実際のところ、エレベータの中にいたのは本当に一瞬の間で、気がつくと扉が開いていた感じだった。扉の外の風景がさっきと違っていなければ部屋が動いたことなんか信じられない。音も振動もほとんどなくて、でも扉を出たときに立ちくらみのようなめまいがわずかに身体に残っていた。
 ――リョウ、本当に命の巫女と同じ世界の人なんだ。だってなんの疑問も持たないでエレベータに入ることができるんだから。
「で? ガゾウが飛ぶってのはどのあたりなんだ?」
「うん、たぶん位置的にはこの正面で間違いないと思う。どうやったら行けるのかは判らないから、中に入れそうなところを歩いて探してみるしかないかな」
「この壁の向こうか。…たとえ誘い込まれてるんだとしてもこれで最後にしたいところだな」
 ぼそりとシュウが言って、正面の壁に沿って右に向かって歩き始める。でもその道はすぐに行き止まりになってしまったんだ。引き返して、今度は逆側に向かって歩き始めたけど、右に曲がる道はぜんぜんなかったの。反対側に行く道なら何本か見つけることができたのに。
「ユーナ、迷路攻略法って知ってる?」
「あれじゃないの? 片方の壁に触れながら延々と歩く、ってやつ。で、同じところに戻っちゃったら逆の壁を辿るんでしょ?」
「正解。でもそれをやってたら時間がかかりすぎる。だからもう1つの攻略法を試すよ」
「なあに? もう1つの攻略法って」
「壁をぶっ壊す! 出ろ、炎の玉!」
 そう言っていきなりシュウが壁に向かって炎をぶつけたから、あたしも命の巫女も驚いちゃったの。もしかしてシュウ、ものすごく苛立ってた…?
「ユーナ、おまえもやれ! リョウ、祈りの巫女、確かレーザーガン持ってたよな!」
「おまえ…。判った。1ヶ所に集中して攻撃しよう」
 リョウもシュウの勢いに押されたみたいで、しぶしぶながらも壁をレーザーガンで撃ち始めたの。
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