.諸外国の数倍します.これは製薬企業が高値安定を誘導しているからです.中薬審の体質改善ができるかに掛かっています.世界水準への第一歩は、無駄な公共事業をやめ医療費を支援する.薬剤費は欧米並みに引き下げることです.
4 平成13年度の総国民医療費は31兆3000億強.国の一般会計が81兆.その内税収が51兆、国債発行が30兆です.
見方を変えれば国債発行分が医療費です.厚生労働省の予算は18兆ですから、13兆を自己負担金で補わなければならない.生産年齢人口一人あたりの負担は364,000円(保険負担218,400自己負担145,600)になります.労働年齢の平均年収から見ても負担が大きい.医療レベルが上がるのは日進月歩です.それをきちんと利用できること.負担が少なくなることを国民は望んでいるのです.世界水準の一歩は、無駄な公共事業をやめ医療費を支援する.薬剤費は欧米並みに引き下げることとのべました.世界水準が無理でも、厚生省レベルで医療改革できるのに政策を棚上げしている.これは厚生官僚が財力・権力に溺れて、その責務を果たさないからに他なりません.医療費抑制の政策は考えられても、医療向上の為には無策.問えば、財源がないの一点張りの答えですが的外れ.
5 厚生労働省の一般会計は18兆.これは今後も頭打ちでしょう.この予算で将来倍にもなろう総国民医療費を支援するのは確かに難しい.しかし、厚生労働省は特別会計という厚生省だけで自由に使えて、税もかからない69兆もの財源を実際に運営しております.この財源は厚生省の官僚が管理し、部外者が収支を確認するのも困難と言うほど入り組んでいるという曰く付きです.この財源にメスを入れ、厚生労働省自体を自浄して適正な医療費支援を目指すべきでありましょう.官僚が自浄しないなら、政治家のやるべき急務であります.こういった各省管理の財源、これが特別会計と言われるものですが、平成16年予算額では総計400兆にもなります.国会審議もされず、国民に説明もされない政府と官僚の隠し財産です.この会計は、近年その赤字体質が際立ってきております.その赤字分を一般会計から繰り入れし返還がほとんだ無いに等しいのです.平成16年は47兆を特別会計に繰り入れ、返還は0.7兆でした.一般会計は差引き35兆でしかない.
6 特別会計は、確認できるだけで各省庁併せ32会計.平成16年歳入予算額の総計で400兆.国の総財源は、一般会計の82兆(税収52兆、国債30兆)を加えて482兆強、重複金額を差し引き345兆、控除後が260兆となっております.一般会計の82兆から47兆は特別会計に繰り入れられているので、特別会計に225兆が、国民用には35兆が充てられている計算になります.特別会計は巨額であるにもかかわらず、国民の目を逃れて各省庁の特別会計に組み込まれており、このこと自体が日本財政の最大の欠点であります.早急に解決すべき問題ですが、改革の意識が微塵もないのが現状です.それなら、先ず財形投融資の管理を厳重に徹底検証し改革の道を探るべきです.→財政用語
関連した意見と批評
1 週間ポスト1999/1/11 
官僚のつかみ金とも、あるいは各省庁の≪隠し財源≫ともいわれるのが国の特別会計(特会)だ.その総額はなんと283兆円にのぼるが、霞が関ではいよいよ官僚利権“最後の聖域”である特別会計の存廃をめぐって≪行革最終戦争≫が勃発した.発端はさる5月はじめ、自民党行革推進本部長の武藤嘉文元総務庁長官が特別会計の抜本的見直しの方針をぶちあげたことだ.武藤氏が語る.
「これまで公団・公社など特殊法人を整理統合し、公益法人改革に取り組んできたが、最後にぶつかるのがそうした天下り団体に補助金を出している各省の特別会計だ.しかも、特別会計の資金がどこからどう流れているのかは複雑怪奇で実態がつかめない.そこで中央省庁再編に合わせて、特会を原則廃止し、残す場合もディスクロージャーを徹底させるべきだと考えている」.国の特別会計には郵政事業や厚生省の保険、年金から道路、港湾、空港の各整備特会まで全部で38あるが、いずれも郵便貯金や社会保険、ガソリン税など独自の財源を持ち、一般会計と違って大蔵省主計局の査定も受けない独立採算事業となっている.そのため、例えば郵政省の簡易保険特会からは、全国75か所の『簡保保養センター』の建設や施設運営の“赤字補填”に資金が使われるなど、無駄使いの温床になっていると批判が強い.
「役所は特別会計を自分のポケットのように考えて、一般会計では予算がとれない事業を特会の資金で外郭団体にやらせてきた.しかし、“エネルギー特会”から資金が出ている石油公団が事実上経営破綻しているように、もはやそうしたやり方の失敗が隠しきれなくなっている.このまま放置すれば、特別会計が抱える損失は膨れあがる」 と武藤氏. 一説には、すでに特別会計全体で数十兆円の含み損があるともみられているが、その実態は全く公表されていないのが実情だ.もっとも、霞が関では政治主導のはずの特別会計改革が省庁間の対立に発展している.「自民党を操っているのは大蔵省だ.大蔵は特会廃止でガソリン税や自動車税など道路事業に使われる独自財源をとりあげてすべて一般会計に組み入れ、主計局でコントロールしようとしている」(建設省幹部)中央省庁再編の裏で繰り広げられる≪283兆円≫争奪戦から、国民は目を離すべきではない.
2 井戸蛙 氏/国の特別会計
少し経済に関心があれば、政府の一般予算は80兆円ほどで、30兆円が新たな国債発行の借金、50兆円が税収と知っているはず.では、その予算から50兆円ほど回される特別会計はご存知だろうか?
公務員の半分は、この特別会計から給与を貰っている.特別会計とは何かといえば、例の郵政事業や道路整備事業など38の会計から成り立ち、一般会計から50兆円もここに流れ込んできて、単純計算では340兆円くらいの歳入と320兆円位の歳出になっているという.本当の日本の国家予算は、260兆円の規模になるのだという.その金垂れ流すのだ.すると、500兆円と発表されている日本のGDPも、事業と称する非効率な国営事業が260兆円もそこに含まれていることを知れば、どんな景気対策も、意味がないことがわかるだろう.民間活力を生むはずのGDPは240兆円規模なのだ.年間一人当たり、200万円の生産や売り上げをしているのが、民間事業なのだ.デフレはここまですすんでいる.例えば、郵政事業で国債を買っていると、これは一体どういうことになるか、わかるだろうか?政府の借用証書に、同じ政府が国民の預かり資金を回していることになるのだ.わかるだろうか?簡保も同じ.財政融資資金と郵貯簡保と日銀その他合わせて、240兆円位の国債を保有している.民間といわれる金融機関や生保損保で、100兆円あまり.
じゃ、政府は国民に返済する能力があるのだろうか?この返済能力を、海外の格付け機関が評価するのが、国債の格付けなのだ.日本がひどいことになっているのはご承知だろう.閣僚は怒って見せるが、格付け機関の方が正しいとみるべきだろう.だって、借金に国境はないのだ.特殊事情もへったくれもない.毎年、約50兆円位の国債の償還がやって来るが、税収が50兆円にも満たないのに、返済できるわけが無い.従って、借り換えをやっているのだ.その上、30兆円の新たな国債発行をし、別枠で借金も増やしている.返済など出来るどころの話ではないのだ.国債の価格が暴落しない理由を、多少はわかっていただけるだろう.つまり、国家機関と、国家の統制の厳しい金融機関、損保、生保などで、84%以上を保有しているせいだ.いつ限界が来てもオカシクナイ状況だが、限界はいつだろう?無論、国債の入札に誰も応じなくなった時だ.だが、それはいつだろう?政府系機関は金が底をついたときだ.しかし、運用利回りの欲しい銀行は、日銀が安い金利で円を垂れ流せば、借りてきて買うかも知れない.危機より、目先の利益優先だ.無論、これは日銀の国債の引受と同じで、果てしない国家崩壊、円の下落以外なにものでもない.無論、すでにその崩壊が始まっている.日銀は市中金融機関から国債を50兆円余りも買い込んで抱えている.直接、政府から買っていないだけで、同じことである.してはいけないことであることは、早見総裁も百も承知である.
国と地方自治体の借金は1066兆円あるのだ.1400兆円あると言われている個人金融資産が、どうすれば、動き始めるのか、誰にもわからない.もしかすると、動けないのかも知れない.郵貯を皆が解約して消費に回すことを考えたら、途端に、国債の大暴落が起こるだろう.むしろ、じっとしているから、平穏なのだ.使わない金を持っている.安心代である.金は不思議なものだ.一体いつまで、もつのか、そこを計算してみたい.
3 海江田万里 氏/民主党/海江田万里スピークス2003.4.4号
税金のムダ遣いの温床 - 国の予算のカラクリ - 本当の予算規模は約350兆 - 本当の予算規模は4倍にものぼる. 
新しい年度がスタートしました.今年の国の予算規模については、新聞なども約82兆円と報道し、これが去年と比べていくら増額になっている、いくら減額になっている、という議論が中心ですが、実はこの金額は国の予算全体の一部についてだけを見ていて、本当の国の予算規模はその4倍以上の約350兆であるというデータが先日明らかになりました.
このデータを集計したのは、残念ながら我が民主党ではなく、自民党の行政改革推進本部です.「行政改革を本当に進めるには、まず国の財政の姿を正確に知っておく必要がある」ということでこのデータの集計になった訳です.これまで私も、個人的にこのデータを集計できないか苦闘したことがありますが、そこは野党の悲しさ、役所がこの種のデータの提出を拒み、そのままになってしまった経緯があります.約350兆円の内訳は、まず国の一般会計が82兆円、これは国のオモテの財布です.次に国の特別会計、これは二つ目の財布ですが、実はこの額がオモテの財布の3倍以上の約270兆円もあるのです.特別会計とは、例えば公的年金の会計のように保険料の収入もあり、主に税金の収入からまかなわれている一般会計とは区別したほうが適切な会計です.ところが、この特別会計は、国会での予算委員会や決算委員会での議論でも、あまり取り上げられることがないために、役所のヘソクリのように使われている面があります.
一例をあげましょう.先日新聞でも取り上げられましたが、塩川財務大臣がG7への出張で、たった11人が出かけるのにジャンボ機をチャーターして、その費用が7000万円かかったというニュース.この費用はどこから出ているかというと、一般会計の財務省の外国旅費もほんの一部は負担しますが、ほとんどの部分は、外国為替資金特別会計(外為特会)から支出するのです.サミットで、日本はどの国よりも多人数の代表団を送り込み、超一流ホテルのフロアーを借り切って、顰蹙を買うことが常ですが、この費用もほとんどが、外為特会から支出されているのです.一般会計よりも規模は3倍以上、しかも国会での監視の目も緩やかだというのなら、役人がこれを使い放題というのもむべなるかなです.
もうひとつ、3番目の財布に相当するのが地方の負担分です.公共事業などでは、国と地方がそれぞれ、資金を出し合うケースが一般的です.というより、国が地方に対して支出を強要するわけですが、地方としても、2分の1か、3分の1は国が費用を出してくれるわけですから、それだけ安上がりで公共事業ができることになるので、これを呑んでしまうのです.
また公共事業の中には、国が勝手に使い道を決めて、地方は負担だけを押し付けられる地方直轄事業というものまで在ります.そして国は、こうして地方が負担した分から、例えば国の出先機関の人件費などを負担させたりします.地方にとってはこんな理不尽なことは無いのですが、現在の国と地方の力関係からいって、文句の言える状況ではありません.こうした地方の負担分を合計して、だいたい1700億円余り.これで全部、第一から第三までの三つの財布を合計して、国の予算規模はおよそ350兆円ということになります.これからは国会でも、こうした特別会計や地方の負担分にも当然議論が及ぶことになりますから、国の税金の無駄遣いも、今後、少しは改善されることと思います.