「グギギャアアァァァーーー!!」
「シュウ! き、きゃぁぁーー!」
 なにが起こったのか判らなかった。一瞬われを失ったあたしの耳に、リョウの肉声が飛び込んでくる。
「急いでシュウを通路に運べ! ユーナ、2人を守るんだ! 俺のことはいい!」
 あたしは一瞬だけためらったけど、すぐに命の巫女とシュウの周りに祈りの球体を展開した。同時に通路の陰から飛び出してその惨劇を見たの。倒れて声を上げ続けるシュウには右腕がなかった。肩のすぐ下あたりからすっぱりと切り取られてしまっていたんだ!
「きゃあ!」
「シュウ! しっかりして! お願い暴れないで!」
「シュウ! …ここは危ないわ。命の巫女、早く中に!」
 あたしと命の巫女は苦労しながらシュウを通路の中に引きずり込んだ。リョウの様子を見ている余裕はまったくなかった。ずっと悲鳴を上げていたシュウは、通路の奥までたどり着く頃には静かになっていたの。まさか死んだんじゃないかってちょっとぎくりとしたけど、どうやら痛みに気を失っただけみたい。だけど今のあたしにシュウを癒す祈りをすることはできない。
「あたしのせいなの! レンガが落ちてきたのに気づかなくて。…次元の扉は2つなければ役に立たないのに」
 取り乱した命の巫女が口にした言葉に想像を加えて、あたしにもなんとか事情を理解することができた。敵の攻撃で崩れた壁から落ちてきたレンガで、命の巫女が一瞬気を失ったんだ。彼女が次元の扉を維持できなくなったから、とうぜんシュウが展開する次元の扉も力を失った。だからシュウは敵の攻撃を受けてしまったんだ。
「それで? 命の巫女は大丈夫なの? 怪我はしなかった?」
 あたしが訊くと、それで命の巫女はどうにか少しだけ落ち着きを取り戻したみたいだった。
「…これは、この光は、なに? …祈りの巫女、あなたが守ってくれているの?」
「そうよ。この球体の中にいればレーザーガンは届かないの。でも影が近づいてくるのを防ぐことはできないわ」
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