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簿記3級・基本テキスト 


5章 債権と債務の処理


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5-1.貸付金と借入金


「 貸 付 金(資産+)/ □□□□□□□  」
「 □□□□□□□  / 
借 入 金(負債+)
「 
支払利息(費用+)/ □□□□□□□  」
「 □□□□□□□  / 
受取利息(収益+)

企業の資金状態によっては、取引先にお金を貸し付けたり、銀行から借り入れたりすることがあります。このような営業取引き以外の債権・債務については、[貸付金・資産の勘定]と[借入金・負債の勘定]を用います。

なお、資金の貸借に伴う利子は、[支払利息・費用の勘定]、[受取利息・収益の勘定]で処理します。


A社はB社に 100万円を現金で貸付け、借用証書を受け取った。

 → <A社の仕訳>  (借方)貸付金 100万円  /(貸方)現 金  100万円

 → <B社の仕訳>  (借方)現 金 100万円  /(貸方)借入金  100万円




(1)C社はD社に 6か月後返済の約束で現金50万円を貸付けた。
 なお利息は年 20%で半年後に受取ることとした。
(2)なお後日、D社は、C社に上記の借入金を利息とともに小切手で返済した。

 → <C社の仕訳> 
  (1)(借方)貸付金  50万円 /(貸方)現  金   50万円
  (2)(借方)現 金  55万円 /(貸方)貸 付 金   50万円
                /(貸方)受取利息   5万円

 → <D社の仕訳> 
  (1)(借方)現 金  50万円 /(貸方)借 入 金  50万円 
  (2)(借方)借入金  50万円 /(貸方)当座預金  55万円
    (借方)支払利息  5万円 /


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金銭の貸付・借入のときには、ふつう、「借用証書」または「金融手形」を用います。手形の場合、借用証書のものと区別するため、貸付けの場合は[手形貸付金・資産の勘定]、借入の場合は[手形借入金・負債の勘定]で処理します。

A社はB社に 50万円を貸し付け、同額の約束手形を受け取った。なお、利息分 5万円を差し引き、残額を小切手を振出して引渡した。

→ <A社の仕訳>  (借方)手形貸付金 50万円 /(貸方)当座預金  45万円
                       /(貸方)受取利息  5万円 

→ <B社の仕訳>  (借方) 現  金 45万円 /(貸方)手形借入金  50万円
         (借方) 支払利息  5万円 / 



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5-2.未収金と未払金


「 未収金(資産+)   / □□□□□□□     」
「 □□□□□□□    / 
未払金(負債+)    

買掛金や売掛金は、代金未収または代金未払いの債権や債務ですが、これらの商品売買以外の取引きで、有価証券や備品、不用品などの代金未収の債権は、[未収金・資産の勘定]で処理します。また、代金未払の債務は[未払金・負債の勘定]で処理します。

 なお、未収金を回収した時、未払金を支払ったときは、これを減少させます。

不用になった備品を50万円で売却し、代金は月末に受取ることにした。

 →   (借方)未収金  50万円 /(貸方)備 品  50万円


備品50万円を購入し、代金は40万円を小切手で支払い、残額は月末に支払うことにした。

 →   (借方)備 品  50万円 /(貸方)当座預金  40万円
                  / (貸方)未払金  10万円


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5-3.立替金と預り金


「 立替金(資産+)   / □□□□□□□   」
「 □□□□□□□    / 
預り金(負債+)  

従業員や取引先に対して、一時的に金銭の立替えをするときは後日、立替えたお金を受取る権利が生じるので[立替金・資産の勘定]を用いて処理をします。
 従業員が負担すべき生命保険料を立替える場合は[従業員立替金・資産の勘定]を用いる場合もあります。

また、従業員の給与を支払うときに、所得税や住民税などを差し引きます(源泉徴収)。また社会保険料の従業員負担分も給料より控除します。これは後日、従業員にかわって納税するまで一時的に預かっているお金で、後日支払う義務があるので、[預り金・負債の勘定]を用いて処理をします。


従業員に給料の前払い分1万円を現金で支払った。

 →   (借方)立替金  1万円 /(貸方)現 金  1万円


給与 25万円のうち所得税2万円、住民税1万円を差し引き、上記の立替金についても差し引き、現金を支給した。

 →   (借方)給 料  25万円 /(貸方)預り金  3万円
                 /(貸方)立替金   1万円
                 /(貸方)現 金  21万円

*立替払いした金額は、給与の支払い時に精算する処理になりますので、貸方に記入します。



上記の所得税、住民税の預り金を現金で納付した。

 →   (借方)預り金  3万円 /(貸方)現 金  3万円

*内訳がわかるように、[所得税預り金]などの勘定科目を使用することもあります。



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5-4.仮払金と仮受金


「 仮払金(資産+)   / □□□□□□□   」
「 □□□□□□□    / 
仮受金(負債+)  

現金などを支払ったり受取ったりしても、それを記入する現金の相手勘定または金額が未確定な時は、一時的に[仮払金・資産勘定]、[仮受金・負債勘定]で処理をします。なお、正しい勘定や金額が判明したときはこれを修正します。


社員の出張にあたり、旅費の概算10万円を現金で渡した。

 →   (借方)仮払金  10万円 /(貸方)現 金  10万円


社員が出張から帰り、旅費 6万を支払ったと報告を受け、残金を受取った。

 →   (借方)旅 費  6万円 /(貸方)仮払金  10万円
     (借方)現 金  4万円 / 


出張中の社員から当座預金に 10万円の振込みがあったが、その内容は現在不明である。

 →   (借方)当座預金  10万円 /(貸方)仮受金  10万円


社員が帰社し、振込みは得意先よりの売掛金の回収との報告を受けた。

 →   (借方)仮受金  10万円 /(貸方)売掛金  10万円


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5-5.商品券と他店商品券


「 □□□□□□□   / 商品券(負債+)  
「 
他店商品券(資産+)/ □□□□□□□   」

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5-5(1).商品券


デパートやスーパーが発行する商品券は、贈答用などの販売促進を目的として発行するものですが、商品券を発行する側にとっては、商品券相当の商品を引き渡す義務があり、[商品券・負債の勘定]を用いて処理します。

商品券を発行した時は負債の増加になり、商品券(当店発行)を受取った時は、引渡し義務が消滅し、負債の減少として処理します。

商品券 10万円を現金で売り渡した。

 →   (借方)現 金  10万円 /(貸方)商品券  10万円


商品30万円を販売し、商品券10万円と現金20万円を受取った。

 →   (借方)商品券 10万円 /(貸方)売 上 30万円
     (借方)現 金 20万円  / 

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5-5(2).他店商品券


商品券勘定が自社発行の商品券で用いるのに対して、他社・他店発行の商品券を取扱う場合は、他店商品券勘定を用います。

商品の販売時に他店の商品券を受取った時は、後日他店から商品券と引換えに商品代金を回収できる権利が生じるので[他店商品券・資産の勘定]の増加として処理します。

他店の商品券を精算するときは、自社保有の他店商品券と他社保有の自社商品券を交換し、差額を現金等で精算します。

商品 8万円を販売し、代金として他店が発行した商品券 10万円と、おつりは現金で戻した。

 →   (借方)他店商品券  10万円 /(貸方)売 上  8万円
                   /(貸方)現 金  2万円 

商品券の精算をし、当店保有の他店商品券30万円と、他店が保有している自店の商品券25万円とを交換し、差額を現金で受取った。

 →   (借方)商品券  25万円 /(貸方)他店商品券  30万円
     (貸方)現 金   5万円 / 




◆確認問題
商品 25万円を売上げ、代金は他店発行の商品券20万円と当店発行の商品券 10万円を受取り、おつり 5万円は現金で戻した。

 →   (借方)他店商品券  20万円 /(貸方)売 上  25万円
     (借方)商 品 券   10万円 /(貸方)現 金  5万円
*当店発行の商品券(負債)を受取った時は、負債の減少になります。


(更新日:2002/05/22)

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