フェリーの中で日誌を書いている。デッキから |

荒々しい表情を見せる昭和新山。 |
函館山を眺めた。明日はどこまで行こう、何を見 |
よう、などともう考えることはないのだ。夕暮れ |
の北海道を望む。次に北海道に来るのはいつにな |
るだろうと考える。室蘭からフェリーに乗っても |
良かったのだ。最後となると未練がましくなる。 |
まだ函館まで走れる。今日も走るのだ。7時前起 |
床する。洞爺湖は凪いでいた。曇りだが晴れてき |
そうだ。気温も高い。最後のコーヒーを入れる。 |
1杯の熟いコーヒーで1日が始まり1日が終わる |
旅だった。朝、料金の徴収に指導員がやってきた。 |
一人用のテントと間違われた。苦笑いしてしまっ |
た。朝早くから子どもが洞爺湖で水遊びをしてい |
た。その光景に思わず身震いしてしまう。8:4 |
5昭和新山を目指す。昨日のラーメン屋のおばさ |
んから得た話だと今日は昭和新山でお祭りがある |
らしい。身動きとれなくなるほどの渋滞となるら |
しい。少しでも早く着いた方がいい。湖畔をほぼ |
半周する。調子に乗って攻めまくる。温かいので |
水温もちゃんと上がる。ギアの入りも好調。エン |
ジンもスムースに回る。マシンの切れもいい。洞 |
爺湖温泉のホテル街を通過する。立派だ。よほど |
客が入るのだろう。花火が毎晩出来るはずだ。昭 |
和新山へ近づく。臨時駐車場が出来ていた。車が |
多い。人も多い。バイクは100円らしい。係り |
のおじいさんに聞くとバイクはただらしい。修学 |
旅行で来たときは雨だったような気がする。目の |
前に昭和新山がそびえる。デカイ。山に見えない |
分何か大きな物体のような気がする。視界に収め |
ようとすると背がそり返る感じだ。水蒸気の噴出 |
が激しい。今も大きくなっているのだろうか。こ |
んなのが畑から出てきたとは驚きだ。溶岩ドームとでも言うべきなのだろうか。結局昭和新山には登れなかった。非常に残念だ。あきらめてみやげを買 |
う。いろんなみやげ店があるが人形を扱っているような店が多い。一応研究室用にみやげを買う。広場ではやぐらを組んでいる。やはり今日は祭りらし |
い。出られなくなる前に離脱する。10時くらいだ。後は海沿いに走るだけだ。この辺で伊達という地名を何度も目にする。仙台伊達藩と関係があるの |
だろうか。街中の国道37号に出る。地図の覆面パトカーと言う文字に過敏に反応しペースを抑える。と言うより車が本当に走らない。55km位だ。 |
後ろの車全て覆面パトカーではないだろうかと疑う。海沿いと言っても尾根を走っているのだろうか。海が眼下に広がる。通称噴火湾だ。名前とは裏腹 |
に穏やかな陽光が輝く。海沿いを離れ山間部に入ってきた。峠が続く。ペースがやたらと遅い。いくらなんでも遅すぎだ。ちょうどいいワインディング |
なのに台無しだ。イライラしながら前の車に続く。パトカーが藪に隠れているのを発見。逆にこのペースで良かったのか。長万部に入った。両脇にカニ |
の売店が並ぷ。そしてガソリンが安い。レギュラー85円の争いだ。そろそろ空腹で食堂を探す。だがちょうどいい店がない。長万部を抜けてしまった。 |
また周りに何もなくなる。次は八雲町まで走らなければならない。青空が広がる。気温も上がる。函館方面から来るライダーが目に付くようになる。ピ |
ースサインどころかガッツポーズまで飛び出す。渡道してきた喜びが伝わってくる。自分達は雨の苫小牧から始まった。夏らしい北海道からスタートで |
きるライダーがうらやましい。ドライブインを探す。八雲町に入ったらしい。R5号の八雲と言えば今年の北海道の夏を象徴している。自分達が渡道し |
て来たとき北海道は長雨だった。特に南西部では雨が強く降り続いた。そのため八雲では橋が1m陥没したのだ。そのニュースを初日のテントの中でラ |
ジオで聴いていた。その橋はこの辺りにあるはずだ。もう開通はしたらしい。工事中の看板が現れた。600m先にあるらしい。真新しいアスファルト |
の橋が規れた。間違いなくこの橋だ。橋を通過する。今、’97夏の北海道の証人となる。ドライブインがあった。目指すはラーメンだ。最後だ。うま |
いラーメンを食べようと思ったが、ウニラーメン1000円だ。塩チャーシューにする。安くまわったツーリングだ。美食は目的ではない。ドライブイ |
ンの裏は線路と海だ。中学の時はここを通ったのだ。青い空と白い雲を撮る。青空に飢えた夏だった。その分太陽のありがたみを知った。最後の道の駅 |
を目指す。道の駅YOU遊もりだ。着いたときは久しぶりに暑かった。中でスタンプを押す。そしてソフトクリームの旗につられて食べる。うまい!溶 |
けるほど暑い。夏はこうでなくてはいけない。食べているとなんと太白区ナンバーのスクーター発見!これから函館まで行くのだろうか。思えば原付で |
ツーリングしている人も多く見かけた。自転車も多く見たし、徒歩のキャンパーも見た。北海道はそれぞれに魅力的なのだ。次の目的地は間欠泉だ。分 |
岐点より少し進んだホクレンで最後の給油を行う。なんと旗をゲット!最後の最後にラッキーだ。また戻り国道278号に入る。海沿いをまわって函館 |
まで行けるのはうれしい。コンビニでフィルムを購入する。おつりが100円少なかった。コンビニを探すときから右手に高い山が見えていた。それ以 |
前に八雲からここまで来る途中ずっと目に入っていた。2つの頂上があるきれいなスロープを持った山だ。禿げ山なことからして火山と想像する。間欠 |
泉もあるくらいだ。火山だろう。写真を撮ろう撮ろうとしていたがついに撮りそびれた。間欠泉を目指し進む。前の雲が怪しい。ここまで来て降られる |
のは嫌だ。何とかやばい雲の下を抜ける。間欠泉が見つからない。売店はあったので近くのはずなのだ。鹿部と大岩の間を行き来する。そんな途中切り |
返しで入ったパーキングに滝があった。三味線の滝だそうだ。銀河の滝とか見たかったのにいきなりトーンダウンした感じだ。まあ偶然の楽しみもある。 |
戻っていくとやっとあった。やはり売店の前にあった。フェンスで囲まれ見つけにくかったのだ。小さい。フェンスの中には金魚を飼う池ほどのスペー |
スしか見あたらない。看板を見ると5、6分に一度高さ10mまで吹き出すらしい。5、6分はありがたい。ちょうどいい所にベンチまであった。ここ |
に座って見ろと言うのだろう。わくわくしながら座って力メラを構える。カップルもやって来た。結構メジャーな観光スポットなのだろうか。と、つい |
に来た!ゴボゴボ言い出した。ものすごい水蒸気があがる。しかしいつまで待っても吹きあがらない。そのうち終わってしまった。不発か?カップルも |
しらけ気味だ。そうこうしているうちにもう一組のカップルが来た。きっと2回に1回ぐらいの割合で吹きあがるのだろうと思い次を待ってみることに |
した。次こそはと不安がよぎる。と、そこへ一人のおじいさんが近づいてきた。さっき売店の前で草刈りしていたおじいさんだ。いきなりフェンスの中 |

夕暮れの函館。それぞれの想いをかみしめる。I shall return!
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に入っておもむろにふたを開けて出てきた。便器 |
の蓋のようなものがあったのだ。また来た!ゴボ |
ゴボゴボ、ブシュー、シューシューシュー…。上 |
がった!噴水だ。長い滞空時間だ。103度はあ |
るらしい。大迫力だ。ギャラリーがいないと蓋を |
開けないのだ。コミカルだ。笑ってしまう。”う |
ちの社長、ワンマン社長だからよー…。”じいさ |
んが何か言っている。とにかく予想外で面白かっ |
た。トイレもあった。函館まで後80kmから9 |
0kmはあるだろう。もう見るものはない。ひた |
すら函館を目指してかっ飛ばす。周りは漁村だ。 |
道も狭い。だが交通量も少ない。人や駐車車両が |
ある中70〜80kmで巡航する。とろい車は積 |
極的に抜き去る。今まで一台たりとも進んで抜い |
たことはなかった。最後は少し仕返しをする。走 |
れないんじゃない。走らなかったのだ。パス。パ |
ス。パス。ひたすら抜きまくる。すっきり爽快。 |
函館に入った。本当の市街に入ったら辟易した。 |
まず道が分からない。地図を函館に切り替えたが |
現在位置が分かるルートに出るまで一苦労する。 |
さらに土曜の午後だ。全くと言っていいほど進ま |
ない。今まで力ッ飛びツーリングに慣れすぎた。 |
疲労してしまう。だがまた女子高生を見た。感動 |
を覚える。五稜郭は見れない。やっとフェリー埠 |
頭に着いた。バイクは少ない。全車ホクレンの旗 |
が装着されている。ついに最終地点まで来てしま |
った。ターミナルで手続きを済ます。便はたくさ |
んある。ジュースを飲みながらくたびれた愛車を |
見る。泥だらけだ。出発前のシャインさが無い。 |
だが3000km北の大地を走破したのだ。タイ |
ヤもスプロケも減った。だがこれは勲章だ。誰のマシンにも負けない。帰ったらオーバーホール級の洗車とメンテをしてやらなくては。フェリーに乗船 |
する。デッキから夕暮れの函館を眺める。朱色に染まりつつある函館と海はとても静かだ。走り終わった満足感と寂寥感をゆっくり味わらせてくれるよ |
うだ。北海道に来て本当に良かった。バイクに乗っていて本当に良かった。兄弟で北海道を走れて本当に良かったと思う。R1−Zはなんと言うだろう。 |
全てを失ったときから1−Zとのつきあいが始まった。自分に北海道を旅させてくれたR1−Z3xc−050262にただただありがとうを言いたい。 |
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