「ユーナが俺を、この俺を生き返らせたことは間違いじゃないってことを証明する」
 あたしはこのリョウの言葉に心臓が止まるかと思った。リョウ、あたしがリョウを生き返らせたことを後悔しているって、判ったの? …そうだよ。命の巫女の右の騎士であるリョウは予言の巫女の力を持ってるんだもん。その察する力が強くなれば人の感情を読み取ることだってできるんだ。
 あたしがリョウを傷つけたんだ。リョウへの憎しみを口にしたのと同じくらい。もしかしたらそれ以上に。
「リョウ」
「無駄なことはよせよ。オレはこんなところに自分の身体を持ってきてはいない。おまえの攻撃じゃオレに傷を付けることすらできないさ」
「きさまの話はたくさんだ。ごたくを並べるのは勝ってからにしろ!」
「リョウ!」
 あたしの呼びかけに振り返りもしなかった。リョウが先に鍵のついたロープを手にして影に襲い掛かっていくと、影はうしろに飛んで避けるようにしたあと、再びリョウの姿に変わっていたの。2人のリョウはお互いに同じ武器を手にしていて、忙しく身体の位置を入れ替えながら戦い始めたんだ。
「祈りの巫女、こっちへ!」
 シュウに引きずられるようにして部屋の隅に移動する。その一瞬でもうどちらがどちらのリョウなのか判らなくなる。あたしに人間同士の戦いなんか判らない。でも2人ともほとんど互角に戦っているように見えた。
「いいぞ。リョウの方が押してる。リョウ! そのままいけよ! 勝てるぞ!」
 隣でシュウが叫ぶ。シュウには2人の区別がついているの? 今は2人とも同じような真剣な表情をしているのに。
「もうよせ。いくらやったところでおまえはオレには勝てないんだ」
「黙れ。きさまは自前の身体じゃねえんだろ? 人と戦ったことのないリョウの身体相手に俺は負けたりしない」
 こっちが本物のリョウだ。でも、1度動きを止めた2人を見比べても、あたしにはぜんぜん区別がつかなかった。
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