「祈りの巫女!」
「よかった、気がついたのね」
 あたしの身体はほとんどふだんの調子を取り戻していた。すぐに身体を起こして周囲を見回す。今、あたしたち3人の周りには円形の膜のようなものがあって、その向こうは白く曇って見えなくなっていた。
「リョウは? 状況はどうなってるの?」
 シュウは今まで死にかけてたあたしがとつぜん元気になったことで、かなり戸惑ったみたいだった。
「…そんなことより祈りの巫女は? 身体は大丈夫なのか?」
「あたしのことは大丈夫。それより時間がないの。リョウのことを教えて」
「怪物と戦闘中だよ。リョウがブリザードで動きを止めようとしてるんだけど、怪物の方もなかなか動きが早くてね。リョウに直接牙で攻撃してくる。地響きは聞こえてくるからまだ勝負はついてないと思うけど」
 リョウのことはすごく気になった。神様の目を借りて見れば様子が判るかもしれないけど、村のみんなにもらった幸運はそんなことで無駄遣いできないもん。リョウが一刻も早く戦闘を終わらせるためにも、あたしは影をここから追い出さなくちゃいけないんだ。
「シュウ、影を追い出す方法を詳しく教えて。扉の色を変えるって、なにをどう変えればいいの?」
「え? だってそれは、祈りの力がなければ――」
「あとで詳しく説明するわ。祈りの力があるとしたら、何色の扉を何色に変えればいいの? それだけでいいから教えて」
「え、ああ、扉の色はオレたちが見つけられただけで5種類ある。それをぜんぶ水色に変えればいいんだ。ピンク色と紫色、それに黄緑色と赤色の扉だね。それらをすべて水色に変える。もしかしたらほかの色の扉もあるかもしれないけど」
「とにかく、あそこにあった扉をぜんぶ水色に変えられればいいのね。判ったわ」
「そうだけど…ちょっと、祈りの巫女!」
 あたしが祈りの姿勢をとって、それでも声をかけて手を伸ばしてきたシュウを、うしろから命の巫女が取り押さえてくれた。
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