リョウに言われたとおり、あたしはその場で再び神様の気配に同調して、視点をほかの通路とレンガの部屋に移した。一瞬で状況を把握したあとすぐに戻ってリョウに報告する。
「3つのうち1つの通路が突破されてたわ。2人ともこの通路の入口を背にして戦ってる。あたしたちを守ってくれてるの」
「そうか。判った」
リョウが立ち上がって駆け出したから、あたしもうしろを追いかけていった。でもすぐに離されてしまったの。だってリョウはすごく走るのが速かったんだもん。やっとのことで追いつくと、リョウが入口から1つ目の曲がり角の手前であたしを待っていてくれた。
「おまえはここで待ってろ。さっきのやつ、もう1度できるか?」
「うん、大丈夫。不思議と疲労感がないの。たぶん神様が近くにいてすぐに答えてくれるからだと思うけど」
「俺もだ。いつもよりも身体が軽く感じる」
そうしてリョウが通路を飛び出していったから、あたしはまた神様に同調して、視界を広げながらリョウの動きを追った。
到着するまでの短い間に影は3つの通路のすべてを突破してしまったみたい。命の巫女とシュウは通路の入口に並んで立っていて、右側にいるシュウは右に、左側の命の巫女は正面にそれぞれ次元の扉を展開していた。走り込んだリョウはそんな2人の頭の上を、通路の壁を蹴った勢いで飛び越えていったの。2人とも驚いたようだったけど、リョウが戻ってきたことでほっとしたのがあたしにも伝わってきた。
2人はかなりの数の影を既に倒していたけれど、でも部屋の中にはまだ10数体の影が残っていた。最初、不意を突かれた2体の背中に回ってリョウがナイフを突き刺すことができたけど、それからは影の半分はリョウを追ってきたから簡単にはいかなかった。あたしはリョウの動きを追って、祈りの球体を忙しく移動させていく。通路のときと違ってリョウは八方から狙われているから、そのすべてを自力でよけるのはほとんど不可能なんだ。更に命の巫女たちを狙ったレーザーガンが次元の扉を通って予測できない方角から飛んでくるんだもん。あたしも気を抜くことなんかできなかった。
そんな攻防が少しの間続いたときだった。不意に命の巫女が展開する次元の扉が乱れたの。命の巫女の膝が崩れた次の瞬間、シュウがすさまじい悲鳴を上げてその場に転がったったんだ!
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