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簿記2級・基本テキスト −商業簿記− 


8章 株式会社の会計 2




 !まず、3級合格テキストで復習してください。
  ・3級  7章-3 税金


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8-1.株式会社の税金


株式会社が納める税金には様々なものがありますが、簿記の観点からは、(1)会社の利益に対して課される法人税・住民税・事業税、(2)費用として処理される、固定資産税・印紙税、(3)資産購入の付随費用として固定資産の取得原価に含める、不動産取得税や登記登録税、および(4)消費税に分類されます。

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(1)法人税等

株式会社など法人格をもった会社の利益に対して課される税金には法人税・住民税・事業税があり、合わせて"法人税等"といいます。

個人企業の場合は、"所得税"が課されるのに対して、株式会社などの法人の場合は"法人税"が国から課されます。"住民税"は、都道府県および市町村が課す税金です。

"事業税"は、事業活動をおこなっている個人や会社に対して都道府県が課す税金です。
なお、電力会社、ガス会社および保険会社等の事業税は、所得(利益)に対してではなく、収入金額に対して課税されます。

住民税と事業税は、申告および納付の方法が法人税に準じて行われるので、まとめて、[法人税等・費用の勘定]で処理します。


(1)中間納付
年1回決算の会社は、前年度の法人税の1/2または、期首から6ヶ月の中間仮決算を行い法人税を申告し納付します。これを"中間申告""中間納付"といいます。
納付した法人税額は、法人税が確定する前にその一部を仮払いするものと考えて仮勘定である[仮払法人税等・資産の勘定]で処理します。

  (借方)仮払法人税等  ××× /(貸方)現 金  ×××

(2)決算
決算で確定した法人税額について、[法人税等・費用の勘定]に振り替えます。同時に、中間納付の金額について[仮払法人税等・資産の勘定]を相殺し、差額を[未払法人税等・負債の勘定]の貸方に記入します。

  (借方)法人税等  ××× /(貸方)仮払法人税等 ××× 
                /(貸方)未払法人税等 ××× 


(3)確定申告のとき
決算日後2ヶ月以内に確定申告を行います。中間納付額を差し引いた残額を納付し、[未払法人税等・負債の勘定]の借方に記入し相殺します。

  (借方)未払法人税等  ××× /(貸方)当座預金 ×××  


◆ 次の一連の取引の仕訳をしなさい。
(1) 中間報告により法人税等5,000円を現金で支払った。
(2) 決算で本年度の法人税等が9,000円と確定した。
(3) (2)の法人税等を小切手を振り出して支払った。



(1)(借方)仮払法人税等 5,000 /(貸方)現 金     5,000
(2)(借方)法人税等   9,000 /(貸方)仮払法人税等  5,000
                /(貸方)未払法人税等  4,000
(3)(借方)未払法人税等 4,000 /(貸方)当座預金    4,000



(1)中間報告により支払った法人税等は仮払法人税等で処理します。
(2)決算により確定した法人税等から仮払法人税等を差し引いた額を未払法人税等とします。
(3)仮払法人税等は納付済みなので、ここで支払うのは未払法人税等になります。



なお、前期以前の法人税等について追加の納付(追徴)を受けたときは[法人税等追徴税額勘定]で、払戻し(還付)を受けたときには[法人税等還付税額勘定]で処理します。

 (借方)法人税等追徴税額 ××× /(貸方)現 金      ××× 
 (借方)現 金      ××× /(貸方)法人税等還付税額 ××× 



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(2)租税公課

株式会社が納める主な税金のうち、費用となる税金には、固定資産税・印紙税などがあり、[租税公課・費用の勘定]または固定資産税など個々の税金名を付けた勘定を用いて処理します。
処理方法には、”税額確定時に費用計上する方法”と”税金納付時に費用計上する方法”の2つの方法があります。


・税額確定時に費用計上する方法
(1)納税通知書を受け取ったとき
借方に租税公課勘定または[固定資産税・費用の勘定]を記入し、貸方には、税金は未払いなので[未払税金・負債の勘定]を記入します。

  (借方)租税公課  ××× /(貸方)未払税金  ×××  


(2)納付したとき
固定資産税は通常年4回に分けて納付します。納付したときは、その分を未払税金勘定の借方に記入し負債を減少させます。

  (借方)未払税金  ××× /(貸方)現 金  ×××  


・税金納付時に費用計上する方法
(1) 納付したとき
納税通知書を受け取った時点(税額確定時)では費用計上せずに、納付したときに、その分を租税公課勘定の借方に記入します。

  (借方)租税公課  ×××  /(貸方)現金  ××× 


(2) 決算のとき
固定資産税の未納分を費用として追加計上します。このとき未払い分を未払税金勘定の貸方に記入します。

  (借方)租税公課  ×××  /(貸方)未払税金  ××× 




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(3)消費税等

消費税は国内での商品の販売やサービスの提供などの取引に対して国が課す税金です。また、これとは別に都道府県が課す地方消費税があります。簿記上では、この消費税と地方消費税を合わせて "消費税"として処理します。

消費税は、最終的に消費者が負担することになりますので、企業の損益に影響をおよぼさない税金です。企業は商品の販売やサービスの提供の際、消費税を上乗せして取引し、その差額を国に申告・納付します。会計処理には"税抜方式"と"税込方式"と呼ばれる2つの方法があります。


・"税抜方式"の場合
消費税等は、売上取引などで受け取った消費税額から、仕入取引で支払った消費税額の差額を申告・納付します。したがって、取引きの際には仮勘定である[仮受消費税・負債の勘定]・[仮払消費税・資産の勘定]で処理します。
決算時には、預かった消費税である仮受消費税と支払った消費税である仮払消費税の残高を相殺し、その差額について、
仮受消費税>仮払消費税の場合は[未払消費税・負債の勘定]で、
仮受消費税<仮払消費税の場合は[未収消費税・資産の勘定]に計上します。

消費税等についても、決算から2カ月以内に確定申告書を提出し、税額を納付しなければなりません。
税額を納付した場合には、未払消費税勘定の借方に記入します。なお、未収消費税については、確定申告後、その金額を受け取った時に、未収消費税等勘定の貸方に記入します。


(1)消費税を支払ったとき

   (借方)仕 入     ××× /(貸方)当座預金 ××× 
   (借方)仮払消費税   ××× /

(2)消費税を受け取ったとき

   (借方)当座預金 ××× /(貸方)売 上    ×××  
                /(貸方)仮受消費税  ×××  

(3)決算時
 a)仮受消費税>仮払消費税の場合
   (借方)仮受消費税 ××× /(貸方)仮払消費税  ×××  
                 /(貸方)未払消費税等 ×××  

 b)仮受消費税<仮払消費税の場合
   (借方)仮受消費税  ××× /(貸方)仮払消費税  ×××
   (借方)未収消費税等 ××× /

(4)確定申告・納付時
 a)仮受消費税>仮払消費税の場合、差額を納付
   (借方)未払消費税等  ××× /(貸方)当座預金  ×××  
 b)仮受消費税<仮払消費税の場合、差額の還付を受ける
   (借方)当座預金  ××× /(貸方)未収消費税等  ×××  


・"税込方式"の場合
税込方式では、購入価格や販売価格に消費税を含めて処理し、決算時に納付すべき消費税額を計算します。
 仮受消費税>仮払消費税の場合は、租税公課勘定の借方と[未払消費税・負債の勘定]の貸方に計上し、
仮受消費税<仮払消費税の場合は[未収消費税・資産の勘定]の借方と雑益勘定(または雑収入勘定)の貸方に計上します。
税額の納付時は"税抜方式"と同じ処理になります。

(1)消費税を支払ったとき
  (借方)仕 入   ××× /(貸方)当座預金  ××× 

(2)消費税を受け取ったとき
  (借方)当座預金  ××× /(貸方)売 上   ×××  

(3)決算時
 a)仮受消費税>仮払消費税の場合
  (借方)租税公課   ××× /(貸方)未払消費税等 ××× 
 b)仮受消費税<仮払消費税の場合
  (借方)未収消費税等 ××× /(貸方)雑益     ××× 

(4)確定申告・納付時
 a)仮受消費税>仮払消費税の場合、差額を納付
  (借方)未払消費税等 ××× /(貸方)当座預金   ×××  
 b)仮受消費税<仮払消費税の場合、差額の還付を受ける
  (借方)当座預金   ××× /(貸方)未収消費税等 ×××  


次の一連の取引について仕訳しなさい。なお、”税抜方式”による。
(1) 商品を¥100,000で仕入れ、代金は¥5,000の消費税とともに小切手を振り出して支払った。
(2) 上記の商品を¥120,000で販売し受取った代金はすぐに当座預金に預け入れた。なお、消費税は5%とする。
(3) 決算にあたり、上記の商品売買にかかわる消費税の納付額を確定した。
(4) 確定申告を行い、上記の確定した消費税を現金で納付した。



(1) (借方)仕 入    100,000 /(貸方)当座預金   105,000 
  (借方)仮払消費税   5,000 /
(2) (借方)当座預金   126,000 /(貸方)売 上    120,000 
                 /(貸方)仮受消費税   6,000 
(3) (借方)仮受消費税   6,000 /(貸方)仮払消費税   5,000 
                 /(貸方)未払消費税   1,000 
(4) (借方)未払消費税   1,000 /(貸方)現 金     1,000 



(3) 仮受消費税>仮払消費税なので、決算で[未払消費税・負債の勘定]に計上し、 その差額を確定申告で納付します。

前記の問題について、"税込方式"で仕訳をしなさい。


 (1) (借方)仕 入     105,000 /(貸方)当座預金    105,000 
 (2) (借方)当座預金    126,000 /(貸方)売 上     126,000 
 (3) (借方)租税公課     1,000 /(貸方)未払消費税等   1,000 
 (4) (借方)未払消費税    1,000 /(貸方)現 金      1,000 



仮受消費税>仮払消費税の場合は、租税公課勘定の借方と[未払消費税・負債の勘定]の貸方に計上します。


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8-2.銀行勘定調整表


当座預金勘定については、企業側の残高と銀行側の残高が必ずしも一致しません。
これは、企業における当座預金勘定の記録と銀行におけるその企業に対する当座預金勘定の記録がタイミングのうえで不一致となることがあるためです。

決算日や月末には、残高を確認するために銀行から「当座預金残高証明書」を請求します。そして、残高を照合しその不一致原因を明らかにし、金額等を修正するために、「銀行勘定調整表(または、当座預金勘定調整表ともいいます)」を作成します。そして、修正仕訳を行います。



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(1)残高不一致原因

残高が一致しない原因には、次のようなものがあります。
なお、時間の経過とともに一致するものもあり、これについては修正仕訳が不要ですが、修正仕訳が必要なものもあります。

銀行側の調整項目

(1)時間外預入(締め後入金) −企業で増加分処理済、銀行で未処理

銀行の営業時間終了後に預け入れることをいいます。企業側は預け入れ当日に当座預金の増加として処理しますが、銀行側は翌営業日の入金として処理されますので、残高が一致しません。

しかし、時間の経過で残高は一致することになりますので、修正仕訳は必要ありません。


(2)未取立小切手  −企業で増加分処理済、銀行で未処理
他人振り出しの小切手を銀行に預け入れて取り立てを依頼しているが、銀行がまだ取り立てていない小切手を未取立小切手といいます。企業側は預け入れたときに当座預金の増加として処理していますが、銀行側は取り立てていないので残高が一致しません。

しかし、時間の経過とともに残高は一致するので、修正仕訳は必要ありません。


(3)未取付小切手  −企業で減少分処理済、銀行で未処理
振り出して取引先に渡したが、取引先がまだ銀行に呈示(取り付け)していない小切手を未取付小切手といいます。企業側は振り出したときに当座預金の減少で処理していますが、銀行側は小切手が呈示されていないので残高が一致しません。

しかし、時間の経過とともに残高は一致するので、修正仕訳は必要ありません。



企業側の調整項目

(4)未渡小切手  −企業で増加分処理済
振り出した小切手を取引先に渡しておらず、手許に残っていることを言います。企業側は振り出したときに当座預金の減少で処理していますが、取引先に未渡しのため銀行側は記帳していないので残高が一致しません。

この場合、小切手を抹消する処理が必要になります。したがって、修正仕訳が必要です。

(5)入金連絡未通知  −企業で増加分未処理、銀行で処理済
(6)引落連絡未通知  −企業で減少分未処理、銀行で処理済
銀行側が、企業側に当座振込の通知や引落としの通知をしていないことを言います。銀行側は処理済ですが、企業側は未記帳なので残高は一致しません。
当座預金の入出金が行われているので、これに伴う修正仕訳が必要です。

(7)誤記入 −銀行で処理済、企業で未処理
企業側が金額を間違えて記帳していた場合を言います。間違えた金額については、当然修正仕訳が必要です。



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(2)銀行勘定調整表の作成

当座預金の残高と、銀行の残高証明書との不一致を明らかにするために作成するのが、「銀行勘定調整表」です。不一致については時間の経過とともに一致するものもありますが、決算日においては不一致の原因をすべて明らかにする必要があります。

作成方法には、銀行の残高証明書の金額を基準とし不一致の原因を調整し、正しい当座預金勘定の残高に一致させる方法の"銀行残高調整法"、企業の残高証明書の金額を基準とする"企業残高調整法"、両者の残高を調整し一致させる "両者区分法"(または"銀行残高・企業残高調整法"といいます)があります。


当社の現在の当座預金勘定の残高が10,000、銀行の残高証明書の金額は6,400であったので、不一致の原因を調べたところ、次のことが判明した。両者区分法で銀行勘定調整表を作成しなさい。

(1)当座預金に¥2,000預け入れたが、銀行では翌日預りとして処理されていた。
(2)得意先から受入れた小切手¥900の取立を銀行に依頼したが、銀行がまだ取り立てていなかった。
(3)仕入先に対する買掛金支払のため振出した小切手¥1,000について、取引先がまだ銀行に呈示(取り付け)していなかった。
(4)仕入先に対する買掛金支払のため、小切手¥800を振出したが、まだ手渡されていないままであった。
(5)得意先からの売掛金の支払として、当座預金に¥1,000が振りこまれたが、当店には通知が未達であった。
(6)得意先へ手形代金¥3,000の引落が、当店に未達のため未記帳になっていた。
(7)仕入先に対する買掛金の支払いの際、¥2,500を¥2,000と記帳していた。



               銀行勘定調整表
─────────────────┬─────────────────
当社の帳簿残高       10,000│銀行の残高証明書残高    6,400 
 (加算)            │(加算)            
(4)・ 未渡小切手    800    │  締め後入金   2,000     ・(1)
(5)・ 入金連絡未通知 1,000  1,800│  未取立小切手   900  2,900 ・(2)
          ───    │        ────    
  (減算)           │(減算)            
(6)・ 引落未通知   3,000    │  未取付小切手      1,000 ・(3)
(7)・ 誤記入      500  3,500│                 
          ───────┤       ─────────
               8,300│              8,300





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(3)修正仕訳

決算で、貸借対照表の当座預金をあるべき残高に修正するために"決算整理仕訳"をおこないます。
銀行勘定調整表の作成後、企業の当座預金勘定残高の修正事項について修正仕訳をします。
 修正が必要なのは、銀行で処理済で企業では未処理のもので、未渡小切手、連絡未通知、誤記入です。

(1)未渡小切手
・買掛金などの債務を支払うために振り出していた場合は、貸借逆の仕訳をします。
 振り出したときの仕訳
  (借方)買掛金    800 /(貸方)当座預金   800 
 修正仕訳
 →(借方)当座預金   800 /(貸方)買掛金    800 −上記問題(4)

・費用を支払うために振り出していた場合は、費用はすでに発生しているので、費用は減らさずに未払金として処理します。
  振り出したときの仕訳
  (借方)広告費   10,000 /(貸方)当座預金  10,000 
 →修正仕訳
  (借方)当座預金  10,000 /(貸方)未払金   10,000 

(2)連絡未通知
・当座振込または当座引落しが企業に未通知である場合、未達分の仕訳を行います。
 →修正仕訳
  (借方)当座預金   1,000 /(貸方)売掛金    1,000 −上記問題(5)
  (借方)支払手形   3,000 /(貸方)当座預金   3,000 −上記問題(6)

(3)誤記入
・誤記入分の仕訳を行います。
 →修正仕訳
  (借方)当座預金    500 /(貸方)買掛金    500  −上記問題(7)
  売掛金の振込額5千円を6千円と誤記入した



 次の資料から、下記の様式の銀行勘定調整表を作成しなさい。また、決算時に必要な修正仕訳を示しなさい。 

(資料)当店の決算日(平成15年3月31日)現在の当座預金勘定の残高は¥225,000であったが、銀行から受取った残高証明書の残高は¥314,000であったので、原因を調査したところ次の事実が判明した。
(1) 決算日に¥40,000を当座預金口座に振込んだが、銀行では翌日付で預金記入していた。
(2) 得意先から売掛金の支払として当座預金口座に¥56,000が振込まれていたが、決算日までに通知が届いていなかったので未記入であった。
(3) 仕入先に小切手¥73,000を振り出して買掛金を支払ったが、決算日以前に取立てが行われなかった。

      銀行勘定調整表    平成15年3月31日 
  ─────────────────────────
  当座預金勘定残高            
  (加算)   
                    ───── 
          
  (減算)   
                    ───── 
  (調整残高)     
                    ━━━━━ 



      銀行勘定調整表    平成15年3月31日
  ─────────────────────────
  当座預金勘定残高           225,000   
  (加算) 売掛金振込分  56,000         
       未取立小切手  73,000   129,000   
                    ─────  
                     354,000   
  (減算) 翌日付預入分  40,000   40,000   
                    ─────  
                     314,000   
                    ━━━━━  

 決算修正仕訳
 (借方)当座預金   56,000 /(貸方)売掛金   56,000 



企業の残高証明書の金額を基準とし修正する"企業残高調整法"の問題です。


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8-3.まとめ












(更新日:2002/09/29)

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