シュウが触れた部分が光って、同時に扉の上にある光が少しずつ移動していく。でも壁のドアはぴくりとも動かなかった。
「…参ったな。動いてるよ」
「ねえ、エレベータなんて危険じゃない? 狭いし不安定だし、下手したら閉じ込められちゃうよ」
「いざとなれば次元の扉もあるから心配は要らない。それより問題は影の意図だ。こんな狭い場所で獣鬼やセンシャを使えないのは判るけど、昨日のロボットでネタが切れたとは思えないからな。どうして襲ってこないんだか」
ドアが開かなくてもシュウはぜんぜん気にしないで、のんびり命の巫女と話していたの。あたしはそわそわと落ち着かなかったんだけど、見るとリョウもドアが開かないことはそれほど気になっていないみたい。むしろリョウも命の巫女も、シュウが再びしゃべり始めたことの方にほっとしているようだった。
そのとき、いきなりガラスを打ち鳴らしたような澄んだ音が響いたから、あたしはぴくっと反応してしまった。気づいたリョウが肩を抱いてくれる。
「そばにいろ。大丈夫だ」
「うん。ちょっとびっくりしただけ。今のはなに?」
「さあな。…見ろ、ドアが開く」
背後のわずかな音に振り返ると、リョウが言ったとおり壁のドアが開いていて、シュウと命の巫女が扉を入ろうとしているところだった。向こう側は小さな部屋になってるみたい。さっき神様の目で見たときには縦長の筒でしかなかったから、この小さな部屋はどこかから動いてここにやってきたのかもしれない。
今のあたしはたぶん、傍からはおびえた小動物のように見えるんだろう。実際なんだか怖くて足がすくんでしまっていた。ここは今まであたしがなじんだどの場所とも違っていて、ほかのみんなが平然としているのがかえってあたし自身の恐怖を増徴させているみたいだった。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だ。俺が一緒にいる。狭くて不安かもしれないが、中に入るのは少しの間だけだ」
リョウに促されて、うなずいたあたしはようやく足を動かすことができた。
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