リョウが戻ってくるまでの間、あたしは必死に祈りを捧げた。だってもしもあたしの祈りが途絶えたら、リョウは敵のレーザーガンで怪我をしてしまうかもしれないんだもん。
すべての感覚を神様に同調させて、神様の視点でリョウの姿を追う。あたしがリョウを追い切れなかったら祈りの球体がリョウの身体から離れてしまう。でもこれは頭で考えるほど簡単なことじゃなかったの。リョウの動きはすばやくて、しかも無秩序だったから、リョウが球体の中から外れてしまうことが何度もあった。
それでもリョウが怪我をしなかったのは、リョウがちゃんと影たちの攻撃をよけていたからだ。もしかしたらリョウは、最初からあたしの祈りにさほど期待はしてなかったのかもしれない。影のレーザーガンをジャンプしてよけて、そのままうしろに回りこんで背中をナイフで攻撃すると影は動かなくなる。今までの攻防でリョウは影の弱点を把握していたみたい。そうしてリョウは次々に影を倒していったから、そこにいるすべての影を動けなくするまでそれほど長い時間はかからなかったんだ。
それ以上影が出てこないことを確認したあと、戻ってきたリョウはほとんど息を切らせていなかった。あたしも祈りをやめて、そのまま壁にもたれたリョウに駆け寄っていた。
「リョウ! 大丈夫? 怪我はない?」
「ああ。おまえは?」
「あたしはずっとここにいたもん。怪我なんかしないよ」
「そうじゃない。まだ祈りの力は使えるか?」
リョウに言われてあたしは不思議に思った。だってあたしは神様が近くにいさえすればいつでも祈ることができるんだもん。ここはトンネルや白い部屋にいたときよりも神様の気配が少ないけど、でも村にいるときよりはずっと近いから、これからいくらでも祈りの力を使うことができた。…生まれたときにあたし自身が神様に与えられた幸運を使い果たすまでは。
「あたしは疲れてないわ。神様も近くにいるし大丈夫よ」
「だったら頼みがある。移動する前に命の巫女たちの様子を探ってくれ。歩きながら作戦を立てる」
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