REFLEX l

漢方でよく使われる生薬の分析(薬理解説)


 もちろん、処方解説だけで十分かもしれませんが、生薬それぞれの働きがわかれば、薬理作用から処方を選択することも可能になります。ただ、この方法を使え、と言うのではなく、数あるよく似た処方の中から、最適なものを選ぶ一つの手段になる、と言う事です。

 一般用医薬品で示される適応症だけでは判断が付かないときに参考にはなります。 ただし、適応に合致しない場合は副作用の危険性があります。

 ここでは、承認されている適応(効能・効果)ではなく、生薬が本来持っている薬理作用からみています。漢方的な生薬解説は、ちょっとです。


注)1.全内容は記載しきれない(現段階)。間違いは確認できてません。
注)2.とりあえず、薬局でOTCを選ぶ際の知識としておきます。
注)3.生薬の成分・薬理のデータは、上から順に主となるものです。
注)4.副作用等の項目は、記載していません。
注)5.医療用医薬品については、添付文書を参照してください。


[ 12 生薬選択 ]

桂皮 ケイヒ
芍薬 シャクヤク
甘草 カンゾウ
大棗 タイソウ
生姜 ショウキョウ
麻黄 マオウ
人参 ニンジン
柴胡 サイコ
半夏 ハンゲ
茯苓 ブクリョウ
黄連 オウレン
附子 ブシ



 桂皮 ケイヒ

性味 熱、辛甘
基原 クスノキ科、 ニッケイ
成分 精油(1〜3%) : cinnamaldehyde(80〜90%)、など35種
ジテルペノイド
タンニン
粘液 など
薬理作用 >中枢神経抑制作用
  鎮痛、鎮静、睡眠時間延長、運動抑制、体温降下、解熱、抗痙攣、 他
>循環器系への作用
  末梢血管拡張、降圧、強心、心拍数抑制、他
>消化器系への作用
  腸管運動亢進、鎮痙、潰瘍発生抑制、健胃、他
>汗腺分泌刺激作用
>抗菌作用、抗真菌作用、 抗ウイルス作用
>抗アレルギー作用
>その他
追加 ・主成分の、cinnamaldehydeによる作用
・中国産がほとんど。もしくは、ベトナム桂皮など。国産は、 有効成分量の不足で、薬用にはならない。
・肉桂のことを日本薬局方では、桂皮と呼ぶ。
・桂枝もほぼ同様の作用がある。しかし、保険収載されたエキス剤、 日本薬局方収載、のどちらも桂皮。
・桂枝は、肉桂の若枝を使う。また、桂皮は、肉桂の桂皮・幹皮を乾燥させて使っている。

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 芍薬 シャクヤク

性味 涼、苦・酸
基原 ボタン科、 シャクヤク
成分 paeoniflorin
albiflorin
benzoylpaeoniflorin
oxypaeoniflorin、のほか
paeonol、 paeonine、安息香酸、精油、脂肪油、樹脂、タンニン、糖、
でんぷん、糖液質、タンパク質、β-シトステロール、 トリテルペノイド、など
薬理作用 鎮痙、鎮痛、鎮静、消炎、抗腫瘍、消化機能亢進、血管拡張、
平滑筋弛緩、解熱、抗菌、月経正常化、その他
追加 ・芍薬は、白芍薬または、白芍の和名。
・主成分は、ペオニフロリンで抑制作用が期待できる。
・ペオニフロリンはオキシトシンによる子宮収縮に拮抗する。
・ペオニフロリンとFM100で相乗効果が表れる(甘草と併用)。
・白芍は体を冷やす作用があるので、産後には本来使わない。

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 甘草 カンゾウ

性味 平、甘
基原 マメ科、 カンゾウ
成分 glycyrrhizin
glycyrrhetinic acid
グルクロン酸、の他
リキリチゲニン、リキリチン、イソリキリチン、ネオリキリチン、等のフラボノイド
グルコース、マニトール、l-アスパラギン、リコリシジン、グリチロール、
エストロゲン類似物質
薬理作用 抗アレルギー、解毒、抗炎症、副腎皮質ホルモン様、抗ストレス、鎮痛、
鎮痙、抗潰瘍、 胃酸分泌抑制、脂質代謝改善、鎮咳、女性ホルモン様、他
追加 ・現代医学で応用されているのが、このグリチルリチンの作用
・主成分のグリチルリチンを加水分解すると、 グリチルレチン酸とグルクロン酸になる。
・甘草の長期大量使用の時は、偽アルドステロン症に注意。
・多くの処方が、生薬の調和に甘草を使用。

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 大棗 タイソウ

性味 温、甘
基原 クロウメモドキ科、 ソウ
成分 タンパク質、糖類、脂肪、有機酸、粘液、ビタミンA・B2・C、カルシウム、
サイクリック AMP、など
薬理作用 消化管機能調節、鎮痙、鎮静、利尿、肝庇護、抗アレルギー、その他
追加 ・"なつめ"の成熟果実を乾燥させたもの。
・いわゆる、安神作用にも使われる。
・薬性をやわらげるときに、 生姜といっしょによく使う。
・生姜・なつめ、共に簡単に手に入る生薬ですね。

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 生姜 ショウキョウ

性味 温、辛
基原 ショウガ科、 ショウガ
成分 精油(0.25〜3.0%):ジンギベロール、ジンギベレン、フェランドレン、
 カンフェン、シトラール、 リナロール、メチルヘプテノン、ノニルアルデヒド、
 d-ボルネオール、などが主成分。
  ジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロン、ジンギベロン、 その他、
アスパラギン、ピペコリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、樹脂、
デンプン、など
薬理作用 健胃、止嘔、発汗、解毒、呼吸中枢興奮、血圧上昇、抗菌、その他
追加 ・本来、生姜とは、生のヒネショウガの事で、乾燥させたものを、乾姜といった。しかし、国内では、 乾燥させたものを生姜とし、蒸して乾燥させたのを  乾生姜としている。

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 麻黄 マオウ

性味 温、辛・微苦
基原 マオウ科、 ソウマオウ
成分 アルカロイド(1〜2%):l-エフェドリン(40〜90%)、その他多数のエフェドリン。
タンニン、精油、
薬理作用 気管支平滑筋弛緩、血圧上昇、血管収縮、興奮(心臓・中枢神経系)、
中枢性発汗、利尿、降圧、体温低下、抗ウイルス
追加 ・アドレナリンと逆で、エフェドリンの作用は持続性があり、かつ緩和です。
・収縮期血圧上昇がある為、 高血圧の場合にはまあ、注意
・かぜ症候群で、あせが出てたらひかえめに
・発汗作用が強く、桂皮とのセットではより強くなる
・さらにマイルドな発汗・解熱・鎮痛作用の生薬として、防風、があります。残念ながら、浜防風、 での代用が無理なのがおしいとこです。

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 人参 ニンジン

性味 微温、甘・微苦
基原 ウコギ科、 ニンジン
成分 人参サポニン(シンセノサイドRx 約5.2%):13種以上のサポニン混合物。
β-シトステロール、β-シトステリルグルコシド、スチグマステロール、
ダウコステロール、パナキシロール、コリン、アミノ酸、ペプチド酸、
ビタミンA,B1,B2,C、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、ショ糖、パノースA,B,C,D、
ペクチン、精油、など
薬理作用 中枢神経系興奮、中枢神経系抑制、新陳代謝促進、副腎皮質系機能促進、
循環器系機能促進調整、消化管運動亢進、造血、抗ストレス、
免疫機能増強、血糖降下、性腺発育促進、その他
追加 ・薬理学的な作用から見ても、元気がない時、虚弱体質に効果。

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 柴胡 サイコ

性味 涼、苦
基原 セリ科、 サイコ [ホクサイコ、ミシマサイコ、等]
成分 サポニン(3%):サイコサポニンa,b,c,de,f、サイコゲニンF,E,G、など
脂肪油(2〜3%):
ステロール(0.07%):
糖:
その他、 アンゲリシン、ロンギスピノゲニン、精油
薬理作用 解熱、鎮静、鎮痛、鎮咳、抗炎症、肝庇護、脂質代謝改善、抗潰瘍、
抗アレルギー、その他
追加 ・炎症性疾患に使える。
・精神神経の失調に使用。
・臓器の下垂症状に効果あり。

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 半夏 ハンゲ

性味 温、辛
基原 サトイモ科、 ハンゲ
成分 でんぷん、脂肪、粘液、精油、ニコチン、アルギニン、アスパラギン酸、
グルタミン酸、β-シトステロール、フィトステロール、サポニン、グルクロン酸、
β-アミノ酪酸、など
薬理作用 鎮吐、鎮咳、去痰、解毒、強心、ストレス潰瘍防止、唾液分泌抑制、
鎮静、その他
追加 ・体の水分を取る性質がある。注意して使えば、痰がからんだ時の咳に効果がある。

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 茯苓 ブクリョウ

性味 平、甘
基原 サルノコシカケ科、 ブクリョウ(菌核)
成分 β-パヒマン(約93%)、その他 パヒマ酸、ツムロース酸など
薬理作用 利尿、抗潰瘍、鎮静、滋養、抗菌
追加 ・ブクリョウは、国内で最も重要かつ使用量の多い生薬に属する。

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 黄連 オウレン

性味 寒、苦
基原 キンポウゲ科、 オウレン
成分 ベルベリン(約7〜9%)、コプチシン、オウレニン、パルマチン、コルンバミン、
オーバクノン、オーバクラクトン、など
薬理作用 抗微生物、抗病原虫、降圧、抗アドレナリン、
興奮作用(消化管・気管支・子宮平滑筋・膀胱)、胆のう機能増強、
胆生成促進。膵液分泌促進、血中コレステロール低下、抗炎症、解熱、
鎮静、鎮痛、鎮痙、その他
追加 ・薬理作用の多くがベルベリンによるもの。
・低濃度でも抗菌作用がある。
・ベルベリンが少量だとアセチルコリンの作用を高めるが、多いと弱める。

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 附子 ブシ

性味 大熱、大辛  有毒
基原 キンポウゲ科、 ウズ (傍生塊根)
成分 強毒性:aconitine、mesaconitine、hypaconitine、など
低毒性:benzoylaconine、aconine、と、atisine、napelline、など
その他、ハイゲナミン、コリネイン、脂肪酸、など
薬理作用 強心、鎮痛、消炎、など
追加 ・毒性の違いからアルカロイドには2タイプある。
・アコニチンは分解すると、低毒性のアコニンにかわる。
・減毒することでアルカロイド以外の有効成分(強心作用)が生きてくる。

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