そのとき、シュウがいきなり次元の扉を消したの。命の巫女の扉から怪物の腕がポロリと落ちて、次の瞬間怪物がすさまじい悲鳴を上げてのた打ち回ったんだ。
――グワアアァァーーー!
「祈りの巫女! 君のことはオレたちでなんとか守る。早く扉を!」
こんな扉の使い方ができるなんて思わなかったよ。あたしはシュウにうなずいて、再び祈りに入った。
トンネルの扉を通過して、あたしは次に目に入った黄緑色の扉を選び出した。そして、さっきと同じように扉の色を水色に変える祈りをする。次に赤色の扉。神様の視点はあらゆる方角から見ることができたから、1つの方向から見えている扉だけじゃなくて、すべての扉を選び出すことができる。
あたしは、最後に残ったピンク色の扉を探した。これで最後だ。これさえ水色に変えてしまえば、影は2度とあたしたちの村へ来られなくなる。村が襲われることは2度となくなるんだ。
その時だった。
「ユーナ、もうやめるんだ」
とつぜん、あたしの耳元で声がしたの。あたしは驚いてきょろきょろ辺りを見回す仕草をした。聞こえてきたのは確かにリョウの声だったから。
「おまえはぜんぜん判ってない。影は過去を変えることができるんだよ。たとえばユーナ、オレが殺されたあの瞬間に戻って、オレが殺されなかった歴史に変えることもできる」
この声、あたしのリョウだ。幼い頃からずっとあたしのことを愛してくれていた、あたしに優しさをたくさんくれた、幼馴染で恋人のあたしのリョウ。
「影は言ってる。もしもこの扉を元に戻せば、ユーナのために歴史を変えてくれてもいい、って。…ほら、さっきユーナが自分で思ったんだろ? オレがブルドーザに殺されたあの時、オレを生き返らせる祈りをすればよかった、って」
次へ
扉へ
トップへ