「シュウ! 出口が見つかったの?」
「ああ。向こう側が冷気で満たされないうちに早く出よう」
「待て。俺が先に行く」
「大丈夫だ。もう危険はないさ。だから用心する必要もない」
 先へ行こうとしたリョウを制して、シュウはさっさと扉をくぐっていった。すぐに追いかけて行ったリョウに続いてあたしたちも扉をくぐる。扉の向こうも白い部屋になっていて、今までいた部屋よりはずいぶん狭かったけど、それでも十分に広い空間だったの。その部屋の真ん中あたりにまたぽっかりと四角い穴が開いてるのが見える。全員がその部屋に入ったことを見届けると、シュウは床に描かれた模様を踏んで扉を閉めた。
「ここはまだ影が支配する場所だ。なにが起こるか判らないだろう。どうして危険がないって言い切れる」
 リョウが訊くと、シュウは少しためらう仕草を見せて、リョウに答えた。
「神の正体が判ったからさ。おそらくオレが思ったとおりで間違いない」
「シュウ! それってどういうこと? 神はいったい誰なの? あたしや祈りの巫女に力を与えてた神って」
「答えたくない。…理解できればそれなりにショックだし、おそらく祈りの巫女たちには理解できない。…ユーナ、おまえがもしも知りたいなら話すけど、聞いたあとのことまでオレには責任とれないぜ。それでもどうしても聞きたいって言うなら、オレたちの世界に帰ってから話すよ」
 シュウはそれで話を終わらせて、床に開いた穴のところまで歩いていったの。あたしたちの中に重苦しい沈黙が流れる。シュウは影の正体を知って、かなりショックを受けたんだ。シュウのうしろ姿からシュウが受けたショックの大きさが察せられて、あたしはそれ以上シュウを追求することができなくなっていた。
 本当はすごく知りたかった。だけど、シュウはあたしには理解できないって、そう言ったの。それはきっとシュウの世界に関わることで、今まであたしがシュウの話を理解できなかったように、たとえ教えてもらえたとしても今のあたしでは理解することができないのだろう。
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