もしかしたら、シュウと同じ世界を知るリョウなら、神の正体を理解することができるのかもしれない。
「階段になってる。ついてきて」
 振り返らずにシュウは言って、穴の中へと降りていった。そのあとを命の巫女が、そしてあたしとリョウが続く。穴の中の階段は壁がわずかに発光しているみたいで、深く降りていってもさほど暗い感じはしなかった。階段そのものはかなり長く続いていて、降りている間あたしたちは一言もしゃべることはしなかった。
 やがて、階段の底にたどり着いたシュウは、1度あたしたちを振り返った。そして、目の前にある大きな扉を開ける。
 その扉の向こうはまた白い部屋になっていて、部屋の中央には巨大なオブジェのようなものが建っていたんだ。
「これ…次元の門…?」
 命の巫女がつぶやく。言われてみれば、そのオブジェはなにかの門のようなものにも見えた。
「次元の門? なんなんだそれは」
 そのリョウの問いに答えたのはシュウだった。
「次元の扉の一種みたいなものさ。オレとユーナはあんたたちの村へ行くときに1度だけ通ったことがある。この門は入口で、出口は通る人間が思い描いた場所になるんだ。だから出口の場所を正確に知らなくても使うことができる。オレたちはあの時、自分たちが経験した怪異の原因がある場所を思い描いた」
「…それで、出てきた場所があたしたちの村の神殿だったの?」
「そう。だからオレたちは、君があの怪異の原因なんだと直感した」
 あの時、神殿で目を覚ました命の巫女は、あたしが2人を呼んだんじゃないかと問いかけた。あのときのあの言葉にはそういういきさつがあったんだ。その直感は確かに正しかった。これがそのときと同じ次元の門なら、これをくぐればあたしたちは村へ帰ることができる。
「つまり、村を思い浮かべることで俺たちは帰れるんだな。だとしたらこんなところでぐずぐずしてることはない」
 リョウの言葉にうなずいて、あたしたちはもう一瞬たりとも迷わずに、その次元の門をくぐったんだ。
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