「シュウ?」
あたしの呼びかけにシュウは反応を示さなかった。ろうそくを消して回収していると、気づいた命の巫女がシュウに近づいていく。
「シュウ、どうしたの? なにか見つけた?」
近くに聞こえた命の巫女の声にびくっと反応したシュウは、ゆっくりと振り返って命の巫女を見て、そのあと床に座ったままのあたしを見つめたの。その目は何かに驚いているようにも、少し怖がっているようにも見える。シュウの頭の中が忙しく回転しているのが判る。
いったい何を驚いているんだろう。シュウがあたしの力を見るの、これが初めてって訳でもないのに。
「シュウ? どうかしたの?」
「…なんでもない。…扉が開いたんだね」
どこか上の空で答えたシュウが再び壁に向き直る。あたしも立ち上がって壁を見てみたけど、シュウがプログラム言語と呼んだ文字がたくさん書いてあるその壁の、いったい何がシュウの関心を引くのか、いまいちよく判らなかった。…そういえば前に見たときよりも少しだけピンク色の部分が増えているような気がするけど。
「壁の文字が気になるの? だったら少し調べていく?」
「…いや、大丈夫。たぶん必要なものは見たと思うから。出発しよう」
そう言うとシュウは先に立って扉を出て行こうとした。いったいどうしたんだろう。シュウは何も話したくないようで、何かをごまかそうとしているようにも見えるんだ。今までのシュウだったら、何かが判ったときには必ずあたしたちに話してくれた。あたしたちに理解できないことでも独り言みたいにぶつぶつ言ったりしていたのに。
シュウのおかしな態度にはリョウや命の巫女も気づいていたみたい。でもなにも言わないで、シュウが出て行こうとしたのをリョウが制して先に歩いていく。先の様子を見てリョウが合図してくれたから、あたしと命の巫女も2人のあとに続いた。壁の向こうは廊下になっていて、右に出て突き当たりを右に少し歩くとエレベータがあるんだ。
壁にあるドアには取っ手がなくて、いったいどうやって開けるんだろうと思っていると、慣れた仕草でシュウが壁の一部に触れた。
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