私見 特別会計の有害性を知るべし!2005/5/28
1 前回は医療費からみた特別会計の非合理性でした.財政として根本的に考えなければ全体像が見えませんので、研究してみましょう.国の財政は、「一般会計」、「特別会計」、「政府関係機関の会計」に区分されています.特別会計とは、財政法で認める必要性がある場合に限り、一般会計とは別に経理できる会計のことです.財政法では、「国が特定の事業を行う場合」「特定の資金を保有して運用を行う場合」「その他特定の歳入を以って特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合」に、特別会計を置く事が出来ると定めております(財政法13条1項、2項).
国が営利目的の事業を行って良いのか否かの問題はおきますが、民間には出来ない事業がある限りは必要となります.しかし、最低限の範囲においてが原則です.従って、後二者は全く釈然としない定義です.これなら何でも有りになってしまいます.
2 特別会計は一般会計と別に経理される訳ですが、赤字になった時は一般会計で補填します.しかし繰入金を一般会計に返済する必要はなく、黒字の場合はその特別会計内に基金や積立金といった名目で蓄えることが出来るのです!特別会計は、監査も審議も無いのでその使い方は管理する官僚の裁量に任せれています.総額が200兆を下らないといわれております.平成16年度は、一般会計から47兆の繰り入れを受けている.つまり特別会計に47兆の赤字が出ているのに、特別会計の200兆からは、一般会計に一銭も返却されることがないので一般会計の財源は自然目減りし、圧迫を受けているのです.これば国民に使われる予算がなくなること意味します.つまり、改革をしたくとも財源が無いと言うのは、国民に使うべきお金が無いと言うだけあって、各省庁自身用のお金は別枠で200兆も持っているのです.国民が資本という考えがあれば国民の負担増を強いる前に、特別会計に繰入れされた一般会計分(借金)を返却するのが筋と言うものでしょう.返却の要なしって言う法律は民間ではありえない.一般会計は足りない分を赤字国債を発行して補填しているのですから、こんな法律がまかり通るのは?
3 平成16年度は31の特別会計が認められておりますが、その歴史を振り返ってみましょう.1906年に国債整理基金という特別会計が最初に認められました.これは日露戦争の戦費の償還の為に設立されたのです.戦後に次々と特別会計が設置されます.戦後の復興は特別会計によってなったのですが、国自身は事業が出来ないので事業を委託する器が必要になったのです.1953年の財政投融資計画により、特殊法人と認可法人が多数誕生しました(H13:特殊法人77、認可法人81).しかし、設立当初の目的から既に離れ、一人歩きしている特別会計がいくつもあり、実際は何に使われているのか調べることも出来ない状態になっており、その無駄遣いも判明してきている.ここに、メスを入れる必要があるのです.平成16年度の特別会計の総歳出は計387兆です.一番右の数字は1兆を超えるものの金額を記載しました.
国債整理基金 1906 前述 169兆
食糧管理 1921 食糧管理特別会計法に基づき、食糧不足に備える   3.6兆
森林管理 1937 森林国営保険法に基づく
厚生保険 1944 健康保険法、厚生年金保険法に基づく   43兆
農業共済再保険 1944 農業災害補償法に基づく再保険で農業経営を安定化  
農業経営基盤強化措置 1946 農地解放政策による自作農創設
国有林野 1947 国有林野の管理運営に関する法律に基づく
船員保険 1947 船員保険法に基づく療養給付・失業給付・年金給付等
国営土地改良事業 1949 土地改良法に基づく.耕地の整備で食糧増産
国立高度医療専門センター 1949 医療不足に対応するため、前身の国立病院特別会計
貿易再保険 1950 外国貿易に係わるリスクの軽減
財政融資資金 1951 財政投融資を使って戦後復興を加速する   59兆
外国為替資金 1951 外貨不足に対応するため政府が外貨を管理していた     1兆
漁船再保険及び漁業共済保険 1952 漁船損害等補償法に基づく
産業投資 1953 産業の開発及び貿易の振興
交付税及び譲与税交付金 1954 戦後の復興、地方格差の是正  68兆
特定国有財産整備 1957 庁舎等国有財産の整備・管理
道路整備 1958 狭隘、未舗装の「酷道」を解消   4兆
治水 1960 水害防止、増加する水需要に備える   1兆
自動車損害賠償保険制度 1961 「交通戦争」被害者救済のため、旧自賠責再保険特別会計設立
港湾整備 1961 不充分な港湾施設の設備促進
国民年金 1961 国民年金法に基づく  21兆
自動車検査登録 1964 自動車の安全性確保
都市再開発資金融通 1966 都市再開発のための用地先行取得資金提供
地震再保険 1966 地震保険に関する法律に基づく
石油エネルギー需要構造高度化 1967 石炭から石油への転換、石油の安定供給   1.9兆
空港整備 1970 空港整備の促進
労働保険 1972 労災保険法、雇用保険法に基づく   7.8兆
電源開発 1974 電源開発促進
特許 1984 工業所有権に関する事務の経費
登記 1985 登記事務の増大による電算化投資
肝腎なことを一つ追加すると、いわゆる郵政三事業の特別会計は平成14年度歳出で35兆である.今は日本郵政公社が引きついでいると見て構わないのですが、そのままであればいくらになっていることやら?統計上はもう数字に表れないのです.
4 平成16年度の日本の財政資金の流れを、大まかに把握しておきましょう!ここでも大きな借入金があります.税金からの支出は15%弱です.借金大国の現状がつぶさに判明します.それに、特別会計内での借入れと繰入れは、民間なら犯罪行為です.いわゆる間接税が特別会計に繰り入れられる率も馬鹿になりません.
特別会計(歳入408兆) 特別会計(歳出387兆)  ⇒⇒  各特別会計詳細
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税収 ⇒⇒ 一般会計
特定財源
(82兆)
47兆
(特定財源から2兆)
国債整理基金支出 169兆
厚生年金 43兆
国民年金 21兆
財政融資資金 59兆
⇒⇒ 目的税 (86兆に含まれる) 交付税・譲与税等 68兆
保険料
手数料
負担金
86兆 その他26会計 27兆
借入 180兆
会内借入 95兆
そして、更なる驚愕の各特別会計詳細も見ておくきましょう.膨大なので別ページになりますので別ページです.
5 ピンクの色分けがなされている部分が厚生労働省の管理する特別会計です.平成16年度は72兆円です.前編でも指摘しましたが、そのうち厚生保険特別会計43兆円を分析してみましょう.この会計で「健康保険経理8.8兆」、「厚生年金保険経理33兆」、「児童手当経理0.4兆」が行われるが、措置的に老人保険制度に関連して「特別保険福祉事業」も行っている.この4つの業務に係わる事務費は0.5兆.2000年から介護保険が開始されところです.この事務費の歳出のなかに年金資金運用基金出資額59億という数字を見つけることができます.この基金は、厚生年金と国民年金の積立金を株式や債券で運用することを事を任されている特殊法人なのですが、その運営実績は34兆を運営して累計6兆円の赤字.将来この基金が年金全額を運営すると決まっている.ここを改革しなければ、積立てた年金の給付が計画どうりに望めない時代は直ぐそこまで出来ている.無責任な基金に出資を続ける姿勢は馴れ合いそのもの.さらなる背任は、給付外使用5.6兆円.グリンピア事業で3800億、福祉施設や老人ホームで1兆5700億、住宅融資の9300億等全てが損失となり、損失費用の補填は厚生年金の積立金から出資される.基金の理事は、責任すら感じておらず、TVのインタビューで「失敗と思っていない」「考え方の違い」などと言ってハイヤーに乗り込む姿を見た方もあるだろう.その給与も事務費から出ているのですが氷山の一角に過ぎない.
6 特別会計は国が行う事業.この事業では黒字であれ、赤字であれその収支は決算審議を受けません.又事業でありながら税金がかからない.各省庁は特別会計で事業をするわけであるが、事業委託はいわゆる特殊法人になされる.特殊法人も特別会計と同じ性格を引き継いでいる.赤字であってもお咎めが無く、黒字分は法人内に余剰金として貯込み、自分たちに有利に運営を進めるのです.当然税金を払う必要もなく、そんな意識すらありませんが.明るみに出ているだけでも、その無駄遣いは目を覆うばかりで、その噴出はとどまるところをしりません.各省庁の人件費、施設費や備品、旅費の諸経費、所管の特殊法人、財団法人、独立行政法人等の天下り先に出資金や運営費として止め処も無く流れていくのです.マスコミの糾弾も殆どない.野放しは誰の責任か?政治家の責任です.官僚は自分たちに有利な制度を自浄するわけがありません.しかし、政治家もその団体から票をもらえるという思惑からか手をつけられないでいる?いや、政治家自身も特別会計を自己有利に利用しようとしているのでないでしょうか?
私の結論:国民は国・地方に税金や社会保障金(年金を含める)を納めている.加えて貯蓄(郵貯等)の資金も預けている.このお金の60%は結果的に特別会計等に繰り入れられ、審議もない手の届かぬ部分で官僚が徹底管理しているのです.国民に還元されることはありません(負担が増加して年金の給付が下がるだけ).特別会計の仕組みが生み出すからくりと言えばそれまでです.特別会計はもはや必要悪を通り越しており、国民にとって存在意義はないものです.制度そのものを廃止に追い込むことが国民の急務と考えます.