石田和助 (いしだ わすけ)
基本事項 住所 若松紺屋町
身分・家族

石田龍玄の次男、嘉永六年九月生まれ。父は農家の出で公家の側醫格となり士分に登用された(七人扶持)。母はちえ子(中村為七郎の娘)。兄の伍助は、後の日下義雄。

誕生・特徴

嘉永六年九月生まれ。
剛直、酒を好む。髪は総髪、頭大きく、頬淡紅く、肥え、眉濃く、眼大きく、顎長くとがる。

日新館での学籍 毛詩塾二番組
出陣時の服装

薄茶色の筒袖羽織、同色のズボン、刀(関兼定)を革にて下げる。

戒名 秋山義遊居士
家紋  丸に木瓜
略伝・逸話

■石田和助君事蹟(白虎隊事蹟)

■石田和助君の傳

 君の父は龍玄といい、母は中村為七郎相雄(すけたけ)の娘でちえ子といった。君五歳の時母堂は没した。君の兄は後長崎、福島県等の知事とし、また銀行家として名声のあった日下義雄君である。(義雄君の旧称を伍助という)
 龍玄君は少時より醫(医)を学び、農家より起って公家の側醫格となり(本藩の制度により士分即ち羽織の紐に花色を許されたるもの以上の子弟に限り、日新館四塾に入ることを得た。龍玄君が側醫格即ち士分となりたるは、義雄君が就学年齢十歳に達したる後の事であった。その頃就学年齢を超えて日新館に入学せる者窪田芳太郎がいた。その父伴治が、元治甲子七月十九日長藩の賊徒が禁闕(きんけつ)を犯した時、京都唐門前で一番槍を入れ戦死せるにより、士分に登用せられたのだと聞いた)、七人扶持を頂戴し(一人扶持は、玄米四斗俵四個半で、即ち一石八斗である。一人の食料を一日五合とし、一ヵ年三百六十日として計算して出た数である)、若松紺屋町に住し、医師として遠近に名高かった。
 君は嘉永六年九月に生まれたが、母君病に罹って君を乳養することが出来ない。そこで家婢の郷里なる遠村に託したところが、家婢もまた妊娠して君を乳養することが出来ない。因って君を相雄君の妾に託したが、また幾程もなく従兄の石田昌訪(しょうほう)の妻に養われた。次いで母君が没したから、遂に継母の養育するところとなった。
 君、性質剛直で、酒を嗜み、学を好んだ。十歳で日新館に入り、毛詩塾二番組に編入され、勉学怠ることがなかった。学校の帰途、必ず昌訪の家に立ち寄って、自分で酒を温め独酌で数杯を傾けるのを常例とした。友人の或る者は、君の家が農より取り立てられたのを侮り、「成り上がり、成り上がり」と言えば、君笑って然り、「我が家は一農家より起こり殿様の侍医に立身し、真に成り上がりに相違ない。君等の家は皆高位厚禄の祖先から出でて、今もって尚碌々として祖先の禄位を守るに過ぎず、一向に振るわぬのは、祖先を辱める訳ではあるまいか、どうじゃ」と言い返した。君を辱めようとしたものが、却って一言もなく去ったということである。
 戊辰の役に昌訪は越後口に出陣した。君、之を郊外まで見送り、別れる時に君昌訪に向かい、「どうぞ国家の為に自愛して下さい、嗚呼国事がかように切迫してきては、私共の出陣を命ぜられるのも近日であろう。私は誓って家名を堕(おと)さぬ故、どうぞご安心下され」と、慨然として袂を分かった。後幾許もなく君白虎隊に入り、飯盛山で自殺した。時に十六歳であった。

                              
  補修 會津白虎隊十九士傳


■石田和助伝

 和助は石田竜玄の二男にして、兄は即ち前の長崎知事日下義雄君なり。父竜玄は藩医にして、禄七人口、若松紺屋町に住し、内科及び産科術に長し、甚だ人の信用を得、診察を請う者陸続遠近より輻輳(集中の意)す。或いは、竜玄の診薬を得れば、仮令死すとも遺憾なしと言うに至る。その人望を得ること此の如し、家富めるを以て貧人を愍(あわ)れみ、病む者には薬を給して価を受けず、故を以て名声益々高し。
 和助の人となり、天稟穎悟(えいご:賢いこと、聡いこと)、夙成(しゅくせい:早成、若いうちに学業が成就すること)、父母に事(つか)えて孝あり、朋友に接して信あり。十歳にして日新館に入り、勉学倦まず、三等、二等、一等に進み、日夜切磋、屡々官の賞典を受け、既に講釈所に昇らんとして戊辰の艱に際し、撰ばれて士中白虎隊に編入せられ、仏式撤兵調練及び射的法を研究し、八月二十三日、官軍を戸ノ口原に拒き、奮激力戦、自ら胸壁上に立ち発炮し、皆人散乱すと雖(いえ)ども、独り退かず、弾丸雨注、少も懼れず、弾丸竭(つ)きて従容胸壁を下り、間行飯盛山に退き、衆と倶に自刃す。年十六。

                                     
  白虎隊勇士列伝


注意 : 略伝・逸話は、管理人の判断によって原文にはない句読点を入れたり、( )等でふりがなや説明を加えている箇所があります。

参考文献 : 宗川虎次『補修 津白虎隊十九士傳』、二瓶由民『白虎隊勇士列伝』、神崎清『少年白虎隊』

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