ジャングル童話 おまけ



 洋平がジャングルにまよいこんでから、そろそろひとつきになろうとしています。
 洋平はもうすっかりジャングルのくらしになれました。まだとかげをとったりするする木にのぼったりはできませんが、花道がいっしょうけんめいせわしてくれるからへいきです。花道も少しずつことばをおぼえはじめました。でも、まだしゃべれるのは三つのことばだけでした。
「ハナミチ、ヨーヘー、イイコト」
 花道はそういって洋平にだきつきます。気持ちいいことをするときに、洋平が
「花道、いいことしようか」
というので、それを花道がおぼえたのです。
 きょうは花道がねだっています。洋平だっていいことをするのは大好きですから、ねだられてにっこりとほほえみました。
「いいよ、花道」
 すると、いつも花道は洋平をなめはじめます。それで洋平はとても気持ちがよくなります。ですが、きょうはちょっといつもとちがいました。花道は洋平が大きくなったとき、なめるのをやめてしまったのです。
「花道?」
「ヨーヘー、イイコト」
 そういうと、花道はあおむけにひっくりかえったのです。これは、花道に中にはいってほしい洋平がするどうさでした。そう、花道は、洋平に自分の中にはいるようにいっているのです。
 花道は洋平の中にはいると、なめてもらうよりもずっと気持ちがよかったので、洋平にももっと気持ちよくなってもらいたかったのです。でも、洋平はにっこり笑って首をふりました。
「オレはいいよ。いまだってじゅうぶん気持ちがいいから」
 花道はふまんです。なんとかして洋平にはいってほしいのに、洋平はずっと首をふりつづけました。こんまけしたのは花道のほうでした。あきらめて、もういちど洋平をなめはじめました。
 洋平も、はいったほうが気持ちがいいことはわかっていました。でも、ひとにはいってもらいのはとてもいたいことなのです。最近は洋平もなれていたのでそれほどいたいとはおもいませんでしたが、なれていない花道はきっととってもいたいでしょう。花道は洋平がいたい思いをしていたことは知りません。だから、それを知ってしまったとき、きっと花道は二どと洋平の中にはいってくれなくなってしまうのです。
 花道はやさしい男の子なのです。そして、洋平は花道にはいってもらうのがとても好きだったのです。
 洋平も、やさしい男の子なのですね。
 ともかく、きょうも二人はしあわせにすごしています。

おしまい


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