「ユーナ、朝食ができたわ。ベッドに運ぶ?」
「ううん。そっちに行くわ」
ドア越しのカーヤの声に返事をして部屋を飛び出した。あたしが椅子に腰掛けると、カーヤは笑顔でテーブルに食事を並べてくれる。ソーセージの入った野菜炒めと、トマトベースのリゾット。カーヤ得意の野菜がふんだんに使われたメニューに、あたしは舌鼓を打った。
「身体の具合はどう? もう十分に疲れは取れた?」
カーヤの問いに、スプーンを動かしながらあたしは答える。
「昨日よりはずっといいわ。もういつもとほとんど変わらないくらい元気よ」
「だといいけど。その様子だと無理してそうね。今日も1日休んでいた方がいいわ」
「大丈夫よ。あたし、見かけよりもずっと頑丈なんだもん。母さまがすごく健康に産んでくれたんだから」
「そうね、ユーナが頑丈なのは認めるわ。でも、お願いだから今日も1日ベッドで寝ていて。そうしてくれないと、あたしが守護の巫女に怒られちゃうんだから」
あたしは少しだけ不機嫌そうな表情を作って、カーヤを上目遣いで見つめた。…独りで寝ていると退屈する。退屈すると、考えなくていいことまで考えちゃいそうで。
「命の巫女たちはどうしているの? 昨日はなにも教えてくれなかったけど」
あたしが話題を変えると、カーヤはほのかに苦味の混じった微笑を浮かべて答えてくれた。
「命の巫女は守護の巫女の宿舎へ泊まったわ。シュウは神官の共同宿舎よ。2人とも疲れ切っていたから、会議なんかはぜんぶ明日に回されたの。だからユーナもゆっくりしていて大丈夫よ」
「リョウは? 森の家へ帰ってるの?」
「ええ。あれからすぐに帰っていったわ。食事なんかはランドの奥さんが世話しているみたい」
あたし、昨日村へ帰ってから、1度もリョウと話していなかった。あの時神殿で振り返ったあとは顔すらも見てはいなかった。
次へ
扉へ
トップへ