「いいから邪魔しないの! …少しずつ祈りの巫女に祈りの力が集まってるの。今あたしがぜんぶ説明してあげるから」
どうやら命の巫女にも村人たちの声は聞こえるみたい。あたしはシュウのことは命の巫女に任せて、神様に寄り添った。
神様の目を借りて、まずはあたしたちが最初にこの世界に入ってきたトンネルの中から扉を探す。この扉は石造りの部屋が閉じられた瞬間に姿が見えなくなってしまったのだけど、神様の視点でならちゃんと見つけることができた。その扉をくぐって出たところが扉の部屋だ。そこまで行って、あたしはまず目の前にあった紫色の扉の色を変える祈りを捧げてみる。
神様はあたしの祈りに答えて、紫色の扉を水色の扉に変えてくれたの。でも、これだけたくさんの扉があるのに1つずつ変えてなんかいられないよ。あたしは少し視点を引いて、その中から紫色の扉だけを選び出して、このすべてを水色に変えて欲しいって祈ってみた。あたしが望んだとおり、神様はあたしの祈りに答えて選んだすべての扉を水色に変えてくれたんだ。
その時だった。なにかの衝撃を受けて、あたしは一気に自分の身体へと引き戻されていたの。目を開けて驚いた。氷の混じった強い風がいきなり吹き付けてきて、目の前にはあの怪物が口を開けていたから。
――ガアアァァーーー
悲鳴を上げる暇もなかった。怪物の口がせまってきた次の瞬間、あたしと怪物との間にリョウが割り込んできて、怪物はリョウの長い首に噛み付いたんだ!
「祈りの巫女こっちだ!」
「リョウ! …シュウ!」
「空間の防御壁が破られたんだ! 君の祈りの力が戻ったことに影が気づいた。オレのうしろにいて!」
あたしが引きずられるようにシュウの背後に回り込むと、リョウを投げ飛ばした怪物が再び襲ってきたの。
「ユーナ! 次元の扉を開け! …次元の扉!」
シュウが次元の扉を開くのと、怪物が襲ってくるのがほとんど同時だった。怪物の腕がシュウの次元の扉を通過して命の巫女の扉から突き出す。
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