簿記3級・基本テキスト |
9章 決算整理・3 |
.その他の資産、負債について、諸帳簿、預金通帳、証拠書類などと相互に照合して記帳の正確さを調べ、決算整理をおこないます。
.期中において、相手方勘定または金額が未確定なときに使った[仮受金勘定][仮払金勘定]は一時的に記録する仮の勘定です。決算で整理し、正しい金額・相手方勘定に振替えます。したがって、決算整理が終わった段階で必ずゼロになりますので、「貸借対照表」には記載されません。
◆ 出張中の社員から当座振込みされていた2万円について、決算で、得意先からの売掛金の回収であることが判明した。
→ (借方)仮受金 2万円 /(貸方) 売掛金 2万円
.期中において帳簿残高と実際有高に過不足があったときに使った現金過不足勘定は、決算で整理し適切な勘定に振替えます。
しかし、原因が不明である現金の過不足額については、費用の発生として[雑損または雑損失・費用の勘定]あるいは[雑益または雑収入・収益の勘定]に振替え処理します。
[現金過不足勘定]は一時的に記録する仮の勘定で、決算整理が終わった段階で必ず ゼロになりますので「貸借対照表」には記載されません。
◆決算になり、現金過不足勘定の借方残が 5万円あり、原因不明のため雑損として処理した。
→ (借方)雑損失 5万円 /(貸方)現金過不足 5万円
◆決算になり、現金過不足勘定の貸方残が 5万円あり、原因不明のため雑損として処理した。
→ (借方)現金過不足 5万円 /(貸方)雑収入 5万円
◆決算のさい、現金の実際有高と帳簿残高を照合したところ、実際有高が 5万円不足していたので調査したが、その原因が不明だった。
→ (借方)雑損失 5万円 /(貸方) 現金 5万円
*決算のときに原因が不明である現金の下不足額は、費用または収益の発生として雑損失または雑収入で処理し、一時的な仮の勘定である現金過不足勘定は用いません。
.事務用品などの消耗品を購入したときは、費用がかかったと考え[消耗品費・費用の勘定]で処理します。しかし、決算のさい、未使用の消耗品がある場合には、その部分を消耗品費勘定から差し引くとともに一時的に[消耗品・資産の勘定]に計上します。
◆期中の仕訳は、以下のように処理していた。
「(借方) 消耗品費 5万円 / (貸方) 現 金 5万円 」
決算で、期末の消耗品の未消費高は 2万円であった。消耗品は、購入時に消耗品費勘定で処理している。
→ (借方) 消耗品 2万円 / (貸方) 消耗品費 2万円
もうひとつの方法は、消耗品という資産が増減すると考え、[消耗品・資産の勘定]で処理する方法です。決算で未消費額を消耗品残高に一致するように、消耗品費の勘定に振替えます。
◆ 期中の仕訳は、以下のように処理していた。
(借方) 消耗品 5万円 / (貸方)現 金 5万円
決算で、期末の消耗品の未消費高は2万円であった。消耗品は、購入時に消耗品勘定で処理している。
→ (借方) 消耗品費 3万円 / (貸方) 消耗品 3万円
.期中において、企業主(店主)が私用のために現金等を引き出し、[引出金勘定]を使って処理した場合、決算で資本金を減少させる修正をおこないます。
◆ 店主が私用で引き出した。引出金 50万円について、決算で整理した。
→ (借方) 資本金 50万円 / (貸方) 引出金 50万円
─────┰───────┰───────┰───────┰───────・決算整理の正確性をチェックし、帳簿を締め切らないで決算の概要をつかむために、「精算表」を作成します。
「残高試算表」から決算整理をふまえて、損益計算書と貸借対照表を作成する過程を一覧表の形にまとめたものです。 それぞれ借方・貸方をもつので、八桁式精算表といいます。
・以下の手順で作成します。
1)精算表様式をつくる・・・
・「残高試算表」「修正記入」「損益計算書」「貸借対照表」からなる8桁の精算表を使います。
2)合計残高資産表から金額を精算表の「残高試算表」欄に書き写す。・・・
・勘定科目は、資産・負債・資本・収益・費用の順になるように記入します。
3)期末整理仕訳を「修正記入」欄に記入する。・・・
・資産・負債・収益・費用でいずれであるかを確認しながら間違いのないように記入します。
・試算表にはない決算整理のときだけにしかでてこない勘定科目(整理勘定)は新しく設けます。
4)「損益計算書」「貸借対照表」欄に記入する。・・・
・残高試算表欄に記入された、資産・負債・資本の金額に修正記入欄の金額を加減して、貸借対照表欄に記入します。
借方同士、貸方同士で加算し、貸借の逆のものは減算して、残高があるほうに記入します。
資産勘定の金額は、貸借対照表の借方(左側)に。
負債・資本勘定の金額は、貸借対照表の貸方(右側)に。
・また、残高試算表欄に記入された、費用・収益の金額に修正記入欄の金額を加減して、損益計算書欄に記入します。
借方同士、貸方同士で加算し、貸借の逆のものは減算して、残高があるほうに記入します。
費用勘定の金額は、損益計算書の借方(左側)に。
収益勘定の金額は、損益計算書の貸方(右側)に。
5)「損益計算書」「貸借対照表」欄でそれぞれ純損益を計算する。・・・
・損益計算書と貸借対照表は、それぞれ借方と貸方の合計を計算して、その差額を少ないほうに記入します。その金額が、"純利益"または"純損失"となるので「当期純利益」または「当期純損失」と記入します。
・つまり、以下のようになります。
損益計算書の借方(左側)、貸借対照表の貸方(右側)に差額を記入した場合は、「当期純利益」。
逆に、損益計算書の貸方(右側)、貸借対照表の借方(左側)に差額を記入した場合は、「当期純損失」になります。
精 算 表
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┃ 試算表 ┃修正 記入┃損益計算書┃貸借対照表
勘定科目 ┠──┬──╂──┬──╂──┬──╂──┬──
┃借方│貸方┃借方│貸方┃借方│貸方┃借方│貸方
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現 金 ┃ 165│ ┃ │ ┃ │ ┃ 165│
当座 預金 ┃ 509│ ┃ │ ┃ │ ┃ 509│
受取 手形 ┃ 570│ ┃ │ ┃ │ ┃ 570│
売 掛 金 ┃ 340│ ┃ │ 110┃ │ ┃ 230│
有価 証券 ┃ 300│ ┃ │ 20┃ │ ┃ 280│
繰越 商品 ┃ 140│ ┃ 120│ 140┃ │ ┃ 120│
建 物 ┃ 250│ ┃ │ ┃ │ ┃ 250│
備 品 ┃3000│ ┃ │ ┃ │ ┃3000│
買 掛 金 ┃ │ 210┃ │ ┃ │ ┃ │ 210
借 入 金 ┃ │ 500┃ │ ┃ │ ┃ │ 500
仮 受 金 ┃ │ 110┃ 110│ ┃ │ ┃ │
貸倒引当金 ┃ │ 6┃ │ 26┃ │ ┃ │ 32
建物減価 ┃ │ ┃ │ ┃ │ ┃ │
償却累計額┃ │ 54┃ │ 39┃ │ ┃ │ 93
備品減価 ┃ │ ┃ │ ┃ │ ┃ │
償却累計額┃ │ 135┃ │ 135┃ │ ┃ │ 270
資 本 金 ┃ │4000┃ │ ┃ │ ┃ │4000
売 上 ┃ │1260┃ │ ┃ │1260┃ │
受取手数料 ┃ │ 20┃ │ 130┃ │ 150┃ │
仕 入 ┃ 580│ ┃ 140│ 120┃ 600│ ┃ │
給 料 ┃ 180│ ┃ │ ┃ 180│ ┃ │
消耗 品費 ┃ 50│ ┃ │ 14┃ 36│ ┃ │
支払 家賃 ┃ 80│ ┃ │ ┃ 80│ ┃ │
保 険 料 ┃ 90│ ┃ │ 60┃ 30│ ┃ │
支払 利息 ┃ 41│ ┃ 5│ ┃ 46│ ┃ │
┠──┼──┨ │ ┃ │ ┃ │
┃6295│6295┃ │ ┃ │ ┃ │
┣━━┿━━┫ │ ┃ │ ┃ │
貸倒引当金 ┃ │ ┃ │ ┃ │ ┃ │
繰入 ┃ │ ┃ 26│ ┃ 26│ ┃ │
有価証券 ┃ │ ┃ │ ┃ │ ┃ │
評価損 ┃ │ ┃ 20│ ┃ 20│ ┃ │
減価償却費 ┃ │ ┃ 174│ ┃ 174│ ┃ │
消 耗 品 ┃ │ ┃ 14│ ┃ │ ┃ 14│
未払 利息 ┃ │ ┃ │ 5┃ │ ┃ │ 5
前払保険料 ┃ │ ┃ 60│ ┃ │ ┃ 60│
未収手数料 ┃ │ ┃ 130│ ┃ │ ┃ 130│
当期純利益 ┃ │ ┃ │ ┃ 218│ ┃ │ 218
┃ │ ┠──┼──╂──┼──╂──┼──
┃ │ ┃ 799│ 799┃1410│1410┃5328│5328
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