.

 前章 へ

簿記3級・基本テキスト 


7章 その他の勘定の処理


.
7-1.引出金


「 □□□□□□□□□ / 資 本 金 (資本+)  」
 引 出 金 (資本−)  / □□□□□□□□□ 」

個人企業においても、企業主(店主)が出資した財産(元本)は、資本金勘定に記帳します。

これとは別に、個人企業の企業主が私用のために、家計からではなく、店の財産(元本)を持ち出す場合もあります。このような支出は営業上の費用と区別して記帳する必要があり、[資本金勘定]に記帳する方法と、[引出金・資本のマイナス勘定]に記帳する方法があります。後者の場合、決算時に、資本金勘定と相殺します。

なお、営業上の商品を企業主が私用のために引き出した場合には、商品の仕入原価を引出金勘定に記録します。

店主が営業用の現金 10万円を家計費として私用で引き出した。

 →  (借方)資本金  10万円 /(貸方)現 金  10万円 −a
または、
 →  (借方)引出金  10万円 /(貸方)現 金  10万円 −b



上記bについて決算時、引出金勘定 10万円を資本金勘定に振替えた。

 →   b) (借方)資本金  10万円 /(貸方)引出金  10万円

*決算では、引出金という仮勘定を整理します。


店主の生命保険料 5万円と建物の火災保険料10万円を小切手を振出して支払った。ただし、火災保険料のうち50%は店主個人用住居部分に対してである。

 → (借方)支払保険料   5万円 /(貸方)当座預金  15万円
  (借方)引 出 金  10万円 / 

*店主個人が負担すべき私用の支出はすべて引出金勘定を用いて処理します。
 引出金=店主生命保険料 5万円+店主居住部分火災保険料 5万円
 

.
7-2.収益勘定と費用勘定


「 □□□□□□□□□ / 収  益 (+)  」
 費  用 (+)  / □□□□□□□□□ 」

利益を増加させる内訳科目と利益を減少させる内訳科目に分けたとき、利益を増加させる科目を"収益(利益)"といい、利益を減少させる科目を"費用(損失)"といいます。

.
7-2(1).収益勘定


収益科目
 ・売上
 ・受取利息、受取配当金、有価証券売却益、受取地代(家賃)、受取手数料、雑益、雑収入ほか
 ・固定資産売却益ほか

 *雑益または雑収入は、古新聞などの売却代金などのようなもので、営業活動に直接関係のない取引きで、まれにしか発生せず、金額も少ない収益を記録します。

不用になった新聞を 500円で売却し、代金は月末に受取ることにした。

 →   (借方)未収金   500円 /(貸方)雑 益  500円
  または、
     (借方)未収金   500円 /(貸方)雑収入  500円


.
7-2(2).費用勘定


費用科目
 ・仕入、売上原価
 ・販売費および一般管理費
 ・支払利息(割引料)、有価証券売却損ほか
 ・固定資産売却損、災害損失ほか


.
7-2(3).販売費および一般管理費


営業活動と直接関係のない経費は、「販売費および一般管理費」という大科目で処理することもあり、その時は「経費明細帳」という補助簿に内訳科目ごとの明細を記録します。

 内容は、販売費として、販売手数料、運搬費、広告宣伝費、会議費、発送費など。
 一般管理費として、従業員の給料、賞与、退職金のほか、旅費交通費、通信費、交際費、光熱費、消耗品費、法定福利費、福利厚生費、租税公課、支払保険料、支払家賃(地代)、雑費などがあります。

 販売に従事する従業員の給料や旅費等は販売費とするべきなど、販売費なのか一般管理費なのか明確に区別することが困難であるため、まとめて「販売費および一般管理費」として処理します。

 ・法定福利費は、従業員の健康保険、厚生年金、雇用保険などは、個人負担分と会社負担分があり、そのうち会社(雇用者)が負担する費用。
 ・福利厚生費は、従業員の慰安旅行の費用など福利厚生の諸費用。
 ・通信費は、電話料金、郵便ハガキ・切手代、テレホンカードなど。
 ・雑費は、新聞代、コーヒー代など。
 ・租税公課は、[租税公課・費用の勘定]を設けて処理するのが一般的です。


従業員の給料総額 800万円のうち、所得額の源泉徴収分10万円を差し引き、手取金を現金で支給した。

 → (借方)給 料  800万円 /(貸方)預り金  10万円
               /(貸方)現 金  790万円



.
7-3.税 金


 租税公課  (費用+) / □□□□□□□□□ 」
 引出金  (資本−)  / □□□□□□□□□ 」

個人企業であっても、様々な税金が課されます。

国が課す税金(国税)として、所得税、法人税、印紙税があり、地方公共団体が課す税金(地方税)に住民税、事業税、固定資産税があります。
簿記の観点からは、費用(経費)としての性格をもつものかどうかで処理が異なります。

費用(経費)としての性格をもつ税金には、事業税、固定資産税、登録免許税や印紙税があります。

納付した際に、一般的に[租税公課・費用の勘定]を設けてまとめて処理します。
また、[固定資産税・費用の勘定]や[印紙税・費用の勘定]など独立した勘定を設けて処理することもあります。


 固定資産の納税通知書40万円を受取ったので、小切手を振出し支払った。

 →  (借方)租税公課 40万円 / (貸方)当座預金 40万円

*租税公課の代わりに[固定資産税・費用の勘定]でもよい。


.
費用とならない税金には、所得税、住民税(都道府県民税・市町村税)があります。

個人企業の場合、企業の純利益は事業主個人の所得とみなされ、所得税が課されます。(株式会社の場合は法人税が課されることになります。) 

所得税は、通常、前年度の所得税額を基にした税額を2期(7月と11月)に分けて納付し、翌年に所得が確定したときに差額を3期分として納付します。
納付した際には、[引出金勘定・資本のマイナス勘定]または[資本金勘定]の借方に記入し処理します。


 前年度の事業所得に対する所得税額を計算したところ、50万円であることが明らかとなったため、第1期と第2期の納税額30万円を差引いた税額を現金で納付した。
なお当店では、期中の資本引出しのために引出金勘定を設けている。

 →  (借方)引出金  20万円 / (貸方)現 金  20万円



(更新日:2002/09/07)

 次章 へ