表面が滑らかな白い石造りの壁は、シュウや命の巫女の炎とリョウが放つレーザーガンによって、少しずつ壊れていった。壁の厚みそのものはたいしたことないみたい。さすがに時間はかかったけど、程なくして壁の一部が壊れて中から光が漏れ始めたんだ。
「この光…。もしかして次元の扉か?」
シュウがいったん2人を制して、両手を使って壁を崩していく。今までの攻撃で弱くなっていた部分が崩れて、その向こうにはっきりと次元の扉特有の光が見えてきていた。
「まさか部屋全体を覆ってるのかよ。確かにこれじゃ部屋の中は見えないな」
「どうする? 向こう側へ行ってみるのか?」
「ほかに手がかりがないからね。行くしかないだろ」
「ちょっと下がってろ」
リョウがシュウと命の巫女を遠ざけると、レーザーガンで壁を丸く焼き始めた。それだけでは壁を壊すことはできなかったけど、焦げた部分がある程度の大きさになったときに向こう側へ蹴り込んだら、レーザーガンを当てたところを境にして壁が折れ曲がったんだ。
「ちょうどレーザーガンの光が切れた。1人ずつならなんとか通れそうだが、もう少し広げるか?」
「いや。しっかり手をつないでいこう。それで離れるくらいならどんなに密着してたって離されるだろ」
「だな。…ユーナ、そっちの手を命の巫女とつなげ」
リョウはシュウの言うことには逆らわないで、でも主導権だけは渡さないとでも言うように、あたしの手をとって先に壁の穴をくぐっていく。そんな、男同士のプライドをかけた争いのようなものが見えて、命の巫女と目をあわせてお互い苦笑いを浮かべちゃったの。どちらにしても、あたしたちはこんな2人についていくしかないんだ、って。
リョウに手を引かれてあたしも穴をくぐる。次元の扉を通ったとき、ほんの一瞬だけ意識を失った気がしたけど、自分でも本当はどうだったのか判らない。気がつくとそこは一面灰色の世界で、いつの間にかたった今通ってきたはずの次元の扉さえも見当たらなくなっていた。
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