簿記3級・基本テキスト |
3章 商品売買の処理 |
「 繰越商品(資産+) / □□□□□□□ 」
「 仕 入(費用+) / □□□□□□□ 」
「 / 売 上(収益+) 」
(商品売買の、商品の流れ―→、お金の流れ← - -・)┌―――――→┌─────┐――――――┐
│┌ - - - - ・│ A商店 │← - - - ┐ │
││ └─────┘ │ │
│↓仕入先 ・ ↓得意先
┌─────┐ ┌─────┐
│ B商店 │ │ C商店 │
└─────┘ └─────┘
商品売買の仕訳方法には、"分記法"と"三分法"があります。
"分記法"は[商品勘定(資産の勘定)]、[商品売買益勘定(収益の勘定)]に分けて記入する方法です。商品の仕入と販売の仕訳は以下のとおりとなります。
◆ A商店は、B商店から商品 30万円(30個、@1万)を仕入れ、代金は現金で支払った。
(@は単価を示します)
→ (借方)商 品 30万 /(貸方) 現 金 30万
◆ A商店は、上記の商品をC商店に 60万円(30個、@2万)で販売し、代金は現金で受取った。
→
(借方)現 金 60万 /(貸方)商 品 30万
/(貸方)商品売買益 30万
*売上原価 30個×1万=30万 なので、30万円の商品売買益を計上します。
しかしこの方法は、商品を販売するつど、売上た商品の原価を調べる必要があり、実用的ではありません。
そこで、商品勘定を[繰越商品・資産の勘定]、[仕入・費用の勘定]、[売上・収益の勘定]の3つに分割して記入する方法を用います。
これを"三分法"といいます。 商品を仕入れた時は「仕入勘定」で処理し、商品を販売した時は「売上勘定」で処理し、それぞれ「仕入帳」「売上帳」の補助簿に取引きの詳細を記録します。
そして、決算期に商品の実地棚卸しをおこない、期末の商品在庫額を求めます。また前期から繰越された商品と当期の仕入高により、売上原価を求め、売上高より売上原価を差し引いて収益を確定するのです。 (決算の処理は、決算整理の章で詳細解説します。)
・期末の収益は、以下の計算式で算出されます。
売上原価= 前期繰越商品+当期商品仕入高−期末商品棚卸高
売上総利益= 売上高 − 売上原価
◆ A商店は、B商店から商品 30万円(30個、@1万)を仕入れ、代金は現金で支払った。
→ (借方)仕 入 30万 /(貸方)現 金 30万
◆ A商店は、C商店に商品を 60万円(30個、@2万)で販売し、代金は現金で受取った。
→ (借方) 現金 60万 / (貸方) 売上 60万
商 品 有 高 帳商品売買の内訳明細を記録するために補助簿を使用します。仕入取引は「仕入帳」に、売上取引は「売上帳」に記録します。
また、商品の増減と残高の管理をするために、「商品有高帳」を使い、商品の種類ごとに記録します。
「商品有高帳」は、受入高、払出高、残高の項目について、数量・単価・金額を記入して商品残高の内訳明細を記録します。記帳する金額はすべて仕入原価で記入し、売価はいっさい考えませんが、商品の払出し単価の決定にはいくつか方法があります。
"先入先出法"は、先に受け入れたものから順番に払い出すものと仮定して、払出し単価を決定する方法です。
"移動平均法"は、単価の異なる商品を受け入れたつど平均の単価を計算し、それを次の払出し単価とする方法です。計算式は、(直前の残高金額+受入金額)÷(直前の残高数量+受入数量)で求めます。
◆ 当月の商品の仕入れおよび売上は次のとおりである。
先入先出法、移動平均法それぞれの方法で商品有高帳を作成しなさい。
5/ 1 前月繰越 5個 @20
5/ 7 仕 入 15個 @24
5/19 売 上 15個 @45(売価)
→
*仕入単価が異なるものを同時に払出した場合、仕入単価が異なるものが残高となった場合、これをカッコでくくります。(カッコがうまく表現できてません..)
帳簿の締切は、残高の次期に繰越す数量・単価・金額を払出欄に記入し、受入欄の数量・金額の合計と、一致することを確かめて締切ります。
*「商品有高帳」には常に、払出数量と残存数量が明かにされているので(これを帳簿棚卸数量といいます)、 「売上原価」が計算されていることになります。
売上原価は 期首商品棚卸高+当期商品仕入高−期末商品棚卸高で求めますが、「商品有高帳」の受入欄の前月繰越商品と当月に仕入れた商品の合計を求め、残高欄の金額を差引けば計算できます。
(払出欄の合計金額で次月繰越金額を含めない金額と同額です。)
売上総利益は、売上高 − 売上原価 の計算式で、求められます。
売上高は「売上帳」の合計金額より求め、前記の売上原価を差引いて売上総利益を求めます。
なお、売上原価は、帳簿棚卸数量にもとづくもので、実際には期末に実地棚卸しをして、期末棚卸高を求めます。
◆ A商店の「売上帳」・「商品有高帳」の合計はつぎのとおりである。売上総利益を求めなさい。
- 「売上帳」の売上高合計51万
- 「商品有高帳」の受入高合計 52万
- 引渡高合計36万(引渡高は、払出合計より次月繰越金額を含めないもの)
- 残高 16万
→ 15万*売上高は、売上帳の金額欄を合計より、売上原価は「商品有高帳」の受入高(52万)−残高(16万)で求めます。
よって、売上総利益は、売上高(51万)− 売上原価(36万)= 15万
引渡高欄の金額の表示がありこれと同額です。
「 売掛金(資産+) / □□□□□□□ 」
「 □□□□□□□ / 買掛金(負債+) 」
[売掛金・資産の勘定]とは、商品の売上や加工、役務提供などによる営業利益の未収金で、信用販売または掛販売によって生じ、得意先に対する債権となります。
増加は借方に、後日回収し減少したときは貸方に記入します。
◆ A商店は、C商店に商品 30万円を販売し、代金は掛けとした。
→ (借方)売掛金 30万 /(貸方) 売 上 30万
[買掛金・負債の勘定]とは、商品の仕入れなどによる代金の未払金のことで、信用買入れまたは掛取引により生じます。
将来の現金の減少を示し、仕入先に対する債務となります。増加は貸方、後日支払い減少したときは借方に記載されます。
◆ A商店は、B商店から商品 30万円を仕入れ、代金は掛けとした。
→ (借方)仕 入 30万 /(貸方) 買掛金 30万
◆ A商店は、かねてB商店に注文しておいた商品 30万円を受取り、代金のうち 10万円は注文時に支払った内金と相殺し、残りは月末に支払うことにした。
→
(借方)仕 入 30万 /(貸方)前払金 10万
/(貸方)買掛金 20万
*商品売買で「月末払い」とあれば、後日代金を支払うことになるので、掛取引となり、未収金勘定でなく必ず買掛金勘定で処理します。
*内金(手付金)は、商品代金の一部を前払いしていたものです。商品を購入したときには、その代金と相殺する仕訳をします。
.
取引先ごとの債権・債務の状態を把握するため、取引先の商店名をつけた勘定(これを人名勘定といいます)を設けて仕分けすることもあります。
.
売掛金管理のため、得意先ごとに人名口座を設けて発生順に記入する補助簿を「売掛金元帳(得意先元帳)」といい、同様に、買掛金債務を明らかにするために、仕入先ごとに発生順に記入する補助簿を「買掛金元帳(仕入先元帳)」といいます。
売 掛 金 元 帳
買 掛 金 元 帳
大 阪 商 店
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平成│摘 要┃ 借 方 ┃ 貸 方 ┃借また┃ 残 高
13年│ ┃ ┃ ┃は 貸┃
──┼────╂───────╂───────╂───╂───────
1/1│前月繰越┃ 150┃ ┃ 借 ┃ 150
6│売 上┃ 50┃ ┃ 〃 ┃ 200
12│値 引┃ ┃ 5┃ 〃 ┃ 195
16│売 上┃ 20┃ ┃ 〃 ┃ 215
25│入 金┃ ┃ 115┃ 〃 ┃ 100
30│次月繰越┃ ┃ 100┃ ┃
│ ┠───────╂───────┨ ┃
│ ┃ 220┃ 220┃ ┃
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2/1│前月繰越┃ 100┃ ┃ 借 ┃ 100
横 浜 商 店
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平成│摘 要┃ 借 方 ┃ 貸 方 ┃借また┃ 残 高
13年│ ┃ ┃ ┃は 貸┃
──┼────╂───────╂───────╂───╂───────
1/1│前月繰越┃ ┃ 230┃ 貸 ┃ 230
8│仕 入┃ ┃ 100┃ 〃 ┃ 330
13│仕 入┃ ┃ 130┃ 〃 ┃ 460
14│返 品┃ 20┃ ┃ 〃 ┃ 440
27│支 払┃ 260┃ ┃ 〃 ┃ 180
30│次月繰越┃ 180┃ ┃ ┃
│ ┠───────╂───────┨ ┃
│ ┃ 460┃ 460┃ ┃
━━│ ┃━━━━━━━┃━━━━━━━┃━━━┃━━━━━━━
2/1│前月繰越┃ ┃ 180┃ 貸 ┃ 180
*帳簿の締切は、月末の日付で借方と貸方の金額を一致させるため、月末の残高を借方または貸方に記入し、摘要は次期繰越と記入します。この時、日付・摘要・金額とも朱記(赤で記入)またはカッコ書きします。
また、上記の表では太線になっていますが、実際は赤の二重線(これを締切線といいます)で締切ります。その後に、翌月初の日付で前月繰越分を借方または貸方に記入し、残高も忘れず記入します。
「 発送費(費用+) / □□□□□□□ 」
商品を仕入れる際に要する付帯費、商品を販売する時に発生する付帯費など、商品の売買に伴う諸費用を"諸掛り"といいます。
.商品を仕入れる際に要する引取運賃、運送保険料、関税などの仕入付帯費(仕入諸掛り)は、商品の[仕入・資産の勘定]に合算して処理します。
なお、仕入付帯費(仕入諸掛り)を立替払いした場合は、先方負担の費用とし、仕入には加算せず立替金で処理するか、または買掛金と相殺します。
◆ B商店から商品 50万円を仕入れ、代金は掛けとした。なお、引取運賃1万円は現金で支払った。
→
(借方)仕 入 51万円 /(貸方)買掛金 50万円
/(貸方)現 金 1万円
◆ B商店から商品 50万円を仕入れ、代金は掛けとした。なお、引取費用1万円は現金で立替払いした。
→
a)(借方)仕 入 50万円 /(貸方)買掛金 50万円
(借方)立替金 1万円 /(貸方)現 金 1万円
または、
b)(借方)仕 入 50万円 /(貸方)買掛金 49万円
/(貸方)現 金 1万円
商品を販売する時に発生する、発送運賃、荷造費用、運送保険料などの売上付帯費(売上諸掛り)は、[発送費・費用の勘定]などで処理するか、[販売費・費用の勘定]を設けて一括で処理をします。
なお、売上付帯費(売上諸掛り)を立替払いした場合は、先方負担の費用とし、売上には加算せず立替金で処理するか、または売掛金に含め処理します。
◆ C商店に商品 10万円を販売し、代金は掛とした。なお、発送費1万円は現金で支払った。
→
(借方)売掛金 10万円 /(貸方)売 上 10万円
(借方)発送費 1万円 /(貸方)現 金 1万円
◆ C商店に商品 10万円を販売し、代金は掛とした。なお、発送費1万円は現金で立替払いした。
→
a)(借方)売掛金 10万円 /(貸方)売 上 10万円
(借方)立替金 1万円 /(貸方)現 金 1万円
または、
b)(借方)売掛金 11万円 /(貸方)売 上 10万円
/(貸方)現 金 1万円
◆確認問題
C商店に商品30万円を売り上げ、代金は掛とした。なお、発送運賃(C商店負担)2万円を小切手を振出し支払った。
→
(借方)売掛金 32万円 /(貸方)売 上 30万円
(借方) /(貸方)当座預金 2万円
または、
(借方)売掛金 30万円 /(貸方)売 上 30万円
(借方)立替金 2万円 /(貸方)当座預金 2万円
*商品販売時の先方負担(取引先負担)の発送費は、売掛金に含めるか、立替金で処理します。
商品を仕入れる際に発生する、返品(仕入返品、仕入戻し)、値引(仕入値引)の場合は、[仕入・費用の勘定]で、取引を取り消す処理を行います。
商品を販売したときに発生する、返品(売上返品、売上戻し)、値引(売上値引)の場合は、[売上・収益の勘定]で、取引を取消す処理をします。
◆ B商店から掛けで仕入れた商品のうち不良品があり7万円分を返品した。また、一部商品に汚損があり3万円の値引きを引受けた。
→
(借方)買掛金 7万円 /(貸方)仕 入 7万円
(借方)買掛金 3万円 /(貸方)仕 入 3万円
◆ 販売した商品のうち不良品があり 3万円分が返品されてきた。また、一部にキズものがあり、2万円分値引きした。
→
(借方)売 上 3万円 /(貸方)売掛金 3万円
(借方)売 上 2万円 /(貸方)売掛金 2万円
「 前払金(資産+) / □□□□□□□ 」
「 □□□□□□□ / 前受金(負債+) 」
商品売買契約を結ぶときにその代金の一部を"手付金"(内金)として授受した場合には、前払金勘定または前受金勘定で処理します。
商品を買う約束をし、商品を引き取る前に支払った"手付金"または"内金"は、後日商品を受取る権利を持つので[前払金・資産の勘定]または[支払手付金・資産の勘定]で処理をします。
なお、後日商品を受取ったときは、その代金を相殺します。
◆ B商店から商品 50万円を買う約束をし、手付金として15万円を小切手を振出して支払った
→ (借方)前払金 15万円 /(貸方)当座預金 15万円
*50万円は単なる契約で、資産等に変動は生じません。手付金のみの仕訳になります。
◆ B商店から50万の商品を仕入れ、先に支払った手付金(内金)15万円を控除して、差額は小切手で支払った。なお、引取運賃1万円は現金で支払った。
→
(借方)仕 入 51万円 /(貸方)前 払 金 15万円
/(貸方)当座預金 35万円
/(貸方)現 金 1万円
*商品の仕入諸掛り(引取運賃)は、仕入勘定に含めて処理します。
商品を売買する約束をし、商品を引き渡す前に受取った手付金または内金は、後日商品を引き渡す義務を持つことになり[前受金・負債の勘定]または[受取手付金・負債の勘定]として処理をします。
なお、後日商品を引き渡したときは、その代金と相殺します。
◆ 大阪商店から商品 50万円を売る約束をし、手付金として15万円を同店振出しの小切手で受取った
→ (借方)現 金 15万円 /(貸方)前受金 15万円
*50万円は単なる契約で、資産等に変動は生じません。手付金のみの仕訳になります。
◆ A商店はC商店へ 50万円を売り上げ、代金は注文時に受取った内金5万円を差し引き、20万円を同店振出し当店宛の約束手形で受取り、残額は月末に受取ることにした。
→
(借方)前 受 金 5万円 /(貸方)売 上 50万円
(借方)受取手形 20万円 /
(借方)売 掛 金 25万円 /
*当店宛の約束手形の受取りは、受取手形(資産の勘定)で処理します。