「壁抜けなら次元の扉を使えばすぐにでもできるけどね。あれは意識を失うからできれば最後の手段にしたい。壁を壊すにしてもかなり力を消費しそうだし。…祈りの巫女、確かなことは言えないけど、ここはもしかしたら開くかもしれないよ。壁につなぎ目がある」
話しながら壁に触れて調べていたシュウが言う。シュウが示したところを見ると、確かにうっすらとだけど壁のつなぎ目が見えたの。カイロズの模様に隠されて見えづらいけど、指で辿るとちょうど通路の幅と同じくらいの大きさで壁が切り取られていたんだ。
「取っ手はないな。シュウ、どこかに壁を動かす仕掛けがないか?」
「今探してる。リョウ、ユーナ、おまえらも探せよ」
シュウの呼びかけで、3人は壁をあちこち調べ始めた。リョウは壁を押したり体当たりしたりして、力で動かせないか試している。もしかしたらこの壁は向こう側からしか開かないのかもしれない。でも、もともと動くように作られた壁なら、祈りの力でどうにかできるかもしれないよ。
あたしは壁から少し離れた場所にろうそくを立てて、祈りの姿勢をとった。この場所の神様はすごく近くに感じるんだもん。だからきっとあたしの祈りに答えてくれるはず。
まもなく、壁を伝う光がより活発に動き始めたかと思うと、シュウが言った壁のつなぎ目が向こう側へゆっくりと開いていったんだ。
「なんだ…?」
「祈りの巫女」
目を開けると、近づいてくる命の巫女と壁から視線をはずして振り返るリョウの姿を見ることができた。神様の目で見たのと同じように壁の一部が開いていて、あたしにも笑顔が戻る。
「本当に祈りの巫女の祈りの力ってすごいね。あんなこともできちゃうなんて知らなかったよ」
「あたしも。実際にやってみるまでできるとは思ってなかったわ。でも近道できそうでよかった」
リョウは何も言わずにあたしを見つめていて、あたしはシュウの姿を探して視線を移動させる。シュウはあたしたちの方をぜんぜん見ていなかった。なぜか、文字がたくさん書かれた壁に触れて、じっと見つめていたんだ。
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