荷物を背負って、あたしたちは通路をレンガの部屋の方へ戻っていった。戦闘の跡はまだ生々しくて、部屋にはリョウや命の巫女たちが倒した影の死骸が無造作に積み重なっている。そこからあたしたちはもとの通路を逆行していったの。なぜなら、あたしと命の巫女が調べたバリヤーまでの道のりは、最初に次元の扉を通って出てきた光るトンネルの反対側だったから。
「やっぱりシュウの言うことなんか信じちゃダメだね。おかげですごい遠回りになっちゃったよ」
「敵の方が1枚上手だったんだろ。それにバリヤーがある場所が必ずしも影の本体のある場所とは限らないんだ。これだって無駄足になる可能性もあるんだぜ、命の巫女のユーナ」
「んもう、屁理屈だけ一人前なんだから。でも考えてみたらシュウは4ヶ月前までチュウガクセイだったんだよね。チュウガクセイっていったら子供だよ、コ、ド、モ」
「…おまえ、人が気にしてることをずけずけと。誕生日はたった13日しか違わないじゃねえか」
「13日だって先輩は先輩なんだからね。おまえ呼ばわりされるなんて心外。もうちょっと先輩を敬いなさいよ、1年ぼうず」
「判りましたよ、ユーナ先輩。…ったく。誰だよ、4月でガクネンが変わるなんて決めた奴は」
 影が現われない安心感からか、シュウと命の巫女は通路を歩きながらぶつぶつと文句を言い合っていたの。あたしには2人の話す内容がよく判らなかったんだけど、また口を挟んでもシュウに訳の判らない説明をされそうな気がしたから黙っていた。
 カイロズのある部屋まで来たとき、みんなはそのまま通過しようとしていたんだけど、あたし1人だけ足を止めていた。
「祈りの巫女? どうしたの?」
「うん。…ねえ、ちょっとだけ調べさせて。その壁に隠し扉かなにかないかな」
 さっき道を探していたときにチラッと思ったの。確かに道を辿るとすごく遠回りになるんだけど、この部屋の壁を突き抜けることができれば道程がかなり短縮されるんだ。あやしいのが入口からちょうど向かいの壁で、小さな文字が書いてあった壁に向かうと左側になる。あたしがその壁まで歩いて手を触れると、3人ともあたしのうしろについてきていた。
「この向こうがエレベータの目の前なの。抜けられたら遠くまで歩かなくて済むわ」
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