もしかしたらランドが帰ってくるまで家の前で待っていなければならないかもしれないって思っていたから、神殿に帰り着いたのは最初に考えていたよりもずっと早かった。1度宿舎に戻って、それからリョウの家へと向かう。もちろんミイにもらってきた木箱も持ったままだった。
まだ、夕方にも早い時刻だったから、もしかしたらリョウはいないかもしれない。そんなこともチラッと頭をかすめたんだけど、幸いリョウは家にいて、あたしの顔を見ると少し驚いたように家に招き入れてくれた。
「座って待っててくれるか? 今お茶を入れるから」
「あたしがやろうか?」
「いい。手を出さないでくれ。この間ミイに習ったんだ。自分でやってみる」
リョウはそう言うと、ちょっと緊張した表情をして台所に立った。あたしは言われたとおりにテーブルの椅子に腰掛けて、しばらくリョウの背中を見ていたの。リョウは火を扱うのが苦手みたい。あたしは何度も口を出しそうになっていたけれど、ぐっと我慢して椅子に座ったまま口を閉ざしていた。
きっとリョウは、自分の村へ戻れば、お湯を沸かすことくらいなら簡単にできるんだろう。ここにいたらリョウは本当に苦労しなければならないんだ。リョウが危なっかしい手つきで茶碗にお湯を注いでいるのを見ながら、あたしは改めてリョウを自分の村へ帰してあげようって決心していたの。
「待たせたな。…味の保障はしないけど」
「ありがとう。いただくわ」
リョウが入れてくれたお茶はあたしには少し熱すぎたから、冷めるのを待ちながらリョウに話し始めていた。
「さっきミイに聞いたわ。リョウをみっちり仕込んだんだ、って」
「ああ。いつまでもミイに頼る訳にはいかないからな。おまえは? ミイに会ったって、仕事を始めたのか?」
「ううん。まだ始めてない。でもそろそろ始めなきゃいけないわね」
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