でも、あたしには判ったの。聞こえる声が、村人たち1人1人の声なんだ、って。
 あたしの身体に温かさが戻ってくる。今まで寒いとも感じないまま凍りついていた身体に。
(…これで助けになるのか判ら――)
(…でもあたしは幸せをもらった――)
(…今影と戦ってる祈りの巫女のた――)
(…オレの幸運を祈りの巫女に分けて――)
 やがて、その声はひとつの言葉に収束される。あたしが今まで思いもしなかったその言葉に。

 ――神様、私に与えられた幸運を、祈りの巫女に分けてあげてください!

 これは、村の人たちの祈り? 今あたしに聞こえているのは、村の人たちがあたしのために祈りを捧げている、その祈りの声なの?
 祈りは自分の幸運を他者に分け与えること。村のみんなは、自分自身が神様にもらった限りある幸運をあたしに分け与えてもいいって、本当にそう思ってくれたの…?
 今まで、この村の中で祈りを捧げるのは祈りの巫女1人だった。祈りの巫女じゃない人が祈りを捧げるなんて、ぜったいにありえないことだった。今、あたしの身体は温かくなって、命を取り戻している。祈りの力が徐々に戻っているのも判る。
 これはきっと奇跡なんだ。村の人たちがみんなで起こした奇跡なの。だって、そうじゃなかったら、みんなの幸運をあたしが受け取ることなんてきっとできなかったよ!
 あたしが今までやってきたこと、無駄じゃなかった。村のみんなを助けて幸せを祈り続けたこと。あたしの気持ちはちゃんと村の人たちに伝わってたんだ。だから今、こうしてみんなは祈りを捧げてくれたんだ。
 あたし、みんなの祈りを無駄にしないよ。必ずこの祈りを役立てて、村を救ってみせる。
 暗闇の中から抜け出して、再び目を開けると、命の巫女とシュウが気づいて笑顔であたしを迎えてくれた。
次へ
扉へ
トップへ