「命の巫女、あそこにおかしな場所があるの。なんだか乱れててはっきり見えない」
 ――あれよ。さっきあたしが言ってた精神的なバリヤーって。近づいてみると判る。
 そこは今いる場所から2階層くらい上にあって、直線距離で神殿から村までと同じくらい。あたしはその場所に視点を近づけてみたんだけど、触れるか触れないかのうちに見ている範囲がすっと横にずれてしまったの。気がつくとあたしはぜんぜん関係ない方を見ていて、なんとなく命の巫女が言った「ガゾウが飛ぶ」という意味が判ったような気がしていた。
「影が邪魔をしているの? あたしたちに見られたくなくて」
 ――たぶんそうだと思う。祈りの巫女には判る? あそこへたどり着くまでの道順。
「そうね。見てみるわ」
 場所は最初に見たカイロズがある白い部屋の上あたりだ。まずは上にあがらなくちゃいけないから、あたしはバリヤーの近くに階段のようなものを探したの。でもそれらしいものはぜんぜん見つからなかったんだ。中が空洞になっている縦穴のようなものは見つけられたけど。
 命の巫女に声をかけてから再び戻ると、あたしのすぐ隣で手に手を添えている命の巫女の姿を見ることができた。シュウとリョウが心配そうに覗き込んでいる姿も。
「驚いたわ。命の巫女があたしの祈りに同調してきたの。とつぜん声が聞こえるんだもん」
「成功したんだ。だったらこの方法はこれからも使えるかもしれないな。それで? 道は判った?」
「バリヤーの場所がね、ここより2階層くらい上にあるの。でも近くに階段が見つからなくて。今度はもう少し広い範囲を探してみるわ」
「そうか! 先に階段を探せばよかったんだ! あたし、道にばっかり気をとられてたから」
 あたしよりも少し遅れて現実に戻ってきた命の巫女が声を上げる。…シュウが命の巫女を方向音痴だって言ったの、なんとなく判る気がするよ。あたしでさえまずは階段を探そうって思ったのに、命の巫女はそれに気づかなかったなんて。
「階段か。…ユーナ、階段と平行してエレベータを探してくれるかな。たぶん祈りの巫女には判らないから」
 そうしてまた2人で道を探して、あたしはさっき見つけた縦穴がエレベータってものであることを知ったんだ。
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